代理出産:規制の新法制定を要求…学術会議検討委2008年02月19日

1月末のシンポジウムで報告された方向でいくことになりそうですね。

代理出産:規制の新法制定を要求…学術会議検討委毎日jp

不妊夫婦の受精卵を他の女性が妊娠・出産する代理出産について検討してきた日本学術会議の検討委員会が19日開かれ、代理出産を規制する新法「生殖補助医療規制法(仮称)」の制定を求める最終報告書案が示された。

報告書案では「代理出産については現行のまま放置することは許されず、規制が必要」とし、新法では、代理出産を「当面原則禁止することが望ましい」とした。営利目的の実施については処罰対象とする。

一方、公的な管理の下で、研究目的で試行的に実施することは容認する。このために法律家、生命倫理学者、医師、看護師、心理カウンセラーらをメンバーとする運営機関の設立を求めた。また、海外などで生まれた子の母は出産した女性とし、依頼夫婦が養子や特別養子とすることを認めるとした。

報告書案は3月の最終検討委を経て、同会議幹事会で正式決定し、検討を依頼した厚生労働省と法務省に回答する。【永山悦子】

営利か非営利かをどう区別するのでしょうか。 実費目的での金銭の授受がなされるという形での脱法行為のおそれや,非営利でも家族間での強制や勧誘が行われることを考えれば,国外犯処罰規定つきで,営利非営利問わず全面的に禁止すべきように思います。生まれて来た子どもの救済のために養子や特別養子になる途は残すべきだと思いますが。

臨床研究としての代理出産~例外として認めるのはまずいでしょう2008年01月30日

原則禁止はいいのですがね・・・。

代理出産、原則禁止に 学術会議検討委が大筋合意共同通信

不妊の夫婦が妻以外の女性に子どもを出産してもらう代理出産の是非を検討していた日本学術会議「生殖補助医療の在り方検討委員会」(委員長・鴨下重彦東京大名誉教授)は30日の会合で、代理出産を法律で原則禁止し、営利目的での実施は依頼者を含めて処罰すべきだとする報告書案の内容に大筋で合意した。

一方で、代理出産の是非を判断する科学的データは不十分だとして、国の厳重な監視の下で試行的に実施する臨床研究の道も「考慮されてよい」と道を残した。

3月までに最終報告書を発表し、政府と与野党は法整備を求められることになるが、国会議員の間でも賛否をめぐり意見が分かれており、曲折が予想される。

報告書案は、代理出産によって代理母となる女性が被る身体的・精神的負担や、生まれてくる子どもの心に与える影響などの問題点を重視。法律によって禁止すべきだと結論づけた。

営利目的の場合のみ処罰するとありますが,親族間での代理出産契約などは強制や誘導のおそれが大きいのですから,非営利であっても処罰の対象とすべきではないでしょうか。もっとも,親族間の場合,依頼者自身も,家制度の圧力などでやむを得ず依頼者とならされたという面もあるかも知れず,被害者としての側面もあることが考慮されたのかもしれません。

それはさておき,今回の報告書案で納得いなかいのは,臨床研究の道も考慮されてよいとされていることです。

臨床研究ということは,代理出産者となる人が出ることを認めるということです。「国の厳重な監視下で」,つまり,管理売春ならぬ管理代理出産が行われることになるのですが,

代理出産によって代理母となる女性が被る身体的・精神的負担

について,臨床研究目的ということであれ,女性に負わせることを国が容認してよいのでしょうか。

この臨床研究において代理懐胎する女性に中絶の自由は認められるのでしょうか。また,代理懐胎者が子どもを渡したくないといったとき,その主張は認められるのでしょうか。それでは実験の目的が達せられないからといって,代理懐胎者の主張は退けられるか,「説得」という名の強制が行われるおそれが大きいのではないでしょうか。

日本では,臨床研究の被験者となる人を保護するための法制度が極めて不備な状態にあります。有識者からは被験者保護法制定の提案もなされていますが,未だ実現するに至っていません。

代理出産自体,代理懐胎者となる女性に大きな負担を与えるものであるのに,このように被験者の保護に欠けている状態で,代理出産の臨床研究を認めることは,被験者=代理懐胎者となる女性にとって極めて重大な身体・精神上の危険を及ぼすものです。到底認められるべきものではありません。

