2010年新司法試験合格者発表を前にして2010年09月09日

今日,9月9日は新司法試験合格者発表の日ですね。

今年(2010年)の司法試験合格者数については,従前の閣議決定(「司法制度改革推進計画」平成14年3月19日閣議決定) で,3000人を目標とすることとされています。

ただ,この閣議決定の法曹人口に関する箇所を見ると,

現在の法曹人口が、我が国社会の法的需要に十分に対応することができていない状況にあり、今後の法的需要の増大をも考え併せると、法曹人口の大幅な増加が急務となっているということを踏まえ、司法試験の合格者の増加に直ちに着手することとし、後記の法科大学院を含む新たな法曹養成制度の整備の状況等を見定めながら、平成22年ころには司法試験の合格者数を年間3,000人程度とすることを目指す。

となっており,実際には法的需要がそれほど拡大したとは言えないこと,法科大学院を含む新たな法曹養成制度が十分に整備されたといえるかどうか疑問であることを理由として合格者数を3000人未満とすることが可能な表現になっていることから,3000人の合格者となる可能性は少ないのではないでしょうか。

個人的な予想としては,短答式試験の合格者が前年度に比べて増加していることを考えると,2500人前後合格するのでは,という気がします。ただ,それでも多すぎるという気はするんですけどね・・・。

(16:20追記) 2074人ということのようですね。前年度とほとんど変わらない数です。政府内での検討チームの検討結果が出るまでこの辺りの数で推移するのでしょうか・・。

司法修習発展的解消論?閣議決定・約束違反?2010年09月13日

先週の土曜日,弁護士会で,司法シンポジウムなるものが開かれたようだ。

そこでは,新司法試験合格者による,司法修習発展的解消論なるものが唱えられた模様。要は,法科大学院を法曹養成の中核とする考え方を推し進めれば司法修習は不要となるというもの。司法修習がなくなれば,貸与制とか給与制とかいう問題もなくなるということらしい。

この発言者とおぼしき人のつぶやきとか見ると,法曹になるまでの拘束期間が長いことを問題にしているようだった。

でも,修習による1年間の拘束よりもずっと長い拘束が法科大学院によってかけられていることの方が問題だと思うんだけど,いかがなもんなんだろう?

それにこの人,今までの点による選抜が問題だったことは明らかというような論調でつぶやいているようなのだが,一発勝負での選抜がプロセスによる選抜よりよいという具体的根拠が明らかでないし,一発勝負で,そこまでの過程が問われない方が,より多様なルートから法曹になる人が輩出されることは明らかなんじゃないのかな。いわゆる三振制もなかったんだし。

私自身,現在の司法修習が優れたものかどうかについては,修習期間が1年半になって初年度の統制下の修習を経験したこともあって,かなり疑問視しているし,法曹養成について,現時点で貸与制か給与制かだけを取り上げて論ずることは反対だけど,司法修習をなくせば解決なんていう考え方には到底賛成できない。

あと,司法試験合格者3000人が達成されなかったことについて,閣議決定に反する,約束違反だという意見を最近ネット界隈で目にした。また,私の属する第二東京弁護士会の某派閥のニュースレターでも,公約違反とのトップ記事があった。

しかしこの点については前回の記事でも触れたけど,合格人数についてはしっかり前提条件というか留保がついているんだよね。

合格者数や合格率については,新司法試験初年度に,7~8割合格しないことについての文句の声も目にしたけど,7~8割というのは法科大学院の努力目標にすぎないのであり,7~8割というのが合格率の保障でないことは司法制度改革審議会意見書を読めば分かることなんだよね。

司法制度改革推進計画にしても,司法制度改革審議会意見書にしても,権力側が作った文書なわけで,その解釈については権力側が行うことになっている。それだけに,書面上の記載については後に権力側によってどのような解釈がされるおそれがあるのか,綿密に点検する必要があるのではなかろうか。

それをきちんと検討せずにか,検討して分かっているけど故意にかは知らないけど,約束違反だって騒ぐのはどうかと思う。

まあ,自分が権力側に自分がイヤなことをやられたら騒ぐだろうから,今回騒いでいる人は上記のことが分かってやっているんだろうけどね,というか,弁護士やそれになろうという人である以上,それくらい分かってやっているものと信じたい。

最近の「司法改革」をめぐる一連の動きを見ていると,「司法改革」を推進している人たちって,綿密にものごとを見聞き考えているわけではないんだなって感を強くさせられる。

私も,そんなこと今更気づいたのか,って言われそうだけれども。