ホームオブハート,トシオフィスら,損害賠償を命じられる2007年03月02日

ホームオブハートに賠償命令、マインドコントロール認定asahi.com

栃木県で自己啓発セミナーを開く「ホームオブハート」の元セミナー生の女性(38)が詐欺などの被害に遭ったとして、同社などに損害賠償を求めた訴訟の判決が26日、東京地裁であった。野山宏裁判長は同社の実質的代表者らの違法な「マインドコントロール」を認定。セミナー代集めによる財産的損害や精神的苦痛への賠償などとして、1500万円余の支払いを同社側と、セミナーを共催したロックグループ「X JAPAN」の元メンバーToshiさんの会社に命じた。

野山裁判長は、セミナーを主宰する実質的代表者について「悩みを抱える女性の不安をあおってマインドコントロールを施し、金を支払ってくれる人間に改造した」と指摘した。原告側代理人の紀藤正樹弁護士は「カルト被害について、マインドコントロールという言葉を判決で明示して賠償責任を認めたのはおそらく初めて」と話す。

判決によると、女性は「お金のトラウマがある」「幸せな人生を過ごせないのは疑いを持つ心があるからだ」などと言われ、セミナー代などを支払うために消費者金融などに多額の借金をさせられたうえ、離婚や自己破産に追い込まれた。

ホームオブハートを巡る問題点については,原告代理人の紀藤弁護士のサイト内の

ホームオブハートとToshi 問題を考える

や,今回の訴訟でやはり損害賠償を命じられたトシオフィスの元スタッフらが中心となっている

ホームオブハートとToshi問題を考える会

に詳しく記されています。

判決の注目点についてはやはり原告代理人である山口弁護士のブログに詳しく記されていますが,私も判決文を入手したので読んでみたところ,ホームオブハートにおけるセミナーの実態,同団体におけるMASAYAこと倉渕透氏の絶対的地位,Toshiこと出山利三氏が代表取締役を務めるトシオフィスとホームオブハートの関係など,事実関係については原告の主張がほぼ全面的に認められている形となっていました。

原告の方々の活動が一つ形となり,本当に喜ばしい限りです。

道路交通法改正案(自転車利用者対策推進部分)への第二東京弁護士会意見書公開される2007年03月03日

道路交通法改正案のうち,「3 自転車利用者対策の推進」についての第二東京弁護士会の意見書が同会のサイトにアップされました。

「道路交通法の改正案」に対する意見書

弁護士会のサイトの更新頻度との関係で3月1日まで公開が延び延びになっていました。

ところで,自転車は歩道を通行する際には徐行義務が課されています。この「徐行」の速度については従前の国会答弁で,時速4~5kmとの回答がなされています。

4~5kmであれば歩行者とそれほど変わらない速度ですから歩行者の安全性に影響は与えないのかもしれませんが,時速4~5kmというのが自転車の走行速度として現実的なものなのかどうか考えてみる必要があるでしょう。では徐行義務を解除するとなれば,歩行者への危険性が増大することは免れません。

改正法案(PDF)(分かりやすいので新旧対照表にリンクしています。以下同じ。)では,上記指摘に配慮したのか,

ただし、普通自転車通行指定部分(注:道路標識等により普通自転車が通行すべき部分として指定された部分)については、当該普通自転車通行指定部分を通行し、又は通行しようとする歩行者がないときは、歩道の状況に応じた安全な速度と方法で進行することができる。(第63条の4第2項ただし書)

とされており,妥当な結論を導こうと苦労した跡が見えますが,歩行者がいれば時速4~5kmで走らなければいけないわけですし,「歩道の状況に応じた安全な速度と方法」というのも不明確です。

今回の改正法案(PDF)では,標識のあるところ以外でも,児童・幼児らが自転車を運転する場合や

車道又は交通の状況に照らして当該普通自転車の通行の安全を確保するため当該普通自転車が歩道を通行することがやむを得ないと認められるとき。(第63条の4第1項第3号)

には,自転車で歩道を通行することができるとされています。

この点については,弁護士会意見書(PDF)5頁で

基準は漠然・不明瞭です。自転車運転者は歩道を通行するにあたり標識のような明確な判断基準を付与されません。そのような状況の下では、自転車運転者が自分の走行する歩道が道路交通法上自転車走行してもよい歩道か否かを判断することは困難です。このような「通行区分改正」は、単純かつ明確であるべき交通ルールとしては不適切です。

との批判が引き続き当てはまるでしょう。

また,改正法案(PDF)では,

警察官等が歩行者の安全を確保するため必要があると認めて当該歩道を通行してはならない旨を指示したとき

には,歩道通行可の例外のどの場合であっても(仮に自転車通行可の標識がある場合であっても!),自転車で歩道を通行することができないものとされています(第63条の4第1項ただし書)。

