電話世論調査が来ました2008年12月06日

今朝,毎日新聞の世論調査ということで電話がかかってきました。

時節柄,裁判員制度についてのことか?と身構えたら(ワクワクしたら),麻生政権を支持するか否かなどといった政局ネタでした。ちょっと残念。

ところでうちは電話帳に電話番号は載せていないのですが,本当に無作為に電話をかけているんですかね?どうやって電話番号を知ったのか聞きそびれてしまいましたが。

調査結果は月曜日の朝刊に載るということだったのですが,我が家は新聞を購読していないので,ネットで見られないかと聞いたところ,日曜日に掲載予定とのこと。新聞本紙より早いではないですか。新聞購入の動機にはなりませんね。まあ,報道する詳しさに差があるのかもしれませんが・・・。

今回の質問内容には,政局関係のほか,韓国に親しみを覚えるかという質問がありました。我が家は韓国ドラマを週に複数本見ていることもあり(私はせいぜい1,2本),大いに親しみを覚える,という選択肢を選び回答しました。韓国人の優れているところ,日本人の優れているところという質問は?という質問もありました。でも,選択肢にピッタリ来るものがなかったんですよね・・・。

法科大学院~大学にとっても災厄だったのではないか2008年12月08日

法科大学院:4分の1超で定員削減 見直し検討も過半数毎日.jp

文部科学省が10~11月に全国74法科大学院を対象に実施したヒアリングで、4分の1を超える19大学院が10年度入試(09年実施)からの定員削減を決めていることが分かった。また、このほか49大学院が定員の見直しについて「検討を始める」と回答。新司法試験の合格率低迷などを受け、多くの大学院が現状に危機感を抱いている実態が浮かんだ。

5日に開かれた中央教育審議会の法科大学院特別委員会で文科省が報告した。具体的な大学名や削減人数などは明らかにしなかったが、9割超の68大学院が何らかの対応を考えていることが判明した。「現状維持する」とした残る6大学院はすべて私立だった。

「検討を始める」と回答した大学院には、10年度入試からの削減を視野に入れているケースもあるが、「全体が(削減に向けて)動けば対応できるようにする」などの消極的な意見もあった。入学時の適性試験に新たに最低基準を設けるなどの改善策を進めるとした大学院も複数あった。

文科省は「早急な改善策をさらに求めていく」としている。委員からは「各大学院が様子を見合っているのではないか。大規模校も教員体制などを踏まえて適正定員を検討し、全体の音頭を取っていくことが必要だ」などの意見が出た。

特別委の中間まとめ(9月30日)では▽質の高い教員の確保が困難▽新司法試験の合格率が低い--などの場合に「大学院が自発的に定員を縮小する必要がある」と提言。文科省は中間まとめが示した方向性に基づいて、各大学院に対応を求めてきた。【加藤隆寛】

この定員削減,中央教育審議会の特別委員会の中間まとめを受けて行われたもののようですが,大学院の定員という経営方針の根幹にかかわるところに文句を言われて唯々諾々と従う法科大学院って,大学の自治をどう考えているんですかね・・・。

それにしても4分の1超の19大学院(検討を始めるとした法科大学院49校も含めると9割以上)で定員削減って,生産調整カルテルみたいですね。法科大学院協会は弁護士激増による競争激化は求めるのに・・。また,削減したからといって,その法科大学院からの合格者がその分減れば,合格率の向上には結びつかないのですが。それに,教員不足といいますが,例えば問題視されている兼任教員の問題,大規模校と小規模校のどちらでより深刻な問題になっているのでしょうか?各科目に1人しか教員のいない小規模校でより深刻だとすれば,定員減で解決する問題ではないはずですが。

ところで,法科大学院については,たくさん認可したのがいけない,とか,法科大学院は協力して定員削減すべきとかいった意見がこれまで仄聞されてきましたが,私はそのような意見には反対です。法科大学院を中心とした新法曹養成制度という制度維持のために法科大学院が協力せよ!って,全体主義じゃないですか?

