「グーグル八分とは何か」2007年01月11日

グーグル八分とは何か」吉本敏洋ことBeyond著

悪徳商法?マニアックス」(悪マニ)の管理人であるBeyondさんの著作です。

著者ご本人から送っていただきました。ありがとうございます>Beyondさん。

「悪マニ」その他のグーグル八分の実例や,グーグル八分の見分け方などが載っており,大変興味深く読めました。

インターネットを介した情報の取得の際に検索システムが果たす役割の大きさ(私自身もFirefoxのGoogle窓を愛用しています。),さらに検索業界における寡占体制といった状況からすれば,グーグルを(日本においてはヤフーも)いわば「私的政府」ととらえて,恣意的に検索結果を操作することについて何らかの制限を加える法的制度を設けることも検討に値するでしょう。

一民間企業にすぎないグーグルに対して規制を加えることへの疑問もあるでしょうが,逆に,グーグルが民間企業にすぎないからこそ,力の大きな者(公共団体,企業)からの要請に対しては,営業停止措置や多額の損害賠償をおそれて要請に応じグーグル八分を行うが,一個人からの要請には応じないといった恣意的な扱いを行う危険性は高いのではないでしょうか。

ただ,グーグル八分の恣意性を誰が審査するのかということまで考えると,審査権者(国や,業界団体といったものが考えられます。)の恣意性が入り込むことになるので,グーグル八分にするという判断内容の妥当性を審査させるのは適当ではないでしょう。それよりも,(本書でいう「狭義の」)グーグル八分をするに当たっては,原則として対象サイトの管理者に対して理由を付して事前告知することを求めるといった手続面での規制を加えることが適当なように思います。

一検索業者にすぎないのに・・という声もあるでしょうが,検索サイトの運営というのは表現の場を提供するという重要な役割を持つのだからそれなりの責任を負う覚悟を持ってやれという考え方で制度設計することも考えてよいのではないでしょうか。

著者は,本書のあとがきの中で,グーグルが大好きであると述べつつ,グーグルのあり方がより「フェア」な方向に変わるよう希望しています。このようにグーグルに自主的に変わっていくことを願って書かれた本書は,消費者運動が企業に対するラブコールであるといわれるのと同じ意味で,グーグルへのラブコールであるとも言えます。このコールにグーグルが応えることができるかどうかは,落合弁護士が示唆するように,名誉毀損裁判のあり方の見直しができるかどうかが鍵になっているのでしょう。しかし,私自身裁判所が現在の判断手法を変える可能性については懐疑的なので,上記のように法制度面での手当てをする道を検討する(実際に導入するかどうかはともかく)段階が来ているように思います。

追記 「グーグル八分とは何か」をグーグルで検索してみると(2007年1月11日20時30分現在),グーグル八分が行われている関連ページがあることを発見。どんなページなんでしょうか。

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