敗戦宣言70年安倍首相談話~日露戦争を肯定する憲法解釈2015年09月09日

ご無沙汰しています。

もう1月近く前ですが,8月14日に戦後70年の首相談話が出されました。この談話が直近の内閣支持率や自民党総裁選再選に影響したとの見方があるようです。しかしこの談話,今見直してもトンデモないものです。

首相官邸サイト

朝日新聞

談話を読んでまず目を引いたのが,日露戦争を何の留保もなく肯定していることです。

日露戦争は、植民地支配のもとにあった、多くのアジアやアフリカの人々を勇気づけました。

談話は,パリ不戦条約に言及し,

戦争自体を違法化する、新たな国際社会の潮流が生まれました。

と評価しています。その上で,日本の行為について

日本は、世界の大勢を見失っていきました。

として,暗にまずかったことを認めています。

談話は更に,

いかなる武力の威嚇や行使も、国際紛争を解決する手段としては、もう二度と用いてはならない。

としています。これは,日本国憲法第9条第1項の

武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

から引いてきたものでしょう(「永久に放棄」という文言は改憲を意識したのか,改められていますが)。

以上の事柄が併記されているのは,要は,日露戦争みたいなものは不戦条約にも日本国憲法9条1項にも反しませんよ,と言っている,ということです。

日露戦争は日本から見たら外国の領土で戦った戦争です。清から見たら侵略者による戦争以外のなにものでもありません。この戦争を,不戦条約の観点からも日本国憲法の観点からも「再評価」(今から見たらおかしなものという内容の)をしないということは,現行憲法下でも可能なものと見ているからに他ならないからでしょう。

現在国会で審議されている戦争法案(平和安全保障法制整備法案)によって日露戦争と同じものが可能になるかどうかは不明ですが,例えば朝鮮戦争のような事態,いや,朝鮮・韓国・中国・ロシア(シベリア)国内で「動乱」が起こった場合であっても,存立危機事態として武力の行使を可能とするのではないでしょうか。日露戦争のように外国の領土に自ら武力攻撃をしかけることも是認する解釈からはそのような見方がなされることになるでしょう。戦争法案は廃案しかありません。

ところで日露戦争が不戦条約や日本国憲法と両立するというのですから,安倍首相談話では日露戦争も自衛戦争だったということになります。しかも日本の権益,存立が侵されるおそれから起こしたものですから,「集団的」自衛権ではなく「個別的」自衛権の発動というにふさわしいものと言うことになります。集団的か個別的かを問わず,自衛権を認めることの問題性が現れたものだと思います。

司法試験合格発表と試験問題漏洩等事件~新法曹養成制度が問題の根源2015年09月09日

昨日司法試験の合格者発表があり,1850名が合格したとのこと。

この期に及んで合格者数増ですか・・・。合格された方,まずは一区切り,おめでとうございます。

今年は発表直前に,司法試験考査委員の受験者に対する試験問題の漏洩が発覚。報道によれば解答方法まで指導していたとか・・。

この教授,名前は聞いたことあるんですが,業績ある分野が何なのか,不明にも存じ上げませんでした。これは報道情報ですが,相手の女性に対する好意があったことから行ったとのこと。事実とすれば,物で女性を釣ろうという考えにも見え,女性蔑視の裏返しのように思えます。憲法を教える教授としていかがなものかと思います。

このようなことが起こる一因は新法曹養成制度,特に,法科大学院修了を受験資格とし,受験期間制限を設けていることにあるのは間違いありません。授業料として多額の資本を投下し,貴重な時間を費やしており(新卒資格喪失という不利益もある。),チャレンジの機会も限られている以上,司法試験の合否は受験生にとって昔とは比較にならないほど深刻な問題ですし,他方司法試験考査委員兼法科大学院教授の威光(前者の威光に浴する機会は制度上ありませんが)は昔に比べ増大しており,教授の「親切」を学生(受験生)が断れなくなっているからです。件の教授は(これも報道からですが)他の女子学生にも食事に誘うなどしていたとのことであり,事実だとすればLS版アカデミックハラスメント(セクシュアルハラスメント?)魔ではないかということになります。制度がどうあれアカハラ/セクハラは許されるものではありませんが,法科大学院に行かずに済むのであれば法科大学院でイヤな思いをすることもなかったわけです。やはり司法試験を法科大学院から解放し,受験回数制限もなくすべきです。