法科大学院については,前の記事で書いたとおり,どんな教育内容のところにせよ,そのようなところに行かないと司法試験の受験すらできないというシステムにすること自体が大問題だと考えています。したがって私自身,その教育内容について関心がありません。その意味で,法曹養成に関する問題点については「法科大学院問題」と称するのは妥当ではなく,「新法曹養成制度の問題点」として考えるべきだと思います。

法科大学院問題と称すべきものがあるとすればむしろ,その教育内容や生き残りの可否の問題ではなく,専門職大学院としてさまざまな役所による規制(認証評価機関を通じた間接的なものも併せて)を受けることにあるように思います。到達目標とか,カリキュラムとか,定員のみんなそろっての調整とか,それぞれもっともらしそうな体裁をとるものではありますが,法科大学院への公的介入ではないでしょうか。このような公的介入を,受験資格付与機関としての「特権」と引換えに受け入れる大学って何物?という気がしないでもありません。

ただこの点は,各大学も制度の犠牲者かもしれないという気もします。何しろ,制度発足当時は,法科大学院を作らないと法学部に来る学生を集められない,といった,生き残りをかけた設立競争のような状況があり,このような法科大学院濫立は法科大学院義務化の当然の帰結と言えなくもないからです(法科大学院修了が義務化されなければ,学卒で司法試験合格者を輩出できる大学として生きる道もあるでしょうし。)。

また,新法曹養成制度が法制化される時点では,私が名を存じ上げている大学教授の中でも,法科大学院制度に反対していた方は結構おられました。優秀な人が法曹をめざさなくなる,とか,法学部教育が破壊される,とか,研究に割く時間がなくなる,とか理由はさまざまでしたが,法科大学院設立に向けて教員確保などに奔走する大学の内情を深刻に憂えておられました。そのように懐疑的な方がいたことは,

ロースクールを考える

といった本にも現れています。

法科大学院義務化は,結局,これをネタに一旗揚げようとした人のごく一部を除いて,誰も幸せにしない制度であるように思います。

新61期司法修習2回試験結果~不合格率は減少2008年12月16日

ボ2ネタ経由。

新制度2期生、落第5%超=前年下回る-最高裁時事ドットコム

最高裁は16日、今年11月の司法研修所の卒業試験で、2回目となる2007年の新司法試験に合格した司法修習生(新61期)のうち、5.6%の101人が不合格になったと発表した。昨年の1期生の不合格率6.0%は下回った。 最高裁によると、11月の卒業試験を受けた新司法試験組の修習生は1811人。合格した1710人は17日に修習を終え、法曹資格を得る。不合格者は修習生を罷免され、法曹になるには来年8月の卒業試験に合格する必要がある。 

導入修習が無かったにもかかわらず不合格率が減少したということで,修習生はよく頑張ったと思います。

ただ,導入修習が無くなったことに対して弁護士会が独自の研修を開いたりして対応していたことがあるので,これで,導入研修は無くてもよいとか,法科大学院での教育が効を奏しているとか言うのは早計でしょう。>最高裁,法科大学院関係者

また,人数が増えたが不合格率が抑えられたということを理由に,合格者数が増えてもOK!という論が出てきそうな気もしますが,それも違うような気がします。激増の問題点は質うんぬんよりもむしろ,就職難や競争激化による無理な事件化のおそれ等にあるような気がするからです。

今年の二回試験,不合格率が抑えられたことは(少なくとも修習生の立場からは)よかったと思うのですが,気になるのは,昨年の新司法試験合格者1851名のうち,1811名しか二回試験を受けていないということです。新司法試験受験生は法科大学院で2~3年にわたる費用と時間を強制的に掛けさせられて受験したのですから,合格したら一刻も早く法曹になりたいと思いそうなものなのですが,40名もの人が二回試験を受験していないということは,法曹が進路として魅力を失ってきているということなのでしょうか?

優良誤認の「優良」って?~日本ヒルトン(株)に対する件から考える2008年12月16日

レストランの出す料理に関する排除命令といえば成形肉ステーキに対する件以来でしょうか・・・。

日本ヒルトン株式会社に対する排除命令について(PDF)

排除命令の前提としている事実の摘示が興味深いものがあります。

2(1) 日本ヒルトンは,平成9年5月ころから平成20年9月ころまでの間,肩書地に所在し同社が運営する「ヒルトン東京」と称するホテル(以下「ヒルトン東京」という。)内で「トゥエンティワン」と称する飲食店(以下「トゥエンティワン」という。)を運営し,同店において一般消費者にフランス料理を提供していた。

(2) 「前沢牛」とも称される「いわて前沢牛」と称する牛(以下「前沢牛」という。)は,岩手県奥州市で肥育された黒毛和種の牛であり,その肉は一般的に高級品として認識されている。

(3) 「オーガニック野菜」と称する野菜(以下「オーガニック野菜」という。)は,一般的に化学的肥料及び農薬を使用しない方法により生産された野菜として認識されており,安全性の高い野菜として一般消費者に好まれる傾向にある。

