再選挙になったようだが2010年02月06日

日弁連会長選挙,再選挙になったようですね。

東京3会と大阪では山本候補が大差をつけたようですが(ただし,大阪などは山本陣営が思ったほどの差ではなかったようです。),地方会は軒並み宇都宮候補が制したようです。

今回の選挙は,いずれの候補も「司法改革」自体を否定してはいないので,私から見ると同じ穴の狢同士の争いと思えますが,どちらがよりマシかと言われれば,合格者数1500人への減員を明確に打ち出し,予備試験ルートを例外的措置とすることを見直し,新司法試験受験回数制限の撤廃を掲げる宇都宮候補かなとは思います。しかしながら,宇都宮さんの選挙戦術見てると,こんなこと言って勝つ気あるのか?というのが見受けられます。

その最大の問題は,弁護士激増見直しの理由として法曹の「質」の問題を挙げたことでしょう(個人の資質うんぬんではなく制度上の問題と説明を付け加えてはいますが)。激増による質の問題の発生などと言えば,既に開始している合格者増のもと弁護士になった人の反感を買うことは必至ですし,私自身は,そう簡単に質うんぬんって言えることなのか?,という気がしています。 激増の最大の弊害は,競争激化により事件漁りや効率化名目での安易な事件処理が横行することなのではないでしょうか。こういった点を率直に打ち出すことで,現に就職難を経験し,経済的苦境にあえいでいる若手弁護士の支持も得られるのではないかと感じます。はっきりいって,業界団体内部の選挙にエエカッコシイがこれ以上必要なのか疑問に思います。

ただ,東京三会で山本候補に多くの票が集まったことについては,本当にそれでよいのか?という思いを強くします。

この点に関連して,若手弁護士に向けて,自分たちが弁護士になることができた制度だからそれを否定することは許されない,という言い方をする人もいますが,それは単なる精神論にすぎません。現にある制度を利用したことの可否と,その制度が続くことがよいかどうかは別の問題です。悪い制度がある際に,その制度をやむを得ず利用しながら,後の人たちが同じ制度による被害を受けないよう,制度を改めるべく運動するという手法は,おかしなものとは思いませんし,責められるべきものでもないでしょう。

自分たちが「司法改革」の進行下で弁護士になったからといって,また,「改革」という名のものだからといって,それを受け入れるべきとすることは思考停止以外の何者でもないように思います。「司法改革」の名の下で企図され,実施され,また現に起きようとしていることがなんなのかをよく見据えた上で判断していただければと思います(ただ,そのようにして考えた場合,今回選択肢が・・というのが私自身の結論なのですがorz)。

コメント

_ 改革賛成です ― 2010年02月07日 21時13分23秒

この制度により弁護士になり、よい仕事をしていれば、それを“被害”とは考えないでしょう。

司法改革により弁護士になって相談者、依頼者に役に立っていれば、その制度を肯定するのは当然です。

また、宇都宮陣営が問題視する“事件アサリ”によって多くの人が弁護士のサービスを受けられたのは間違いありません。

たとえば昔は借金と言えば自殺か夜逃げでしたが、今は債務整理です。ここには既得権益を守ることばかり考えている弁護士会権力と戦って広告自由化を勝ち取った改革派の先輩たちの努力が活かされています。

宇都宮勢力の言うことを聞いていると“弁護士はいらない。市民からアクセスできなくてもかまわない”としか聞こえません。

こんな人に自分の経済的基盤のことばかり考えて投票してしまう地方の弁護士たちには失望しました。

この際、日弁連も改革派と守旧派に分裂したらいいんじゃないでしょうか。

ちなみに、一部で言われている事務員任せは有資格者が少なすぎるから起きる問題ですよ。これを問題視するなら、なおさら増員を推進すべきです。

_ ノムラ ― 2010年02月08日 10時08分04秒

別稿でも述べたとおり,私はいずれの候補も支持していないので,私の記事内の主張を見て,宇都宮候補の主張とすることはおやめ下さい。

あと,いくつか事実誤認も見られるようですが,その点は別エントリを立てたいと思います。

_ ノムラ ― 2010年02月10日 12時43分49秒

別エントリを立てるといいましたが,引き続きコメント欄で回答することにしました。

>また、宇都宮陣営が問題視する“事件アサリ”によって多くの人が弁護士のサービスを受けられたのは間違いありません。

事件漁りをする弁護士によるサービスを受けられたことが本当によいことだったのでしょうか。大々的に広告を出している(現存の)法律事務所に一旦依頼された事件の後を引き継いだことがありますが,事件処理には苦労しました。また,某事務所の案件については,東京地裁民事20部が全件破産管財人を付すことにしたという話を聞きます。この事務所への依頼者は,他の事務所に依頼すれば払う必要の無かった管財費用を払わせられるという損害を被ることになります。
ちなみに私は宇都宮候補を支持している者ではありませんので,その意見を宇都宮候補が言っていることのように記すことについてはこのブログではおやめください。

>たとえば昔は借金と言えば自殺か夜逃げでしたが、今は債務整理です。ここには既得権益を守ることばかり考えている弁護士会権力と戦って広告自由化を勝ち取った改革派の先輩たちの努力が活かされています。

債務整理の存在がこれだけ知れわたるようになったのは,消費者系弁護士が過払金請求を積極的に行い,数々の判決を勝ち取ってきたことで,ペイするビジネスとしての認識が弁護士や司法書士の間で広まってきたからではないでしょうか?「広告自由化を勝ち取った改革派」の人たちは,そのような成果にただ乗りしているにすぎないように思いますが。
ちなみに私は広告自由化論者ですが,景品表示法などによる顧客勧誘規制は厳しく適用すべきだと考えていますから,例えば司法書士の広告については,140万円を超える過払いについては請求を断念せざるを得なくなるできない旨表示することを義務づけるべきだと思いますし,過払金が発生しない場合に受任を断るような弁護士は債務整理と謳うべきではないように思います。

>こんな人に自分の経済的基盤のことばかり考えて投票してしまう地方の弁護士たちには失望しました。

経済的基盤のことばかりというのは誹謗中傷ではないでしょうか。経済的基盤なくして「公益」的活動を低い報酬で行うことはできませんよ。競争が激しくなれば,経済的基盤を築くことに躍起になって,ペイしない事件は見向きもされなくなるか,手抜きが増えることになってしまうのではないでしょうか。

>この際、日弁連も改革派と守旧派に分裂したらいいんじゃないでしょうか。

改革派,守旧派というレッテル張りの是非はとにかく,このままだと分裂やむなしということになる可能性は大きいと思いますが,それを喜ぶのは誰なんでしょうかね?いわゆる第二労組といったものが結成された結果などを見れば明らかなように思いますが。

>ちなみに、一部で言われている事務員任せは有資格者が少なすぎるから起きる問題ですよ。これを問題視するなら、なおさら増員を推進すべきです。

事務員に払っていた給料で勤務する弁護士が多数輩出されるということですが,法科大学院に通学した上で貸与制の下の司法修習を経てくる,多額の負債を抱えた弁護士にそのような給料で生活せよというのが「司法改革」の目指したところであるということなんでしょうか?まあ,私は「司法改革」がそのようなものだと認識しているからこそ,「司法改革」に反対しているのですが。

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