高額費用を敬遠?「弁護士なし訴訟」増加2011年01月12日

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110112-OYT1T00938.htm

司法制度改革によって弁護士の数が10年前の約1・8倍に増加したにもかかわらず、原告または被告に弁護士が付かない「本人訴訟」が地裁の民事裁判に占める割合が14ポイントも増え、73%に上っていることが最高裁の集計で明らかになった。

記事内でも指摘されているように,本人訴訟の比率の増加は,過払金返還訴訟が急増したことによることが大きいのですが,同訴訟などを除いた場合でも,本人訴訟の割合は10年前と同じ約6割で推移しているということですから,弁護士数の増加に比べ弁護士がつく事件の割合は増加していないと言えるでしょう。

(しかし過払い事件って,結構法的論点はあるんですけどね・・。定型的だから本人でもできるというものではなく,何か裏の事情が介在しているような気もします。)

このように本人訴訟が進まない理由として,ウエブに載せられた部分では,弁護士費用(特に着手金)が高くて依頼をためらわせる,インターネットを通じて自ら情報収集ができるといった理由が挙げられていますが,ウエブには(現時点では)載せられていない(12日夕刊に掲載)部分に書かれているように,

「弁護士が増え,生き残り競争が激しくなった。弁護士に公益的な役割があるからといって,採算の合わない仕事を引き受ける余裕はない」

といった事情も大きいように思います。

弁護士を激増しさえすれば競争の激化によって需要を掘り起こせるという論理が実態に即していないことが明らかになったのではないでしょうか。

ところで,紙面によれば,弁護士がついた相手に「素人」が勝訴した割合は過去10年間3~4割台で推移しているということのようです。

この数値,一概に低いとは言えないように思うのですが,どうでしょうか?

なお,紙面には,元日弁連司法改革調査室長の四宮啓國學院大學教授の話が載っており,これに対してもつっこみたいのですが,ここまでにします。

(以下1/13追記)

紙面には,元日弁連司法改革調査室長の四宮啓國學院大學教授の話が載っています。四宮氏の話では

都市部に比べ弁護士数が少ない地方では,弁護士が支援すべきケースがまだまだあるはずだ。弁護士は,社会や市民に奉仕することが大きな使命。本人訴訟がなぜ増えているのか,弁護士会としても調査すべきだ。

とのことです。

「地方」ではまだ弁護士が足りていないという口ぶりですが,どうなんでしょうね?

また,弁護士の使命って「奉仕」活動なんですかね(サービス業であることを指して「奉仕」といったのであれば,「使命」とまで大上段に振りかざして言うことでもないでしょう。)。また,「社会」や「市民」への奉仕って,実際のところ結局,声の大きい人たちの言うことに従えということになるのではないでしょうか。

就職難など,弁護士激増の弊害が既に生じている一方,激増の利点と言われてきた効果が発生しなかったことも明らかになっているのですから,もう激増は止め,とするのが賢明だと思うのですが,司法改革推進論者はまだ「司法改革」は正しかったと強弁するのでしょうか。

コメント

_ 白浜 ― 2011年01月15日 19時21分40秒

これは要するに、過払専門の司法書士が地裁で事実上代理をするということが裁判所の黙認で増えているということです。

_ ノムラ ― 2011年01月16日 00時20分39秒

>白浜さん
過払いの「本人訴訟」の割合が高いのは,確かに傍聴席からの指導が多くなされているからかもしれませんね。

_ (未記入) ― 2012年09月14日 00時26分48秒

「これは要するに、過払専門の司法書士が地裁で事実上代理をするということが裁判所の黙認」これこそ問題視されるべきなのでは?と思いますが。。
これでいいなら弁護士を増やす必要はないですね。というか記事のご指摘の通り需要はないんですよね、やっぱり。。弁護士なんていたっていいけどいなくたって困らないですし。やたら変な金目当ての弁護士がたくさんいると変ないざこざが増えるだけでは。
裁判官も増えてどんどん訴訟を推進してガンガン高額賠償を認めるならば新たな産業としては成り立っていくかもしれませんが、裁判官はちっとも増えてないですよね。しかも日本の裁判所で認められる賠償額はすくなすぎですし。

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