(4) 北海道産の「ボタンエビ」と称するえび(以下「ボタンエビ」という。)は,外国産のものに比べ,良質なものとして一般消費者に好まれる傾向にある。

「前沢牛」は「一般的に高級品として認識されている」,「オーガニック野菜」は「安全性の高い野菜として一般消費者に好まれる傾向にある」,北海道産の「ボタンエビ」は「良質なものとして一般消費者に好まれる傾向にある」って,実際に高級か,安全性が高いか,良質かということとは関係なく,消費者がそのような認識をもっているから,そのような認識の対象物であるかのような虚偽の表示をすることが優良誤認とされているのです。

つまり,ここでいう優良誤認の優良とは,一般に優れたものとして考えられているものということであり,一般消費者の好みを基準として判断されるもの(検査や実験などによる評価の結果ではない。)ということです。

消費者保護という観点から言えば,上記のような消費者の好みが保護に値するものかどうかということがもう少し厳密に問われてよさそうな気もしますが,その点が問われず,ただ消費者の選好に影響を与えるという点で優良誤認か否かが決まるのは,景品表示法が独占禁止法の特別法であるからではないでしょうか。消費者の選好に影響を与える以上競争に影響を与えているという点で,規制の対象とすべきと考えられているのです。

しかし,こうした表示に対して排除命令が下されるのを見ると,産地表示に対する選好の高さ,地域ブランドを作り上げる意味の大きさを強く感じます。そのような選好をするのが本当に賢い消費者なのかというのは議論されるべきようにも思いますが。

新司法試験と法科大学院教育の「連携」って?2008年12月17日

日弁連新聞2008年12月号に,新司法試験シンポジウムの報告が載っていました。

この中で,古口章法科大学院センター委員長の基調報告について,「短答式試験について,問題量が多すぎて未修者にとって大きな負担となっていること,また,論文式試験について,短答合格者の最終合格率で未修者が既習者に比べ14%も低くなっており,この差は重く受け止められるべきであること,対応策として採点基準の公表や出題趣旨の詳細化など適切な情報提供の必要性を指摘した。」と触れられています。

「重く受け止められるべき」というのは,法科大学院関係者にとってかと思ったら,対応策として掲げられているのはいずれも新司法試験についての事柄で,要は新司法試験の試験内容や実施方法について,未修者がより受かりやすくなるようにしろっていうことなんですよね。

また,法科大学院教授等6名によるパネルディスカッションでは,「未修者が3年で合格できる試験内容になっているかを検証する必要があるだろう」って,現実の法科大学院の教育内容に合わせて司法試験のレベルを決めろって言うんでしょうか。法科大学院関係者って自省という言葉を知らないんですかね・・・。

新司法試験のあり方で,受験生に配慮して直すべき点があるとすれば,合格者からの報告の中で触れられているように,三振制の廃止がまず挙げられるべきもののように思います。さらに,法科大学院を経なくとも受験できるように,予備試験合格者数の一定数の確保,さらには法科大学院修了を受験資格としない方向で法改正を図っていくべきではないでしょうか(三振制の廃止も法改正が必要ですから,実際には同時に法改正をすることになっていくのでしょうが)。

「勝ち組」用であることを誇る法科大学院関係者が自己責任論を唱えているが・・・2008年12月25日

卒業生の合格率が低いことについても学生の自己責任だっていうのでしょうか?

世界的視野で判断すれば、法曹人口の増員と強化が不可欠なことがわかる

法曹人口拡大への批判は大きく分けて三点に集約される。

①増員に伴い法科大学院卒業の新司法試験合格者の水準が低下し、さらに就職難のためOJT(オンザジョブトレーニング)の機会喪失により弁護士の質が低下する。

②弁護士の需要は実際には少ないのに、増員のため競争が激化し、濫訴や食えなくなった弁護士による違法行為など弁護士の倫理が低下し、国民に被害を与える。

③我が国古来の醇風美俗とされる平穏で和を尊しとする社会秩序の崩壊をもたらす。

という指摘である。

しかし、これらの論点に対しては改革論者から以下の通り再反論がなされている。

①に対しては、新司法試験合格者の質が低下したという証拠はない。一部の論者は司法研修所修了試験(二回試験)の不合格者が増加している事実をその根拠としているが、法科大学院卒業者で二回試験を終えたのは、旧司法試験を受験するために予備校で教育を受けてきた、二年制の既修コース卒業生のみ(不合格率七・二パーセント)である。旧試験組の不合格率五・一パーセントと大差ない。制度の本則である三年コース修了者はまだ二回試験を受験しておらず当然、弁護士にもなっていないのであるから、そもそも法曹としての質を云々する段階にいたっていない。不断の業務能力の向上は専門プロフェッションとしての一人一人の弁護士の研鑽と所属弁護士会の指導によるべきものであって、勤務弁護士でなければOJTが受けられないというものではない。司法研修期間が短縮され、自ら研鑽する能力のない者が二回試験に失敗し、法曹資格を取得できないという当然の結果にすぎない。

