当面の法曹人口のあり方に対する日弁連提言案及び司法試験予備試験の運用について2009年03月17日

明日3月18日から日弁連の理事者会で法曹人口に関する提言案について審議がなされる予定となっている。

ホントはそちらの話が緊急性が大きいのだが,この問題については武本弁護士作成の意見書(PDF)に私も賛同したので,そちらへのリンクを貼っておくことで済ませることとする。

ちなみに私の属する第二東京弁護士会では,会としての常議員会の議決は取らなかった。ただ,常議員会では,日弁連提言案に反対の意見が多かったようだ。

代わりにというわけではないが,法務省(司法試験委員会)が出した「予備試験の実施方針について(案)」に対して私が出した意見を以下に掲載する。

第1 予備試験の実施に当たって一般的に配慮すべき事項について

損ねるべきでないとする「法科大学院を中核とする新たな法曹養成制度の理念」の内容があいまいであり,予備試験を通じて法曹となる途を不当に閉ざすこととなるおそれがある。

判定されるべき「法科大学院修了程度の能力」は,実際に法科大学院を卒業して新司法試験を受験している者が出てきていることから,現に新司法試験を受験している者のうち最低ランクの者に合わせるのが相当である。

司法試験法上,法科大学院修了者と予備試験合格者は新司法試験受験資格取得者としては全く同列に扱われているのであるから,現実の法科大学院修了者に比べ予備試験合格のために要求される基準が高くならないようにすべきである。

同時期に日弁連が出した意見書(PDF)のような立派なものはとてもできないので,コンパクトな意見とした。

ところで,ひとりごとさんの解説を見ると,日弁連意見では試験に対処するために勉強しなければならない範囲も広いものになるなど,予備試験受験者にかなり大きな負担を課すものになっているようだ。たかが資格試験の受験資格を得させるためだけに,そんなに広い範囲の勉強をしなければならないのはおかしいように思う。

日弁連意見書を見てみると,

予備試験自体の受験資格は何ら制限されていないことから,その実施・運用のあり方如何によっては法科大学院を経由しない安易なバイパスとなり,法科大学院を中核とする新しい法曹養成制度の理念を損なうおそれがある。この点に十分配慮し,厳格な実施及び運用を行うべきである。

と記しているが,日弁連は明日以降審議予定の意見書案で法曹養成の基盤がまだ整っていないことを増員ペースダウンの理由に挙げているのだから,法曹養成制度改革についても同様に,法科大学院が新たな法曹養成の受け皿としての基盤となっていない以上,「法科大学院を中核とする新しい法曹養成制度」への全面的移行についても見直すべきではないのだろうか。

適性試験ってそんなに素晴らしいものなのか?2009年03月31日

大分前の記事ですが・・・。

法科大学院の適性試験、下位から15%「門前払い」案asahi.com

法科大学院の志願者に義務づけられている適性試験について、中央教育審議会(文部科学相の諮問機関)の作業部会は、総受験者の下位から15%程度を目安に、大学院入学の「最低基準点」を設定するべきだとの案をまとめた。大学院入学者の質向上を目指すためで、単純計算で受験者の6.6人に1人が事実上「門前払い」される形になる。

作業部会は19日午後の中教審法科大学院特別委員会に報告した。特別委は近く、大学院改革の最終報告をまとめるが、作業部会のこうした提案も盛り込まれる見込み。

適性試験は、大学院での教育に必要な判断力や思考力が備わっているかをみるため、大学入試センターと日弁連法務研究財団がそれぞれ実施している。しかし、一部の大学院は、極めて低い点数でも合格させているという。

こうした点を考慮し、作業部会は「統一的な入学最低基準点を設定する必要がある」と指摘。下位から15%程度を目安に、各実施機関が受験者数や得点分布などを考慮し、毎年の最低ラインを設定すべきだとした。さらに、大学院が最低ラインを下回った受験者を合格させたりしていないか、認証評価の際に調査することが必要としている。

作業部会はほかにも大学院の「入り口」の改善策を検討。現時点で競争倍率が2倍を下回る大学院などは「早急に入学定員の見直しなど競争的環境を整えることが不可欠」と強い表現で指摘した。(大西史晃)

総受験者数の下位の一定割合を門前払いって,その年々によって受験者の水準は異なるでしょうに,不合理としかいいようがありません。

またそもそも,法曹になるための資質をはかるのに,そんなに適性試験って有用なものなのでしょうか?どんな資質を持った者を入学させるかも正に大学自らが自治によって決めることのような気もするのですが,大学にはそのような主張をする気概も失せているのでしょうか。

適性試験などという統一的な物差しで,しかも法曹になる3~4年前に志望者を切り捨ててしまうのは,多様な資質を持った法曹が現れるのを阻害するものではないでしょうか。

まあ,大学への入学からして「共通一次」(現センター試験)という統一的物差しで図ることにしてしまっている大学からすれば,違和感など感じないのかも知れませんが。統一試験を採用することと,その結果をどう使うかについて拘束がかかることとは別問題であることにもっと留意すべきように思います。

法曹人口に関する日弁連提言2009年03月31日

今日送られてきた日弁連のFAXニュースに,先日公表された法曹人口に関する日弁連の提言が理事会で可決されたことが載っていました。

出席者84人中、賛成76、反対6、棄権2

で採択となったようです。

理事会を傍聴した知人の報告によれば,10人の理事が発言したが,

理事会の審議内容は、「議論」ではなく、各会の会員集会や常議員会で出た意見を紹介するというものばかりで、その中では批判的な意見の紹介が主になされましたが、理事自身の意見は「基本的に賛成」というものが多く、明確に反対した会の理事(埼玉会長)は自分の意見は言いませんでした。

ということのようです。

批判的な意見の紹介が主になされたが理事自身の意見は「基本的に賛成」って,理事会に出る立場の人と,一般会員の意見がかけはなれてしまっているんですね。

また,武本夕香子弁護士が公表された意見書については,兵庫の理事(会長)が「有志意見書」として配布させたようですが、兵庫の理事はその内容には触れず、常議員会の決議内容を紹介しただけ

とのことでした。

弁護士の全国的業界団体である弁護士会が,会内の弁護士の声よりも理事会内での協調や外面を強く意識するようでは,やがて弁護士会に愛想を尽かす弁護士が増え(今でも多いのかもしれません。),弁護士自治もますます危うくなっていくのではないでしょうか。