司法修習2回試験,不合格者は前年比減2007年09月03日

今日,現行60期の司法修習の修了試験(2回試験)の結果が発表されたようですね。

不合格者は71名だったとのこと。昨年(59期)が107人(留保者も含む。)でしたから,約3分の2に減ったことになります。修習生の数は約1500人とほぼ同じでしたから,修習期間が2か月間短縮されたことを考慮すれば健闘したということが言えるでしょう(2回試験の合格水準が変わらないことを前提とします。)。

この2回試験,今年からは追試がなくなり,不合格となった場合再度全科目について受け直さなければならないという点で,従前の基準なら留保だったはずなのに今回不合格となった人については,修了のためのタスクとリスクが増えました。

昨年の大量の不合格者と(留保者も含む。),追試廃止に危機感を覚えた修習生の人たちが発奮して不合格者減につながったということでしょうか。私が去年行った予測は外れましたが,外れてよかったと思います。

今回不合格となった人は新60期の修習生が受ける2回試験(11月に行われるようです。)を受けることができるので,再挑戦の機会が2か月後にめぐってくるわけですが,新60期で2回試験に落ちた場合,翌年の旧61期の2回試験まで再挑戦の機会を待たなければなりません。新司法試験合格者限定の追試(ただし全科目受験要)を設けて救済はしないんですかねえ。

追記 今回の不合格者が必ず11月の試験を受けられるというわけでもないようですね。

司法修習生71人卒業できずYOMIURI ONLINE

現在の司法修習は、旧司法試験に合格した「旧試験組」と、法科大学院(ロースクール)を修了した後に新司法試験に合格した「新試験組」に分かれて行われ、卒業試験も別々。今回の受験者は旧試験組で、不合格者は修習生の身分を失うが、面接などで再び修習生に採用されれば、11月に実施される新試験組の卒業試験を受け直すことができる。

面接などで何を見るのかが不明ですが,試験を受けるくらいさせてやってはどうかと思うのですが>研修所

法相,閣議後記者会見でも弁護士激増に疑問を呈する2007年09月04日

閣議で議論されるまで行くとおもしろいのですが。

鳩山法相「そんなに弁護士いらない」法曹人口拡大に異議YOMIURI ONLINE

鳩山法相は4日の閣議後記者会見で、司法試験合格者数を年3000人程度まで増やすとした政府方針について、「日本は訴訟社会ではないので、そんなに多数の弁護士はいらない。政府方針であっても、必要があれば直していけばいい」と述べ、3000人より減らすべきだとの考えを明らかにした。

法曹人口の拡大は司法制度改革の大きな柱だけに、法相の発言は議論を呼びそうだ。

法相はまた、法科大学院側から「新司法試験の合格率を向上させるため、3000人より増やすべきだ」との声が上がっていることについて、「法科大学院の経営がうまくいくかどうかは優先的事項ではない。優秀な人が司法試験に通ればいい」と語り、合格率の低下で大学院間の生き残り競争が激しくなるのはやむを得ないとの認識を示した。今年の司法修習生で卒業試験の不合格者が71人と多数に上ったことに関しては、「(修習生の増加で)質が低下している可能性がある」と言及した。

(2007年9月4日14時39分 読売新聞)

法曹人口年間3000名を明記した司法制度改革審議会最終意見書は閣議を経ていたはずですから,正式に修正するためには閣議を経なければなりません。政治主導で修正されればよいのですが,そうでないと省庁間の調整を経ることになります。すぐに修正するというのはなかなか困難かもしれません。

ただ,閣僚(しかも司法制度改革審議会最終意見当時の与党)の中からこのような意見が出てきたことは注目に値します。

日弁連は司法制度改革審議会の路線に追従し,年間3000名を唯々諾々と受け入れてきましたが,その前提条件である受入れ先の増大が虚構に過ぎなかったことはこの1年間で身にしみて感じたはずです。この機を逃さずに増員見直しに舵を切る時ではないでしょうか。

弁護士激増時代がやってくる!?~どうする、どうなる法曹人口問題

紙のリサイクル~選択型実務修習に同行して2007年09月13日

今日は朝から夕方まで,所属弁護士会の選択型実務修習に同行してきました。

その内容は,古紙を使用して紙を作る製紙工場,古紙回収業者及び東京都のゴミの最終処分場を見学するというものです。

スケジュールをアレンジした弁護士の話では,当初は回収業者→製紙業者→最終処分場の順で見学する予定だったところ,見学先の事情で上記のような順番になったとのことでした。

