裁判員制度,市民の理解と支持は無理なのでは?2008年02月19日

ボツネタ経由で知りました。

国民に不安や戸惑いを覚えさせながら,「身近で分かりやすく、迅速な裁判の実現や国民の視点を反映」させるため(被告人の人権のためではない)の制度を推進する必要があるんでしょうか?>日弁連

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080218-00000011-kyt-l26

市民の不安、戸惑い尽きず 乙訓地域、来年から裁判員制度導入

国民が重大な刑事裁判に参加して被告人の有罪、無罪などを判断する「裁判員制度」の導入が、1年余りに迫った。導入に向け、各地で制度への理解を求める啓発活動が活発に行われる。京都府乙訓地域でも府立婦人教育会館が先日、制度を考え合う講座を開いたが、受講生らは人を裁くことへの不安や戸惑いの声を上げた。制度と、その声の一部を紹介する。

制度導入の目的は身近で分かりやすく、迅速な裁判の実現や国民の視点を反映させることで、司法に対する国民の信頼を向上するのが狙い。2004年5月に「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」が成立して、来年5月ごろまでの実施が決まっている。

婦人教育会館で1月18日に開かれた講座「裁判員制度を考える」では、京都地方裁判所刑事首席書記官の木崎正さんが講師を務め、パンフレットや広報用映画などを使いながら制度を分かりやすく説明した。「制度導入まで1年半を切り、制度がソフトランディングして定着するよう願っている」と強調した。

ソフトランディング=軟着陸って,「宇宙空間を飛行する物体を、地球その他の天体に、速度を緩めて衝撃を和らげながら着陸させること。」(広辞苑)っていう意味ですから,衝撃があることは否めないわけです。どんな衝撃が待ち受けているんでしょうか・・。

この講座の質疑応答では、男性が「映画のように、こんなにスムーズに行えるのか。責任転嫁をするなど複雑になるのでは」と口火を切り、木崎さんは「たしかに、すべてがスムーズにいくとは限らない」と答えた。

正直な答弁ですね。

別の男性は「判決を下すことで裁判員が決定の重みを背負うことになる」と話すとともに、「裁判を分かりやすく、国民の視点や感覚を反映させることはいいこと。ただ、迅速な裁判とか、国民の信頼を向上させるというのは、これまで司法にかかわってきた方が努力すべきで、目的に挙げるのはおかしい。制度は賛成だが、大きな問題が起こらないか恐れている」と指摘した。

これに対し、木崎さんは「いろいろなことが起こると思われるが、試行錯誤しながら制度が定着していくよう裁判所としても努力していきたい」と答えた。

試行錯誤の中で被告人の人権が侵されたらどうするんでしょうか。

さらに、ある女性は「人を裁くという行為そのものが、わたしには大きな負担になる。量刑についても、1年の重みが分からない。映画のように、しっかりした方が意見を言われると賛同して引っ張られかねない。判断がぶれる中で、2日や3日で人の人生を簡単に決めかねない危険性の歯止めはしてもらえるのか」と不安を訴えた。

率直な不安ですね。

木崎さんは「気持ちは十分理解できる。ただ、1人で裁判をするわけでなく国民6人と専門家の3人の9人でチームを組んで討議して決めていく。1人で抱え込まないで」と呼び掛けた。

引っ張られかねないという不安への答えにはなっていないでしょう。それに,専門家である職業裁判官がいるから大丈夫っていうように言っているようにも聞こえます。少なくとも日弁連の思惑とはずれた考え方のように思えます。

制度導入が迫る中で、各地で啓発活動が続けられているが、市民の不安や戸惑いは尽きない。理解を深めるには、さらなる努力が求められる。

理解を深めるって,官僚が議員に対し,自分たちの意見に賛成してもらう時にいう台詞に似ています。結局国民に負担を押しつけていることには変わりありません。

ところで,裁判員の参加する刑事裁判に関する法律附則2条には次のように定められています。

(施行前の措置等)

第二条  政府及び最高裁判所は、裁判員の参加する刑事裁判の制度が司法への参加についての国民の自覚とこれに基づく協力の下で初めて我が国の司法制度の基盤としての役割を十全に果たすことができるものであることにかんがみ、この法律の施行までの期間において、国民が裁判員として裁判に参加することの意義、裁判員の選任の手続、事件の審理及び評議における裁判員の職務等を具体的に分かりやすく説明するなど、裁判員の参加する刑事裁判の制度についての国民の理解と関心を深めるとともに、国民の自覚に基づく主体的な刑事裁判への参加が行われるようにするための措置を講じなければならない。

2  前条の政令を定めるに当たっては、前項の規定による措置の成果を踏まえ、裁判員の参加する刑事裁判が円滑かつ適正に実施できるかどうかについての状況に配慮しなければならない。

「前条の政令」とは,裁判員制度の施行日について定める政令のことです。

この期に及んで未だに市民の間に不安や戸惑いが尽きないようであれば,到底,「裁判員の参加する刑事裁判が円滑かつ適正に実施できる」状況にあるとは言えないのではないでしょうか。今からでも遅くはないので,裁判員制度は廃止ないし施行延期にすべきように思います。

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