予算消化のお願いが来た2009年02月05日

所属弁護士会から,「今年度内に『1人1件』の扶助持ち込みをお願いします!」と題する書面が来た。

民事扶助制度の抜本的改革に向け,市民のニーズの大きさを示すために,実績を積み重ねることが必要だが,今年度の民事法律扶助の代理援助件数枠に十分な余裕があるので,今年度内に更に1人1件の扶助持ち込みをお願いしたい,というものだ。

ちょっと待て。これって,予算を消化しきれないと次年度以降の予算増額が望めないから,年度末に予算を使い切ろう!って言っているのとどこが違うのか?

援助件数に十分な余裕があるって,素直に考えれば援助を必要とする人が予想よりも少なかったということであり,喜ぶべきことなのでは?

仮に援助は必要だが援助を受けていない人がいるとすれば,その原因がどこにあるのか,弁護士による持ち込みが少ない原因がどこにあるのかもう少し考えるべきではないか。

民事法律扶助についても,それを受けるためには,弁護士は日本司法支援センター(法テラス)と契約を結ばなければならない。法テラスが法務省管轄下にあることから,それまでは民事法律扶助を使っていた弁護士の中でも,法テラスを使わずに,弁護士と依頼者との間で報酬の支払方法を依頼者に負担にならないよう工夫する人が出てきているのではないだろうか。そうした根本的原因を除去せずにただ利用件数を増やそうと呼びかけても,効果は期待できないだろう。

法務省管轄下にあるということを別にしても,法テラスによって決定される報酬金が,弁護士の働きに対して低額に抑えられており,働きに見合った報酬を得ようとすればいちいち異議申立てなどの手続をとらなければならないと聞く。それであれば,法テラスを経るなどの面倒な手続を取らず,依頼者との間で支払方法などの取り決めを直接してしまおうとする弁護士が出てきてもおかしくないだろう。

上記依頼文書には法テラスとの契約のことについては一言も出てこない。真の問題点を隠したままで利用をよびかけるというのはいかがなものであろうか。