選択型実務修習というのは,司法修習生がホームグラウンドとなる弁護士事務所に所属しながら,裁判所・検察庁・弁護士会の提供するプログラムを選んで受講するというものです。新司法試験合格者の修習生については,一度に全てを研修所に受け入れることが困難となることが今後予想されることから,実務修習後の期間を2つに分け,そのうちの半分は研修所ではなく実務修習地にいることとなったのです。

弁護士会から会内の各委員会に,この選択型実務修習のプログラムを提供するよう指示があり,私の属する委員会では,環境問題についての講義のほか,自分たちが法曹になったときに頻用する紙のリサイクルについての現状を知ってもらうという目的で,今回の修習が企画されました。

最初に行ったのは製紙工場。江戸川区にあり,付近が宅地化して,パルプからの製紙が難しくなった(強いにおいが発生するため)ことなどもあり,古紙からの製紙に特化したとのことです。

以前は難しいと言われていたラミネート付きの紙のリサイクルや,ファイルに取り付けたままの状態で持ち込まれる紙のリサイクルも行っているとのことでした。

次に行ったのはゴミの最終処分場。

ゴミは,以前(1997年以前)は出されたものを(不燃ゴミは)そのまま埋め立てていたのが,現在ではいったん破砕,焼却した後に埋め立てるようにした結果,年間当たりのゴミの量は減少しているとのことでした。ただし,今のペースでも,40年後には埋め立て可能な地はすべて埋まってしまうということです。案内してくれた施設の職員の方は都民の意識の重要性を力説されていました。

処分場の中をバスで回ったのですが,ゴミの中にたまるメタンガスを抜くため,あちこちにパイプが建てられているのが印象に残りました。

処分場内の電気は,このメタンガスでガスタービンを回すことにより発生する電力ですべてまかなっているとのことです。

最後に行ったのは板橋の古紙回収業者の工場。持ち込まれた古紙を圧縮する現場を見学しました。

国内での紙のリサイクル率は70%ほどで,国内では供給と需要のギャップが年間400万トンほどあるとのことです。この余剰分は現在需要が旺盛な中国などへの輸出に当てられているとのことでした。恐るべし中国。

紙のリサイクルについては,輸送や再生時に使われる石油エネルギーの多さから環境負荷の軽減にはつながらないのではないかとの指摘もあるようですが,森林資源の保護やゴミの削減といった点からはやはり積極的に進めなければいけないのではないかと感じさせられた1日でした。

それにしてもこの選択型実務修習,各委員会が知恵を絞ってプログラムを考え,委員会によっては外部から講師を招聘してまで準備したようなのですが,修習生の参加者が少ない(環境委員会のプログラムの参加者は5名でした)のは残念です。参加された修習生の感想が概ね好評だったのはよかったのですが,弁護士がこれだけの労力をかけて準備する必要性について来年以後検討する必要を併せ感じました。

第2回新司法試験,1851人が合格2007年09月14日

法務省のページ結果(PDF)が掲載されていますね。

新司法試験の合格者数については,昨年が1009人でしたから,昨年の2倍には至りませんでした。

司法試験委員会での議論では昨年が900~1100人で,今年はその倍にするという方針が示されていましたから,今年は下限値に近い合格者数だったということになります。

これが増員の見直しに向けたサインだといいんですけどね。

弁護士激増問題秋の集い2007年09月14日

以前お知らせしたのですが,再掲します。

弁護士のみならず,修習生の方などの参加も歓迎します。

弁護士激増がやってくる?~どうする、どうなる法曹人口問題~

会場 東京霞ヶ関・弁護士会館2階 クレオA

日時 2007年9月14日(金)午後6時~午後8時30分

講演 浅野健一さん(同志社大学社会学部メディア学科教授)

『規制緩和がもたらしたもの』 (仮)

報告 『激増がもたらしている弁護士業務の現状』(各地弁護士等)

討論

2000年11月、日弁連は、「市民の需要がある」「企業のニーズがある」「自治体に雇用される」などの需要を当て込んで、3000人増員を受け入れました。そして、今、司法改革の中で弁護士大増員時代が到来しようとしています。

しかし、現実はどうなっているのでしょうか。需要と供給のバランスが崩れて、修習生の就職難、給与の切り下げ、解雇・・・。各方面で弁護士の悲鳴が聞こえます。特に若手の中には、収入減のために親から仕送りを受けたり、自宅を事務所にしながら国選等で細々と生活している弁護士もいます。

一体、私たち弁護士の未来はどうなるのでしょうか。いま、自由な職業人としての、人権擁護の担い手としての弁護士像が危機にさらされています。ここで立ち止まって、一緒に弁護士人口問題を検証してみませんか。

そして、私達の声を、大きな力にして、日弁連や社会に訴えましょう!!

