日弁連会長選挙公聴会に行ってきた2012年02月14日

※選挙後になってしまいましたが,折角書いておいたものなので挙げておきます。

日弁連会長選挙の,高松と那覇で行われた公聴会に行ってきました。

高松へは前日の夜の「サンライズ瀬戸」で現地入り。

寝台列車に乗るのは1999年以来ですから,13年振りですね。

日本の寝台列車ということになると,1991年秋以来なので,21年振りとなります。ちなみに当時乗ったのは東京から米子までの出雲号でした。

高松の公聴会は,宇都宮候補は公務で欠席。推薦演説が20分ありました。

この推薦演説,前半は宇都宮候補の実績を語るものでしたが,後半は法科大学院が廃止されるべきものであることなどを強調し,政策的にはまるで森川候補の支持演説かのよう。ちなみに宇都宮候補は他所の公聴会では,法科大学院については法学部と並立させたことがまずかったと言っているようです。

裁判員制度についての質問に対して尾崎候補,被告人が有罪であるか,有罪での場合どのような量刑が適当かを考えるのは,社会を構成する人の一つの権利であり義務である,日本社会を構成していく上では必要だからということで、協力してほしい,と述べました。この論理からいけば,国を守るためには必要だからと言うことで,兵役にも協力してほしいということにもなるのでは?

山岸候補は業務拡大を言いながら,具体策も「アウトリーチ」とか遵法支援員とか,採算性,実現性に疑問のあることばかり。そういえば,ひまわり基金の弁護士だったか即独した人だったかの話として,赴任地の税理士事務所に飛び込みで営業していたというのを賞賛するかのような言い方をしていました(これは沖縄だったかな?)。

質疑応答の時間で,60期代の弁護士4名の連名で,法科大学院は廃止すべき,教員は司法試験合格者に限るべき,といった意見についてどう思うかという質問がありました。廃止の理由も,経済的に余裕のある人しか法曹になれない,法曹を目指して特に学者教員は文部科学省の方ばかり向いているヒラメ教員であるといったもので,この問題意識には,法科大学院廃止を唱える森川候補以外は答えられない感がありありとうかがえました。

沖縄での公聴会も宇都宮候補は欠席。推薦人は50期代。言っていることからみるとどう見ても森川候補支持では?(何でもたたかってばかりではいけない,と言って森川候補不支持の理由としていましたが)と思えるものでした。

震災・原発事故を契機とする緊急事態条項制定の動きについて尾崎候補,そのような動きはないと認識という発言。人権問題の解決をうたう割には人権感覚がどうなのか。

最終演説では山岸候補が,宇都宮候補批判とおぼしき議論を思いっきり展開してました。法務省,最高裁などとの関係が,緊張関係ということではなくなってしまっている,ということが,外の世界から問題になっている。最低限の対話は成り立つようにしなければならない。官の関係に立ち入って実現させていく。それが,信頼関係が壊れ,不信関係になった時には難しい,と。

しかしまあ宇都宮会長の路線を対決路線と評すること自体センスを疑いますし(お願い路線というべきように思います。),協調を強調すること自体問題と言わざるをえません。政府はこの期に及んでも司法改革推進路線を変えていないのですから,協調を唱えていては変更は望めないでしょう(これは司法改革の維持推進を唱えている宇都宮,尾崎候補共に言えることですが)。

日弁連会長選挙は再投票に2012年02月14日

日弁連会長選挙,4人が立候補していましたが,宇都宮氏と山岸氏の間で再投票を行うことになりましたね。

今回は4年振りに候補者の名前を書いて投票しましたが,再投票は2年前と同様になりそうです。

しかし今回の選挙,東弁も二弁も保守から共産系まで派閥による支持が出そろいましたね~。

前回の選挙で宇都宮氏支持を明示して強力にプッシュしていた弁護士が,今回は沈黙をしているのもこのような状況を受けてのことなんでしょうね。

山岸氏と尾崎氏を比べて前者が保守,後者が左翼という評もありましたが,上記のような派閥支持状況からみて,それは当たっていないというか,保守派取り込みのための山岸氏支持者の「ステマ」であるような気がします。

再投票について,森川氏の票は宇都宮氏に行くという読みがあるようなんですが,どうなんでしょうかね。森川氏と宇都宮氏の路線の違いは明白ですし,その点は宇都宮氏を前回強力に支持した弁護士も明言していますから,森川氏への投票者が易々と宇都宮氏に流れるとは思えません。まあ山岸氏にもいかないでしょうが。

尾崎氏と山岸氏との関係もどうなんでしょうかね。「野合」するという噂も耳にしましたが,ホントにすんなりと成立するんでしょうか。

とにかく今回の再投票,私にとっては選択肢のないものなので,できれば再選挙になってまた選択肢ができないものかと思います。

世間受けを意識する最高裁~光市事件最高裁判決2012年02月20日

光市事件の被告人に対する死刑判決が最高裁で確定しましたね。

判決文(PDF)

最高裁判決は,事案の概要について述べたあと,死刑にすべき理由として,以下のように述べています。

(1),(2)の各犯行は,被害者を殺害して姦淫し,その犯行の発覚を免れるために被害児をも殺害したのであって,各犯行の罪質は甚だ悪質であり,動機及び経緯に酌量すべき点は全く認められない。強姦及び殺人の強固な犯意の下で,何ら落ち度のない被害者らの尊厳を踏みにじり,生命を奪い去った犯行は,冷酷,残虐にして非人間的な所業であるといわざるを得ず,その結果も極めて重大である。被告人は,被害者らを殺害した後,被害者らの死体を押し入れに隠すなどして犯行の発覚を遅らせようとしたばかりか,被害者の財布を盗み取って(3)の犯行に及ぶなど,殺人及び姦淫後の情状も芳しくない。遺族の被害感情はしゅん烈を極めている。被告人は,原審公判においては,本件各犯行の故意や殺害態様等について不合理な弁解を述べており,真摯な反省の情をうかがうことはできない。平穏で幸せな生活を送っていた家庭の母子が,白昼,自宅で惨殺された事件として社会に大きな衝撃を与えた点も軽視できない。

全般的に言いたい点はありますが,本稿を記すきっかけとなったのは最後の点です。

社会に大きな衝撃を与えた点も軽視できない。

社会的に耳目を集めた事件かどうかが重視されると言っているのです。

はっきりいって,被害者が平穏で幸せな生活を送っていた人間でなければどうなっていたのか,とか,白昼・自宅でというのが被告人に対する量刑を検討するに当たって考慮すべき事情なのかといったところも突っ込みたいところですが,事件の社会的影響力が被告人の情状を決めるに当たって考慮されるというのは,社会(端的に言えばメディアそれもマスコミ)が事件をどう扱ったかに最高裁も従うということを言ったということではないでしょうか。マスメディアによる集団リンチに最高裁も加担しますよといっているのです。とんでもないことではないでしょうか。

この判決,裁判員による裁判で下された判決を取り消した高裁判決について破棄自判した合議体と同じ合議体によるものです。

本判決と,裁判員裁判に関する判決の関係についても,単に合議体が同じであるという以上のつながりがあるように思います。これは別の機会に考えてみたいと思います。