虐殺展示への苦情申入れの前になすべきこと2008年01月17日

中国人が日本人に虐殺されたことの記念館なのに,日本人に配慮を求めろっていうの無理じゃないですか?

南京虐殺展示内容で申し入れ 日本政府「事実関係に疑義」東京新聞

【上海16日共同】中国・上海の日本総領事館の隈丸優次総領事は16日、面積を拡張して再オープンした南京大虐殺記念館(江蘇省南京市)について、中国側が主張する30万人という犠牲者数などを念頭に「事実関係に疑義がある展示がある」として、南京市幹部らに見直しを求める申し入れを行ったことを明らかにした。

旧日本軍の南京占領から70年に当たる先月13日に再オープンした記念館新館は、30万人という犠牲者数を至る所に表記するなど旧日本軍の「非人道性」を強調。

これに対し、隈丸総領事はこのほど南京市幹部や記念館の朱成山館長らと会談、日本政府の「問題意識」を伝達した。

この中で総領事は(1)残虐性が強調されており、(日本への)恨みを引き起こすという懸念がある(2)国交正常化以降の日中関係の進展などについての展示が不十分-などと指摘、福田康夫首相の訪中など日中間の「良い雰囲気」が反映されていないとの見方を伝えた。

南京大虐殺記念館「展示」に政府が異例の見直し申し入れYOMIURI ONLINE

【上海=加藤隆則】隈丸優次・駐上海日本総領事は16日、昨年末に大幅拡張された「南京大虐殺記念館」に対し、「日本人の残虐さを繰り返し強調しており、参観した中国人に日本人への反感、恨みを抱かせる懸念がある」として、展示内容の見直しを申し入れたことを明らかにした。

日本政府が中国の抗日戦争関連施設に直接、展示見直しを求めたのは極めて異例。

申し入れは隈丸氏が10、11の両日、南京市を訪れ、同市や同館の首脳部に「日本政府の問題意識」として伝達。諸説ある南京事件の犠牲者を同館が30万人と特定していることに触れ、「従来以上に30万人が強調されている。いろいろな意見にも耳を傾けるべき」と述べた。中国側は「対日関係には十分配慮し、平和のメッセージを伝える内容だ」などと応じたという。

30万人という数を殊更に問題視しているようなのですが,数がスローガンに使われるのが嫌だということなのでしょうか。

しかし,虐殺された人の数が30万人かどうかは別として,虐殺したこと自体までは否定できないことは日本政府も認めています。そうであるからこそ,残虐性を強調している例として,「30万人」を挙げているのでしょう。

これが一般の刑事裁判であれば,30万人殺したとして起訴されている人について,3万人しか殺していないと弁護することは意味があります(今の日本の量刑基準ではどちらでも変わらないかもしれませんが)。

しかし政治的振舞いとして,30万人は殺していないということが妥当なのかは別問題です。30万人であっても,数万人,はたまた千人であっても,殺された人の側からすれば怨念は残ります。

しかもこの上海日本総領事,日中関係発展の展示が少ないなどという苦情を述べた由。それって自分たちは中国に善行を施したから感謝しろと言っているのと同じで,図々しさも甚だしいものです。

南京での虐殺があったことは素直に認めて謝罪し,将来二度と繰り返さないように誓う。過去を美化するような放言は少なくとも政治家が行わないということを,社会的コンセンサスにしていく。このようにすることで,過去の人は過ちをしたが今の我々はその過ちの歴史を押さえて二度と繰り返さないようにしていると胸を張って言えるような社会を作る。こうしたことで,虐殺記念館の展示ごときでゆらぐことのない関係を作っていくことが大事なのではないでしょうか。また,そうしてこそ,物を言い合える関係の基礎も作れるのではないでしょうか。