3000人前倒しは避けられそうだが・・・2008年03月25日

第一報は朝日でしたが,読売はより詳しく載せていますね。

司法試験「3千人」前倒し達成を政府断念、合格率低迷で

政府は25日の閣議で「規制改革推進のための3か年計画」の改定を決定した。司法試験合格者数を2010年ごろまでに3000人程度とするという政府目標を「前倒しして達成」するという文言を削ったほか、目標達成後の司法試験合格者数についても「更なる増大を検討する」との目標も削除しており、司法制度改革の減速が懸念される。

今回の改定は、政府の規制改革会議(議長・草刈隆郎日本郵船会長)が昨年末にまとめた第2次答申を踏まえたものだ。司法試験合格者数について「現在の目標(10年ごろまでに3000人程度)を確実に達成することを検討するとともに、その後のあるべき法曹人口について、法曹としての質の確保にも配意しつつ、社会的ニーズへの着実な対応を十分に勘案して検討を行う」とした。

政府は02年3月に「10年ごろには司法試験合格者数3000人程度を目指す」とした「司法制度改革推進計画」を閣議決定した。さらに07年6月に閣議決定した「規制改革推進のための3か年計画」では、この政府目標を「前倒しして達成するとともに、その達成後の法曹人口について、更なる増大について検討を行う」と明記するなど改革の加速化を図ってきた。これに対し、今回の閣議決定は、「政府目標前倒し達成」と法曹人口の「更なる増大」の二つの文言が削除された形だ。

背景には、政府が司法試験合格者増大の有力な手段として見込んでいた、法科大学院の司法試験合格率が、07年で約40%に低迷するなど予想を大幅に下回っていることがある。規制改革会議委員の福井秀夫政策研究大学院大教授は「他の先進国と比べれば日本の法曹人口は圧倒的に少ない。3000人以上の合格者は必要だが、供給源となるはずの法科大学院の教育がうまく離陸していない。まずは3000人の着実な達成のため、法科大学院の教育を改善すべきだ」と指摘している。

このほか、規制改革3か年計画の改定は、混合診療の範囲拡大や保育所の入所基準の緩和など、17分野にわたる規制改革が新たに盛り込まれた。

(2008年3月25日11時55分 読売新聞)

「司法制度改革の減速が懸念される。」って,司法制度改革はどんどんすすめるべきものだっていう先入観を露骨に表してますね。

それにしても,増員前倒しを取りやめる理由が,「法科大学院の司法試験合格率が、07年で約40%に低迷するなど予想を大幅に下回っていること」というのは論理的におかしな気がします。司法試験合格率の低さは,合格者数を前倒しで増やすことにより(程度の問題はあれ)解消できる問題だからです。

増員前倒し取りやめの理由は,朝日新聞の記事にあるように,

法曹人口の急増による「質の低下」や弁護士の就職難、訴訟社会の進展

への懸念が広がったからというのが正確なところでしょう。読売の上記記事は増員の問題点を意図的に隠しているように見えます。

ところで,規制改革会議の3000人実現前倒し論は否定されたものの,司法制度改革推進計画の,2010年に3000人という計画は「確実に達成することを検討」されるべきものとして残っています。

宮崎次期日弁連会長は会長選挙の際,3000人達成時期の延期を主張すると言っていました。平山現会長が3000人見直しに言及せずに,ニーズの「検証」にいそしんでやっていらっしゃったのでしょうから,宮崎新会長におかれては,就任後即座にその検証結果を踏まえ,3000人達成時期の延長,更には,3000人自体の見直しまで踏み込んだ提言をしてほしいものです。

それにしても気味悪いのは,福井秀夫教授の発言です。

「他の先進国と比べれば日本の法曹人口は圧倒的に少ない。3000人以上の合格者は必要だが、供給源となるはずの法科大学院の教育がうまく離陸していない。まずは3000人の着実な達成のため、法科大学院の教育を改善すべきだ」

というのは,さらなる増員を諦めていないということです。そもそも,合格率が低いという問題は,福井教授のロジックからすれば,合格者数を増やすことで解消すべきということになるはずですが,それをはっきりと打ち出せない状態にまで追い込まれながら,なおかつ増員をあきらめないというのは,往生際が悪いとしかいいようもありません。それにしても,このような教授に教えを受けなければならない人々(特に大学院に派遣されている公務員の方々)は気の毒としか言いようがありません。