世間受けを意識する最高裁~光市事件最高裁判決2012年02月20日

光市事件の被告人に対する死刑判決が最高裁で確定しましたね。

判決文(PDF)

最高裁判決は,事案の概要について述べたあと,死刑にすべき理由として,以下のように述べています。

(1),(2)の各犯行は,被害者を殺害して姦淫し,その犯行の発覚を免れるために被害児をも殺害したのであって,各犯行の罪質は甚だ悪質であり,動機及び経緯に酌量すべき点は全く認められない。強姦及び殺人の強固な犯意の下で,何ら落ち度のない被害者らの尊厳を踏みにじり,生命を奪い去った犯行は,冷酷,残虐にして非人間的な所業であるといわざるを得ず,その結果も極めて重大である。被告人は,被害者らを殺害した後,被害者らの死体を押し入れに隠すなどして犯行の発覚を遅らせようとしたばかりか,被害者の財布を盗み取って(3)の犯行に及ぶなど,殺人及び姦淫後の情状も芳しくない。遺族の被害感情はしゅん烈を極めている。被告人は,原審公判においては,本件各犯行の故意や殺害態様等について不合理な弁解を述べており,真摯な反省の情をうかがうことはできない。平穏で幸せな生活を送っていた家庭の母子が,白昼,自宅で惨殺された事件として社会に大きな衝撃を与えた点も軽視できない。

全般的に言いたい点はありますが,本稿を記すきっかけとなったのは最後の点です。

社会に大きな衝撃を与えた点も軽視できない。

社会的に耳目を集めた事件かどうかが重視されると言っているのです。

はっきりいって,被害者が平穏で幸せな生活を送っていた人間でなければどうなっていたのか,とか,白昼・自宅でというのが被告人に対する量刑を検討するに当たって考慮すべき事情なのかといったところも突っ込みたいところですが,事件の社会的影響力が被告人の情状を決めるに当たって考慮されるというのは,社会(端的に言えばメディアそれもマスコミ)が事件をどう扱ったかに最高裁も従うということを言ったということではないでしょうか。マスメディアによる集団リンチに最高裁も加担しますよといっているのです。とんでもないことではないでしょうか。

この判決,裁判員による裁判で下された判決を取り消した高裁判決について破棄自判した合議体と同じ合議体によるものです。

本判決と,裁判員裁判に関する判決の関係についても,単に合議体が同じであるという以上のつながりがあるように思います。これは別の機会に考えてみたいと思います。