代理出産は研究目的のものも含め全面的に禁止すべきです。

代理出産の依頼・仲介と刑事罰2008年01月26日

代理出産について刑事罰つきで禁止することについては,以下のような疑問が出されています。

1 保護法益(法規制により守ろうとしている利益)は何か。

2 禁止した場合に海外で行われることについて,どのように対処するのか。

1について  保護法益については,代理出産者の生命,身体ということになります(このほかにもプライバシーや意思決定の自由というのも保護法益として考えられますが,今回は生命,身体への危険という点に限ります。)。

出産の危険性については,一般の出産の場合と比べてどうかという点について議論はありますが,母体に対する危険を生じさせるものであることは否定されていません。

このように代理出産は,代理出産者の生命身体に危険を及ぼす行為ですから,他人である代理出産者にそのような危険を殊更に負わせることを防止するため,代理出産を禁止することは正当化できるでしょう。

刑罰を科す対象としては,代理出産者自身についてはいわば被害者としての立場にあるから科さないこととし,一方,依頼者や,かかわった医師,仲介業者については,他人の身体に害を及ぼす危険のある行為をした以上処罰するとしてよいように思います。

2 国外での契約,出産依頼について

国外で代理出産を依頼した人をどうするか。

この点については,日本国民が国外で行った場合についても処罰する規定を置けば足りることです。

国外で生まれたこどもについて代理出産かどうかどう見分けるのかという反論がありますが,代理出産を行ったことが判明した場合に処罰の対象としない理由にはなりません。

国外犯処罰の規定を置いた立法例としては,児童買春防止法がありますが,これだって,海外で児童買春を行ったかどうかは帰国時には分からないのが通常です。

それでも,どうせ海外で行われたものは分からないからといって,児童買春を規制しないということにはなりませんでした。 むしろ,日本人による海外での児童買春を規制する必要があるということで,国外犯を処罰することとしているのです。

代理出産規制についても,同様の理が当てはまるでしょう。

このように,代理出産については,保護法益についても,国外で行われた行為への対応の点についても,刑事罰を科すことに問題はないものです。

刑事罰を科すことには一般に謙抑的であるべきであるから刑事罰の賦課は慎重になすべき,という考え方もあるでしょう。しかし,代理出産契約の禁止を仲介業者や依頼者に対する関係で実効的なものとするためには,刑事罰(自由刑)を設けるしかないように思います。

代理出産をめぐる「自己決定権」論について2008年01月24日

代理出産を認めるべきだという根拠として,自己決定権という言葉が持ち出されることがある。自己決定権とともに,生殖活動の自由ということが言われることもある。

妊娠・出産をめぐる自已(ママ)決定権を支える会

「代理出産一律禁止、代理母以外の関係者すべて処罰」の学術会議報告書素案提示(下)~憲法に対する意識、日本人の生き方が問われている問題であるBecause It's There

自己決定権を尊重すべきだというと,人権を尊重しているみたいで聞こえがよい。

しかし本当に人権を尊重しているのか?

生殖活動の自由というが,子どもを生んでいるのは代理出産をした人であって,代理出産の依頼者ではない。

代理出産者という他人に契約による義務を課す点で,「自己」決定権といって認めることのできる問題ではなくなっている。

また,依頼者夫婦の生殖に関する自己決定権と言っても,その内実は,他人に子どもを出産してもらい,その子どもを自分たちの子どもとするという内容の契約(民法上は,請負契約ということになろう。)を結ぶことが権利として認められるのか,ということだ。契約をする自由ということでは,他の経済的自由,財産権の行使とそう変わるところはない。公共の福祉(憲法29条2項)に適うように,その内容を法律で定めることのできるものと考えてよいのではないか。もちろん,代理出産契約自体を法律で禁じることも可能だろう。

目を代理出産者に転じてみる。

代理出産者は,契約により,生活上の自由を制限される。喫煙,飲酒,性交渉その他諸々の制限が日常生活にかかってくる。それも,10か月もの期間を通じて。また,依頼者夫婦から中絶の要求があった場合には応じなければならず,一方で,代理出産者には中絶の自由がない。

