サラ金金利上限規制~例外は規制を空洞化するからダメ!2006年06月25日

朝日新聞によれば,貸金業規制に関する自民党金融調査会の幹部会が,出資法の上限金利を利息制限法の水準まで引き下げるなどの方針を固めたようですね。

ただ,

少額・短期の融資は多重債務に陥る危険が少ないとして例外を認める可能性が高い。上限50万円、期間1年以内などの案がある。

というのでは,結局のところザル法になってしまうおそれが強いのではないでしょうか。

サラ金(消費者金融)業者は,長く借りていてもらった方が利息を多く得られて利益になるので,借り手が契約どおりの返済ができない場合,利息だけでよいですよと言って利息だけ受け取ることが多くあります。 短期の融資に例外を認めると,

とりあえず契約では短期で返済を受けることにしておき,

毎月の返済期日には利息だけ受け取っておいて,

本来の完済時期に元本分の完済を受け,同額を新たに貸し付ける契約を新たに結ぶ

という形にすることによって規制を免れるおそれがあります。

なお,この「短期,小口」の例外に関する問題点については,

貸金業規制見直し自民党方針固まる 「短期小口」の抜け道を許すな!ろーやーずくらぶ

50万円以下を例外扱いすることには強く反対!~サラ金金利引き下げ問題情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士

に詳しく書かれています。

形の上では利息を引き下げるように見せながら,実際には従来通りの利息を取れる道を残しておくのでは,まやかしの改正案でしかありません。引下げ後の上限金利に例外を認めないよう,政党への働きかけや署名運動(日弁連で行っています。)を進めていきましょう。

民事・刑事を同一手続で?~附帯私訴2006年06月25日

日々を大切に(齢はとっても気持ちは若く)さんのページ経由で知りました。(★犯罪被害者への損害賠償を刑事訴訟手続きでとの法務省の方針

損害賠償、刑事訴訟で請求可能に・法務省方針NIKKEI NET

 法務省は犯罪者を裁く刑事訴訟の法廷で被害者が被った損害の賠償に関する審理を同時に進め、有罪の場合は同じ裁判官が賠償命令も出す「付帯私訴」制度を導入する方針だ。刑事訴訟と別に被害者が損害賠償を求める民事訴訟を起こさなくてはならない現行制度に比べ、迅速に結論が出るため、被害者救済に役立つと判断した。

 10月にも法制審議会(法相の諮問機関)に制度創設を諮問。付帯私訴導入を盛り込んだ刑事訴訟法改正案を早ければ来年1月召集の通常国会に提出する。

被害者に対する損害賠償を早期に実現するため,刑事訴訟も迅速に進行させようという圧力がさらに強くなって,手続を適正に進めることがおろそかになるんじゃないでしょうか。被告人が否認している場合など,裁判迅速化法に則って民事も刑事も2年以内で・・などというと,なおさらそのおそれは強まります。

また,手続上も,民事,刑事の両方に対応しなければならない裁判官は大変です。弁護人だって,刑事はやるけど民事は被告人本人で,というわけにもいかないでしょうから,結局民事,刑事両方抱え込んで大変なことになりそうです。国選弁護人の場合,民事については法律扶助で,ということになるのか,それとも,国選弁護の報酬で双方に対応しろということなのでしょうか。

検察官は刑事だけやればいいから法務省は気楽にこうした法案を出してくるのかもしれません。しかしそもそも,民事訴訟の提起も判決も,必ずしも刑事の有罪判決を待って出す必要はないので,立法する理由に疑問があります。極めて無責任な提案のように感じます。

最近,運用面でも法制面でも刑事裁判に被害者保護の機能を持たせようという動きがありますが,刑事手続が被害者保護機能を持つことは結果的にありうるとしても,それを目的とすることについては,手続の適正さをないがしろにしないものかどうか,検察官と弁護人との間の資料収集能力の差などを踏まえて慎重に考えるべきでしょう。