会長選挙の公聴会に出席して2009年01月30日

 昨日,私の所属する弁護士会の役員選挙の公聴会があったので,参加してきました。

今回の選挙では3名が会長に立候補しているのですが,弁護士激増に反対しているのは1名のみで,残り2名はいずれも弁護士激増,裁判員制度といった「司法改革」の推進派です。

司法改革推進派の候補に依れば,司法改革は「痛みを乗り越えて完成させねばならない」ものであったり,それにまつわるいろいろな問題についても「たじろがず前に向かって進む」べきものであるとのことです。

「改革」と言えば全てOKの御時世は終わったと思うのですが。この経済的危機の御時世,弁護士人口だけが右肩上がりに(しかも急激に)なる理由はないのであり,司法改革推進派の候補の言っていることは,敗戦必至の状態でなお戦争を継続し損害を拡大した旧日本軍のようですね。

公聴会は,候補による演説→あらかじめ出されていた質問に対する候補者の回答→会場からの再質問,関連質問とそれに対する候補者の回答→候補者の演説といった順で進みました。

私は予め,新司法試験の受験回数制度の見直しや法科大学院経由以外の受験ルートの確保についての質問を出していたのですが,司法改革推進論の候補者からは回答がなかったので再質問。

これに対する司法改革推進派の候補からは,従来のように10年,20年受け続ける人が出る,滞留者が増え合格率が下がる,といった理由から,受験回数制限撤廃については見直しを求める意図は無いとの回答がありました。推進派候補の中には,自分も解いてみたが普通に勉強すれば3回以内に受かるような問題であり,受験回数制限は,他の選択肢を探した方がいいという意味だとまで言った人がおり,これにはあきれざるをえませんでした。

大体,何回受け続けるか,いつあきらめるかなんて個人個人が判断すべきことで,制度的に受験できなくするというのはお節介以外の何物でもありません。また,合格率が下がるといいますが,4回目の受験で他の受験者を上回る成績を挙げることとなる人を一旦受験レースから外すことについて,全体の合格率維持のためというのが合理的理由になるとは思えません。

合格率が当初誤解されていた(司法制度改革審議会意見書においても,合格率の保証はされていません。)より低くなったことについての手っ取り早い受験生救済策として,受験回数制限の撤廃ないし適用猶予は直ちに考えられていいのではないでしょうか。

また,法科大学院を経ない司法試験受験ルートの拡充についても,司法改革推進派候補の両名は,法科大学院を中核とする法曹養成という理念にそぐわないとして否定していました。しかしそんなに学生を法科大学院に行かせたいんですかね?推進派の一候補は,法曹養成の基盤整備ができていない以上前期修習の復活を考えるべきとまで言っており,この論理からすれば,法曹養成の基盤としての法科大学院がその機能を十分に備えていない以上,そんなところに行かせること自体法曹志望者に無駄な時間と金を費やさせることになるもので忌むべきこと,ということになると思うのですが・・・。

法科大学院の代替ルートとしての司法試験予備試験の合格者数の拡充については,規制改革会議も述べていることであり,その意味では,新自由主義の立場からの主張と結論を同じくすることとなる点には注意が必要です。しかし,法科大学院を中核とする法曹養成制度自体,法曹人口増に伴う質への懸念の解消策として打ち出されてきたもので,弁護士激増と一体となったものであること,最近の大阪市立大学の例に見られるように,学生を管理・選別する(絶対評価で多数の学生にA評価をつけることに疑問が表されるのですから!)機関としてを考えた場合,弁護士人口激増ストップとともに,法曹志望者が自由に法曹になれる道を選べるよう,法科大学院を経ないで済む制度への転換(過渡的措置としては予備試験枠の拡大)を行うべきように思います。