「後輩に夢を与えられない職業に未来はない」

                                  呼びかけ 弁護士激増の見直しを求める有志

「道路は誰のためにあるのか」シンポジウムのお知らせ2007年09月18日

町作りの一環として道路のあり方を考えるシンポジウムが,日弁連人権擁護大会のプレシンポジウムとして開かれます。

日本において「交通権」が認められる嚆矢となればよいのですが。

日弁連人権擁護大会プレシンポジウム

くるま社会を考える~「道路整備中期計画」は、住み続けたい未来のまちづくりを示せるか?

深刻さを増す地球温暖化問題、過去20年間で約1.5倍に増えた交通事故、中心市街地の空洞化とコミュニティ危機、公共交通機関の衰退による高齢者や障害者の移動の困難、緑地・水辺空間の喪失。現代の都市が直面している問題を考えるとき「くるま社会」=モータリゼーションの問題を避けては通れません。

現在、国交省は、政府・与党の「道路特定財源の見直しに関する基本指針」に基づき、年内を目処に、今後のわが国の道路整備の姿を示す「道路整備中期計画」の作成を進めています。

一方、環境省は、3月発表の、「地球温暖化対策とまちづくりに関する検討会報告書」の中で、これまでの道路整備が都市機能を拡散させたり、さらなる自動車交通の増加を招く原因になっているとして、道路整備について、方向転換が必要であると指摘しています。

また、LRTなどの公共交通の整備や、自転車道の整備など、自動車以外の交通手段の充実を求める市民の声も高まっています。

従来型のくるま社会を維持するか、あるいは、住み続けたいまちづくりのビジョンを力づよく示すことができるのか。この道路整備中期計画が、私たちの社会のゆくえに重大な影響を与えることは明らかです。

各界を代表する論者を招き、現在の議論の問題点と、目指すべき方向性について徹底討論します。

報告(道路中期整備計画について) (報告者交渉中)

パネルディスカッション

パネラー 太田勝敏氏(東洋大学大学院教授,東京大学名誉教授)

      福井健策氏(弁護士 第二東京弁護士会公害対策・環境保全委員会委員)

    上岡直見氏(環境自治体会議政策研究所主任研究員)

パネル司会 石黒 徹氏(弁護士 第二東京弁護士会公害対策・環境保全委員会委員)

日時 2007年10月15日 午後6時~8時30分

場所 弁護士会館 10階1003号室(東京メトロ霞ヶ関駅下車)

主催 日本弁護士連合会 東京弁護士会

   第一東京弁護士会 第二東京弁護士会

日弁連を壊すことに手を貸しているのではないか2007年09月18日

「明日の司法と日弁連を創る会」発足式のご案内というファクシミリが事務所に届きました。

どうやら大阪弁護士会から次の日弁連会長候補を出そうとしているようです。

しかし,その「創る会」の口上が

司法改革を推進してきた日弁連の成果を踏まえ、これを正しく継承・発展させ、弁護士が社会の隅々まで存在し活躍する社会を作るため、多くの難しい課題に対し引き続き挑んでいく必要があります。

っていうのは,いかがなものかと思います。

「司法改革」の成果として今までどのようなものが現れてきたのでしょうか。

  • 司法試験合格者激増による就職難
  • 当初予想された合格率と現実との格差に見られる,新法曹養成制度の迷走 (もっとも,新法曹養成制度の根源的問題は,産経抄で「なにより、授業料の高い大学院の存在が、かえって、“久利生検事”や大平弁護士のような異色の人材の排除につながらないのか。」と指摘されるような,法曹からの多様性の排除(スクーリングによる時間的拘束と金銭的負担に耐えられる人しか法曹になれない。)という点にありますが。)
  • 国民の7~8割が反対している裁判員制度

いずれも,「司法改革」が誤りであったことを示すものではないでしょうか。

「司法改革」の推進は司法と日弁連の破壊にしかならないと思います。