こうした制限は,「自己決定権」によって正当化できるのか。

正当化できるとすれば,それは,「自己決定権」によって,代理出産者に権利を認めているのではなく,代理出産者に義務を課すことを正当化していることになる。 自己決定権という名のもとに,いったん契約に同意したのだから義務を甘受しろという形で,代理出産者に「自己責任」を負わせているのである。

「自己決定権」というと権利を認めるもので結構なものという感じを受けるが,実際には「自己決定権」を行使したのだから,そこまで言わずとも「自己決定」したのだから「自己責任」を負えと言って他人に義務を課すことを正当化しているのだ。欺まん以外の何ものでもない。

ところで代理出産容認論者は,以下の問題についてどう考えるのだろうか。

  1. 代理出産者が,依頼者からの要請に反し,産んだ子供を引き渡したくないと考えた場合でも,代理出産者は依頼者に対して産んだ子どもを引き渡す義務を負うか。
  2. 代理出産者が依頼者の要請に反し子どもを引き渡さなかった場合,損害賠償義務を負うのか。
  3. 代理出産者が中絶を希望した場合,契約上中絶が禁止されていたからといって,代理出産者は中絶を諦めなければならないのだろうか。
  4. 依頼者夫婦が中絶を希望した場合,代理出産者は中絶しなければならないのだろうか。

契約時に自己決定権が保障されていたのだから契約上の義務には従わなければならないという論理からすれば,上記質問に対しては,契約上定められているのであればいずれもYESである,ということになろう。

しかし,契約締結時に「自己決定権」を行使できたからといって,その後の制限が正当化できるのであろうか。

「自己決定権」の行使によって結ばれたはずの契約という点では労働契約だって同じはずだが,労働契約の拘束力については,労働法によってかなりの修正が加えられている。

一般に労働市場において,使用従属関係にある労働者と使用者との交渉力は不均衡であり,また労働者は使用者から支払われる賃金によって生計を立てていることから,労働関係の問題を契約自由の原則にゆだねれば,劣悪な労働条件や頻繁な失業が発生し,労働者の健康や生活の安定を確保することが困難になることは歴史的事実である。(「規制改革会議「第二次答申」に対する厚生労働省の考え方」)

という考え方は,代理出産者と依頼者との関係にも当てはまるのではないだろうか。

代理出産者に志願する理由としては,貧困のためとされるケースが多い。日本のタレント夫婦の依頼を受け代理出産者となった女性も,夫が自己破産しており,家のローンに報酬をあてることが代理母の目的の一つであるとしている。(向井亜紀の代理母が語った「報酬」と「自己破産」

代理出産者は,報酬を得ることを優先するあまり,不利な条件であってものんでしまう。そのような条件について,自己決定権の行使の結果として受け入れたからといって,履行を強制してよいのかどうかは慎重に検討すべきだろう。

代理出産の依頼者となったタレント夫婦は,多胎妊娠をした代理出産者が減数中絶を希望したのに対し,(やんわりとかもしれないが)その希望を拒絶し,代理出産者は依頼者の要望を受け入れ,減数中絶を断念している(減数中絶自体にも問題があるが,その点は措く。)。

「双子であることについては、私の体が臨月まで耐えられるかどうか自分の子供の世話や生活もあり、すごくそのときは不安を感じてしまって悩んだ末に減胎を申し出たんです。つまり、双子のうちのひとりを堕胎したいといったのです。しかし、アキの強い意志と希望を聞き、また医師の安全であるという説明をうけて、双子を生むことを決心したんです」(大野和基 向井亜紀の代理母 インタビュー

金主である依頼者の「強い意志と希望」,医師の安全であるという「説明」。これらを受けてなされた「決心」が「自己決定」と言えるのであろうか。

抽象的に自己決定権さえ保障すればいいのだという考え方は,経済的に弱い立場にあることの多い代理出産者と,金主となる依頼者という具体的関係に目をふさぎ,強者の論理を貫徹しようとするものだろう。ネオリベ的考え方ともいえる。

無報酬でならよいとする考え方にも問題がある。

無報酬といっても仲介者,代理出産者には何らかの金員が支払われるのが通常であり,「無報酬」という言い方自体詐欺的である。(臓器移植・代理出産等で無償性を強調することの欺瞞