今月中旬に,未修者を含めた新司法試験合格者の二回試験の結果が発表されたわけですが,その直前に

法科大学院卒業者で二回試験を終えたのは、旧司法試験を受験するために予備校で教育を受けてきた、二年制の既修コース卒業生のみ(不合格率七・二パーセント)である。

って,殊更に時期を前倒しにして書いたとしか思えないのですが・・・。

それよりも見過ごせないのが以下の記述。

不断の業務能力の向上は専門プロフェッションとしての一人一人の弁護士の研鑽と所属弁護士会の指導によるべきものであって、勤務弁護士でなければOJTが受けられないというものではない。司法研修期間が短縮され、自ら研鑽する能力のない者が二回試験に失敗し、法曹資格を取得できないという当然の結果にすぎない。

不合格者が大量に発生していることについて「司法研修期間が短縮され,自ら研鑽する能力のない者が二回試験に失敗」という「当然の結果」って,要するに自己責任論ってことですか?制度の改変については何らおかしいことはないっていいたいわけですか。

久保利弁護士は以下のようにも述べています。

法曹人口激増のためのインフラである法科大学院に対しても、厳しい注文が寄せられている。「特許やコンテンツ、経済活動の基礎である金融・証券の基礎の分かる人材が少ない」「いまは独善的な弁護士が多いので社会人経験も必要である」「市民の目線で依頼者の心理も理解する優しい弁護士が欲しい」などと、「法律学でガチガチになった頭の持ち主」ではなく「かけがえのない人生を生きる国民の社会生活上の医師」という弁護士像が求められている。一例を挙げれば〇八年に大宮法科大学院から合格した一六名中一一名が非法学部出身である。一〇名が社会経験を持ち、現職の医師をはじめ、理系院卒の電機・通信専門家、英米の大学・大学院卒業者など多士済々である。国民はこんな経歴の弁護士を待っている。

何人の大宮法科大学院修了者が受験したのかを記さないのはフェアではないでしょう。法務省のサイトによれば2008年度試験の受験者は81名,合格率は19.75%です。未修者全体の合格率が22.52%ですから,お世辞にも高いとはいえません。久保利弁護士が挙げるような有為な人たちを合格に導けなかったことについて,単に研鑽が足りないということで済ませるつもりなのでしょうか?

それに,

現職の医師をはじめ、理系院卒の電機・通信専門家、英米の大学・大学院卒業者など多士済々である。

って,大宮法科大学院が一定の学歴などを誇る者向けのロースクールだって誇っているように読めますが,こんなことでよいのですか?

法科大学院の定員4000人などと日弁連が口走っていいのか?2008年12月26日

弁護士激増に反対する若手の会ブログ

3000人を見直す気のなさそうな日弁連

というエントリをアップしました。

増田さんのブログによれば,

一説には、不合格や受験控えで受験者数が7割、合格率が7割で、概ね2000名程度の合格者数になるとか説明されているそうです

とのことですが,法科大学院を修了しない(させない)人が3割も出ると考えること自体,それだけの人を受験から排除することを当然とする排除の論理で問題ですし(本来ならば,修了させられるだけの学力付与に失敗した大学院の責任も問われるべきでしょう。),受験控えする人も翌年以降いつかは受験するわけですから,単純に受験者数の減少としてカウントすることはできないでしょう。上記のような説明が本当に行われたとすれば,嘆かわしい限りです。

また,そもそも,日弁連が何の権限があって法科大学院の定員に口出しするのか?というのが疑問ですし,定員という大学経営の根幹にかかわることについて中央教育審議会が削減を求めること自体についても,公権力による大学運営への介入としてもっと問題視されてよいのではないでしょうか。

そもそも4000人という数の提示自体弁護士激増への歯止めとなるのか疑問ですし,大学の自治といった問題を含めて見た場合,弁護士激増への歯止めを法科大学院定員削減などという迂遠な手段で行おうとすることは,害が大きいのではないでしょうか。