裁判員裁判の被告人になると・・2007年01月19日

自信ないから…裁判員「参加したくない」75%YOMIURI ONLINE

読売新聞社が実施した「裁判員制度」に関する全国世論調査(昨年12月9、10日実施、面接方式)で、裁判員として「裁判に参加したくない」人が75%に上った。「参加したい」人は20%だった。同じ質問をした2004年5月の調査と比べると、「参加したくない」が6ポイント増え、「参加したい」は6ポイント減った。

2009年の制度開始が近づくにつれ、裁判員になった場合、適切な判断ができるだろうかという不安が広がっているようだ。

参加したくない理由(複数回答)では、「有罪・無罪を的確に判断する自信がない」54%、「刑の重さを決める量刑を的確に判断する自信がない」50%、「人を裁くことに抵抗を感じる」47%が上位を占めた。次いで、「仕事や家庭の事情で時間がとれない」28%、「被告人など関係者から逆恨みされる心配がある」17%――などだった。

参加したいと思う理由(同)では、「防犯や治安に対する社会の意識が高まる」47%がトップ。以下、「裁判に興味がある」42%、「いろいろな経験をしてみたい」41%、「これまでの刑事裁判のあり方を変えたい」26%――などだった。

制度の仕組みを「知っている」人は、「よく」と「ある程度」を合わせて30%にとどまった。裁判員制度の仕組みについて、十分な情報が提供されていると思うかでは、「そうは思わない」が計84%に上った。国民の理解が深まるよう、様々な啓発活動をさらに行う必要がありそうだ。

一方、制度導入により、日本の刑事裁判が「良くなる」と思う人は、計53%で、04年調査に比べ5ポイント減ったものの、過半数を占めた。「悪くなる」と思う人は計23%だった。

長谷川京子から仲間由紀恵へと,使っているタレントはグレードアップしたのに(あくまで広告出演料の面で,ですよ。ハセキョーファンの方,怒らないで!),拒否反応は強まるばかりですね。

これだけ広報しても拒否反応がおさまらないのは,国民がこの制度のうさんくささを感じ取っているからではないのでしょうか。今後「啓発活動」を行えば行うほど拒否反応が強まることも考えられます。

参加したくない理由として、「有罪・無罪を的確に判断する自信がない」54%、「刑の重さを決める量刑を的確に判断する自信がない」50%、「人を裁くことに抵抗を感じる」47%が上位を占めていることから,政府,最高裁が進めようとしている負担軽減策は根本的な解決にはならないことは明らかです。裁判員制度の導入を強行すれば,裁判員への呼出状はまさに現代の赤紙という批判を免れないでしょう。

裁判員による裁判を受ける被告人にとっても,この制度による不利益は極めて大きなものです。

裁判員の負担軽減のためと称して,公判廷に出される証拠は「公判前整理手続」で絞り込まれ,その後弁護人の調査の結果新たに証拠が出てきても,原則として提出は認められません。これでは,調査のための手足が検察官に比べて圧倒的に不足している弁護人が無罪のための立証活動を成功させることは,現在以上に極めて困難となります。

しかも,上記アンケート結果によれば,裁判員制度に参加したいと思う人の約半数は,「防犯や治安に対する社会の意識が高まる」との理由で参加したいと思っていますから,治安維持のためにということで厳罰を科される可能性が高まります。また,興味本位(「裁判に興味がある」)や社会勉強の一環(「いろいろな経験をしてみたい」)として参加してくる人に裁かれることになるのです。わずかな望みは「これまでの刑事裁判のあり方を変えたい」と思って参加する人ですが,これだって,今までの裁判は被告人に甘すぎ!と思っている人かもしれず,高望みは禁物です。

このように裁判員裁判は被告人にとって極めてハイリスク・ローリターンなものですが,被告人はこの裁判を拒否することはできません。

周防正行監督による映画「それでもボクはやってない」では,裁判官による裁判が被告人にとって絶望的な状況にあることが描かれているようですが,ではこれが裁判員裁判になれば改善されるのかといえば,それは望めないでしょう。

なにしろ裁判員制度は,被告人のためのものではない(司法制度改革審議会最終意見)のですから。

国民一般にとっても,被告人にとっても利益の無い裁判員制度は導入を取りやめるべきではないでしょうか。

参考書籍:裁判員制度はいらない(高山俊吉著)

<司法修習卒業試験>落第者向けの追試を廃止 最高裁2007年01月19日

本当に廃止していいんでしょうか。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070118-00000138-mai-soci

司法試験合格者が専門知識を学ぶ「司法修習」の卒業試験で落第者が急増しているが、最高裁の「司法修習生考試委員会」は落第者を救済するための「追試」を廃止することを決めた。委員会が「最低水準に達していない修習生を追試で救済するのはふさわしくない」と判断したため。

司法修習二回試験の追試廃止は筋違いではないかでも述べたように,これまでやってきた追試を廃止する合理的理由はないように思います。

報じられている司法修習生考試委員会の判断内容によれば,追試で「救済」されてきた人は追試合格時点でも「最低水準に達していない」ということになりますが,そうすると,最高裁はこれまで,「最低水準に達していない」者が法曹となることを認めてきたことになります。そんなふうに解される発言を最高裁がしてよいのでしょうか。本試験で留保となり,その後追試に合格した人が必ずしも法曹としての適格性を欠いているとは思えないのですが・・・。