また,対価無しで他人のために代理出産を引き受けようとする人はそう現れないだろうから,考えられるのは親族による代理出産ということになろう。

家を守るために,お姉さん(又は妹)が可哀想だから,という理由で,代理出産が強制されるおそれはないのか。

また,代理出産という手段があるのだからという理由で,その利用を押しつけられたりすることにならないか。

以前の記事hさんがコメント欄で書かれたように,現代日本の家族関係の中では,依頼者や代理出産者となることについての「強制や誘導」がかなり多く発生するようになるだろう。

「自己決定権」を強調することは,そのような状態でなされた代理出産であっても,問題が生じたときには,「自己決定権」の行使だからということで,周囲の者の責任は不問にされ,依頼者夫婦と代理出産者間の問題にされるのではないか。

自己決定権がうたわれるときには,それがほんとうに権利保障に資しているのか,義務を課すことの正当化に用いられていないかという点に注意が必要である。

代理出産を認めることは,一握りの者の利益の追求を可能にすることとひきかえに他者に「自己責任」という形で義務を押しつけるものである。

代理出産の場合「自己決定権」は人権を尊重することよりもむしろ人権を抑圧する原理として働いているのである。

代理出産:法律で一律禁止を 学術会議検討委が報告書案2008年01月18日

一方的な情に流されない報告で,ホッとしています。

http://mainichi.jp/select/science/news/20080119k0000m040099000c.html

不妊夫婦のために他の女性が夫婦の受精卵を妊娠・出産する代理出産について、日本学術会議の検討委員会は18日、代理出産を法律で一律に禁止することを求める報告書案を提示した。法で規制する方針については合意したが、一部容認を求める意見も出され、調整を続けることにした。

この日は、背景説明や代理出産の許容性に関する部分の報告書案が示された。代理出産を許容するか否かに関し、▽死亡の危険性のある妊娠・出産を第三者に課す問題が大きい▽胎児への影響が不明▽「家」を重視する日本では強制や誘導が懸念される▽本来の生殖活動から大きく逸脱している▽胎児に障害があった場合の解決が当事者間の契約だけでは困難--などの問題点を指摘した。

そのうえで、このような技術を不妊夫婦の希望や妊娠・出産者との契約、医師の判断だけに委ねることは「妥当性を欠く」として、法律による規制を求めた。

だが、法律で禁止する対象や処罰の範囲については意見が分かれた。委員の中には「全面禁止にはすべきでない。報告書は両論併記にすべきだ」との意見もあり、次回の検討委を目指して調整することになった。

私は主に,代理出産者に対する身体的負担と,日本では強制や誘導が懸念されることから,代理出産契約は営利,非営利問わず禁止すべきと考えています。

規制を実効的なものにし,海外で行うことが跳梁跋扈することを防ぐためには,依頼者,仲介業者及び医師に対して,国外犯も処罰するという形の罰則規定を設けるべきでしょう。

また,強制や誘導のおそれという点からは,近親者による代理出産は特に強く規制すべきように思います。

ところで,毎日の別の記事では,

一方、代理出産に関する科学的な研究について、国の厳重な管理のもとで試行的に実施する方法があると言及している。具体的な実施方法については国が検討し、20~30年にわたり、生まれた子の成長過程や出産した女性の健康状況について報告義務を課すなど慎重な検討を求める声も出ている。

と書かれています。この試行的実施って,脱法行為として機能するおそれはないんでしょうか。

また,臨床試験としてではあれ,国が女性をいわば産む機械として扱うことを正面から認めるということであり,人間の尊厳を踏みにじるもので許されないのではないかという気がします。

代理出産の規制に反して生まれてきた子どもの戸籍上の扱いについては,記事で見る限りでは報告書上触れられていないようですが,別記事(「代理出産と戸籍上の取扱い」)で述べたとおり,代理出産者を実母とした上で,やむを得ない場合(代理出産者の養育が期待できない場合)に限り特別養子同様の手続を経て依頼者が親となれる手続を経させるべきでしょう。子どもがほしいという熱心さのあまり,子どもができた時点で燃え尽きてしまうことも考えられますし,目的達成のために人の身体に負担をかけることをいとわない人たちに本当に子どもの養育を任せてよいのかは慎重に考えるべきだからです。

代理出産~自分が代理母になる場合はどうなんだろう?

