比較広告は再現実験をしなければダメ(ロッテ対グリコ)~刑事では?2006年10月19日

比較広告訴訟:ロッテ逆転勝訴 キシリトールガム効果巡りMSN毎日インタラクティブ

キシリトールガムを巡る比較広告で損害を受けたとして、ロッテ(東京都新宿区)が江崎グリコ(大阪市)に広告差し止めと10億円の賠償などを求めた訴訟の控訴審で、知財高裁は18日、請求を棄却した1審・東京地裁判決(04年10月)を一部変更し、広告の差し止めを命じた。「一般的なキシリトールガムと比べ約5倍の効果」と表記したグリコの広告について、塚原朋一裁判長は「根拠となった実験は合理性を欠いており、虚偽の事実を流布する違法な広告」と述べた。

争われたのは、グリコが03年に発売した「ポスカム<クリアドライ>」の新聞や電車内の広告。

1審は、初期の虫歯を補修する「再石灰化」の効果を巡るグリコ側の実験の結果を「科学的合理性がある」と認め、広告を適法とした。しかし、2審段階で、実験結果を確かめる鑑定(再現実験)について、グリコ側が「一部の専門家にしか出来ない」と主張。このため鑑定は実施されず、塚原裁判長は「グリコは立証を放棄したのも同然。(広告の根拠となった)実験の合理性はないと言わざるを得ない」と判断した。賠償責任については、グリコが実験に直接関与していないとして否定した。【高倉友彰】

実験結果を確かめる鑑定ができなかったら実験の合理性がないということなのでしょうか。(判決文を入手していないので実験の合理性が揺らぐに至るその他の事情は分かりませんが)

刑事事件で,例えば覚せい剤使用を被告人が争っている場合に,被告人の尿の鑑定結果を争うことがあります。しかしほとんどの場合,尿は捜査段階で行われた鑑定で「全量」使用されており,したがって,裁判が始まってから再度鑑定することはできません。そのような場合でも,捜査段階での鑑定結果の記された鑑定書は信用性あるものとして扱われるのが通常です。

でも,仮に民事事件で再現実験ができないことが立証不十分の根拠となるのであれば,刑事ではなおのこと,再現実験を行えないことで立証不十分=無罪とされてしかるべきではないでしょうか?