この点についても,先の弁護士会意見書(PDF)の

「歩行者の安全を確保するため必要があると警察官等が判断した場合」という文言も漠然・不明瞭であり、「警察官等の判断」及び「指示」が警察官等の裁量によって警察官等毎に異なる可能性があります。その結果、「歩行者の安全を確保するため必要があると警察官等が判断した場合」の内容がまちまちとなります。さらに、警察官等が車道に降りることを指示することにより、自転車運転者は自己が走行できる場所につき明確な基準を提示されずに一方的に警察官等の裁量により自転車走行を制限されることになり、もしも、警察官等の指示に従わない場合、罰則が適用されることなります。つまり、罰則の適用が現場の警察官等の判断により異なることにもなり、刑事法の大原則である罪刑法定主義にも違反する可能性があります。

との批判が当てはまるでしょう。

今回の法改正について私は自転車対策の部分しか見ていませんが,道路交通のルールを法律で明確に定めないと道路交通に混乱を招くのではないか,また,警察官の裁量が濫用されるおそれがあるのではないかといった観点からきっちり批判していく必要があるように感じました。

また,パブコメ募集に対する意見が取り入れることはなかなかないのだな,というのも改めて痛感しました。

弁護士激増・新法曹養成制度導入決定の経緯とは2007年03月27日

呼びかけ人の一人として,誤解は解いておかなければなりませんね。

黒猫さんのブログで取り上げていただいたとおり,4月3日に下記に記載するような集まりを開く予定にしています。ただ,弁護士有志が呼びかけて開くもので,弁護士会や日弁連の行事ではありません。

また,上記ブログのコメント欄で,弁護士会は増員に賛成しておきながら何をいまさらという旨のコメントがなされていましたが,増員や新法曹養成制度の導入は,弁護士界がこぞって賛成したものでは決してありません。

弁護士の年間3000名への増員というのは,司法制度改革審議会での議論の中で2000年3月に元日弁連会長の中坊公平委員が打ち出し,その後同年8月に,当時の日弁連会長が受け入れを同審議会で約束したもののようです。その後2000年11月1日に開かれた日弁連臨時総会で,増員と,法科大学院を中心とする新たな法曹養成制度の導入及び法曹一元・陪審制の導入という3項目を内容とする議題がかけられました(経緯についてはこちらのページを参考にしました。)。

当時私もこの総会に出席しており,焦って議決をとるべき問題では決してないと思ったのですが,日弁連執行部は,増員問題についての発言要望がまだ残っており,新たな法曹養成制度についての意見が全くといっていいほど戦わされない段階で討論打ち切り,議決へとなだれこんだのです。

議決の結果は,賛否の割合が約2対1で可決,というものでした。決議内容はこちらになります。

私は当時,増員の可否についてはよく分からないが,法科大学院の義務化は絶対にあかんだろうと思っていました。法科大学院というプロセスの義務化は参入阻害要因以外のなにものでもなく,法曹の輩出源の多様性を損なうからです。また,文部省の所管下にある大学院に行かなければいけないなんて,プロセスによる法曹養成ではなく,プロセスによる法曹統制ではないかとも感じました。

今回の集会の呼び掛け文は以下のようなものです。激増見直しが中心に置かれたような文面になっていますが,私自身は,現在進行中の「司法改革」で最悪のものは新法曹養成制度だと思っています(「激増」(単なる「増員」とは異なります。)にも今では反対です。)。現在は激増と新法曹養成制度がセットになって進んでいるので,両者を一括して捉えるという考え方が呼び掛け人の間でほぼ共通認識となっていると思います。

なお,集会の進行については確定したものではありません。

関東圏50期代の皆さん、集まって声を挙げましょう!

弁護士激増・新法曹養成制度の見直しを求める集い

呼びかけ 弁護士激増の見直しを求める有志

私たちはもう黙っていられません。ワーキングプアロイヤー。2010年に3年も残して今秋早くもパニックが起きます。3000人? いったいどうなるのでしょうか。どうすればよいのか。みんなで話し合いたい。集会なんてとおっしゃらずちょっと覗いてみて下さい。お一人でもお見え下さい。バラバラからかたまりになって、激増見直しの声を挙げましょう。法曹養成のあり方もご一緒に考えましょう。

会場 東京・霞ヶ関 弁護士会館1006号室

日時 2007年4月3日(火) 午後6時から8時30分まで

進行

報告

○ 激増がもたらしている弁護士業務の現状(各地弁)

○「3000人増員見直し決議」の報告(愛知県弁)

討論 私たちは今何をなすべきか