代理出産と戸籍上の取扱い

臓器移植・代理出産等で無償性を強調することの欺瞞

臓器移植法改正案が問題とされる時期に何て発言を・・2007年08月21日

麻生外相のアルツハイマー発言ほどじゃないかもしれませんが・・。

「安倍内閣は脳死状態」 小沢民主代表が講演でasahi.com

民主党の小沢代表は21日、都内で自らが主宰する「小沢一郎政治塾」で講演し、参院選敗北後の安倍政権について「臨時国会がいつ開かれるのか、政府も当事者能力がなくなったのか、脳死状態なのか、うんともすんとも言わなくなったが、来月には国会を安倍内閣が無事なら開くのだろう」と皮肉った。

脳死状態の人は「うんともすんとも言わな」いかもしれませんが,体は動くし,出産までするケースもあるほどです。安倍内閣と一緒にするのは脳死者に失礼というものでしょう。

前の国会でも,脳死を人の死とする臓器移植法改正案が提案されていました。今度の臨時国会が長丁場になるとすれば,そこで審議にかかることも予想されます。この法案,人の生命に関わる法案です。民主・社民両党は,与党案とはむしろ正反対の方向の,ドナーの権利保障を充実させる方向の対案を提案していました。

しかし肝心の党首がこんな発言をするようじゃきちんと対決していけるのかどうか不安です。小沢氏には,こちらのページでもみてきちんと問題点を勉強してもらいたく思います。

臓器移植法~こんな状態で法改正してよいのか

「異常」受精卵かどうかはどう判断するのか?2007年06月27日

「異常」か否かってどういう基準で判断するのでしょうか。

ヒトクローン胚作製 異常受精卵からも認める方針

文部科学省の人クローン胚(はい)研究利用作業部会は26日、これまで未受精卵の利用を前提に検討してきた研究目的のヒトクローン胚作製を、一部の受精卵を使う場合にも認める方針で合意した。新たに認めるのは、異常のため生殖医療に使われず廃棄される受精卵の利用で、今後、実施のための条件を詳しく詰める。

国内では受精卵の扱いを巡り、ヒト胚性幹(ES)細胞の作製をめぐる指針づくりの過程で「生命の萌芽(ほうが)」としつつ、研究目的に限って壊すことを認めている。ただ、これまでのクローン胚は未受精卵から作る技術しかなかったため、国の総合科学技術会議でもヒトクローン胚の作製・利用について、未受精卵の利用を前提に容認する報告書をとりまとめていた。

今回の方針変更は、米ハーバード大チームがマウスの異常な受精卵を使って、クローン胚作製に成功したのをうけたもの。将来的にはヒトでも可能とみられ、利用できる卵の対象を広げることでクローン胚作製の機会を増やす狙いがある。

作業部会では当初、あくまでも受精卵を「生命の萌芽」として改めて慎重な扱いを求める意見と、ヒトES細胞をめぐる指針づくりで議論は終わっているとする意見が出た。最終的には、受精卵の異常を理由に廃棄・利用に同意された胚について、クローン胚作製に使うことを認める方向で進めることにした。

一方、この日の部会では、分化が進んでクローン胚作製に使えないと通常みられる正常な受精卵でも、クローン胚づくりが可能なことを示唆する同じハーバード大チームの研究が紹介された。

これについては「廃棄する必然性のない正常な受精卵を使ったクローン技術にもつながる可能性がある」として、あらためて慎重な審議が必要とする意見が複数の委員から出された。

「異常のため生殖医療に使われず廃棄される受精卵」といいますが,異常か否かは誰が判断するのでしょうか?また何をもって「異常」とするのでしょうか。全く生まれる可能性がないことを持って異常とするのか,それとも生まれてきた時に障碍を持つ可能性があることをもって「異常」とするのか。後者だとすれば,同様の疾病を持つ人に対する差別思想であると言わざるを得ないでしょう。

また,「異常」であればヒトクローン胚作製に使ってもよく,「正常」であればダメというように差別する根拠は何なのでしょうか。

作業部会の上記考え方は,「異常」なものというレッテル張りをして,研究に使ってもいいものだというイメージを作ろうという考え方が透けて見えるので極めて不愉快な提案だと思いますが,そもそも異常だとしても使ってもいいのかというところから慎重に考えていかなければならないように思います。