二弁フロンティアの特集記事に「法曹志願者激減」2012年12月06日

第二東京弁護士会(二弁)の広報誌「二弁フロンティア」2012年1月号の特集記事「データで見る『法曹志願者の激減』~打つ手はあるのか?」(以下「本記事」といいます。)が法曹界の一部で話題になっています。

本記事では,法曹志願者の激減っぷりやその主な原因について,各種データなどを引用しながら,法科大学院ルートでの法曹資格取得が,旧試験経由時代に比べ,費用の大幅像と効用の減少という両面で費用対効果が大幅に劣ることから法曹志願者が激減したと結論付けています。

その指摘は,もっともなものですし,慎重ながら分かりやすい論理が展開されています。

また,本記事が

問題の本質は、「法科大学院や今の法曹界がどう考えるか」ではなく、「法曹界入りを検討している学生や社会人がどう考えるか」という点にある。

というのは,正にそのとおりだと思いました。

二弁といえば,司法制度改革審議会意見書よりも前に弁護士会としては最も早くロースクール構想を打ち出すなど,法科大学院制度推進の最先鋒で,今でも法科大学院推進派が多数存在する弁護士会です。

その二弁の広報誌に「法曹志願者の激減」という,新法曹養成制度の破たんを示す文言がタイトルとして踊る記事が載ったことの意味は大きいと言えます。

もっとも二弁内では,司法改革の魁と自称して先走る人たちがいる一方,そのような政策に対する批判も一般会員の中には根強く,大宮法科大学院との提携や同大学院の経営母体の不祥事等の際には,常議員会などで議論がたたかわされました。

本記事の底流には,法曹養成制度が破たんしたとしか言えない現状に加え,こうした流れもあったのだと思います。

本記事が,二弁広報誌に掲載された記事という限界から,対応策として本来あるべき,「法科大学院と司法試験受験資格の切り離し」(+合格者数削減,給費制回復)という道は示されていません。この記事を見ても法科大学院推進論者はなお,給付制奨学金制度の充実と司法修習給費制の回復で人を呼び戻せるなどというでしょう。

しかし法科大学院を司法試験受験資格と切り離せば,法曹養成機関であることを理由とした補助金等の支出がなくなるのに,そのような道をとらずに更に経費のかかる道を選ぶというのはありえないでしょう。それに時間的負担の問題は相変わらず残ります。やはり旧来の司法試験に戻す(合格者数,司法修習も)というのがむしろ現実的な解決策のように思いますね。

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