国内業者が卵子バンク 日本人ドナーから韓国で採卵 ― 2007年01月24日
国内業者が卵子バンク 日本人ドナーから韓国で採卵(asahi.com)
不妊に悩む夫婦らに、第三者の日本人女性の卵子を販売する「卵子バンク」を、東京などを拠点に精子バンクを運営する業者が始めた。日本の業者による、日本人女性の卵子バンクは初めて。提供者(ドナー)の卵子を韓国で採り出し、夫の精子と体外受精させて妻の子宮に移す。ドナーには報酬が支払われる。業者によると、20~33歳の8人の女性が登録しているという。これまでに数件の問い合わせはあったが、契約したケースはないとしている。
第三者の卵子を使った体外受精って,ドナーの人から卵を取り出す際にドナーにかかる負担についてきちんと説明したのでしょうか?排卵させる過程での排卵誘発剤の使用による副作用の大きさなどは無視できないものです。また,ドナーが傷を負ったり病気になったりした場合の業者の責任はどのようになっているのでしょうか。
上記記事によれば
ドナーと、生まれた子どもの間には、一切の権利義務関係はないことを、双方の契約書で確認する。
とありますが,生まれてくるこどもに遺伝上の親を知る権利を認めないでよいのか疑問です。
さらに疑問なのは
ドナーは、身長や体重、学歴などを申告し、写真を提出。要望があれば、体のスリーサイズも教える。
という点です。何故に「身長や体重,学歴など」を申告してもらう必要があるのでしょうか。単に子どもがほしいというのでなく,自分の希望通りに育つ可能性が高いようにと作った子ども=「デザイナー・ベイビー」がほしいという男女の欲求が背後にあることは明白です。このような欲求は優れた能力を持つ者のみが生まれてきてしかるべきという優生思想の現れですが,そうでない子どもは生まれてきちゃいけないんでしょうか?
「不妊に悩む夫婦らに」と書かれると,いかにも悩みを解消するよい事業のように見えますが,人間の果てしのない欲望に訴求して人の卵子をネタに金を儲ける事業であることは確かです。上記に挙げたような問題点を考えた場合,早急に禁止も含めた法規制を検討すべきように思います。
追記(1/25)
前記記事では
03年に韓国の業者が卵子バンクの営業所を日本に開いたことがある。しかし、韓国で精子、卵子の売買を禁止する生命倫理法が施行された05年1月の直前に撤退した。
のにもかかわらず,
生命倫理法について、佐々木代表は「契約や金銭のやりとりは日本で行われるので、法律上、問題ない。日本人の卵子がいいという顧客の要望にも応えられる」と主張している。
とのことですが,本当に大丈夫なのでしょうか。
ちなみに日本の刑法では,
第1条 この法律は、日本国内において罪を犯したすべての者に適用する。
とされており,犯罪の実行行為又は結果のいずれかがその一部でも日本国内において生じていれば日本の刑法が適用されるものと解されています。
韓国の刑事法がその適用範囲についてどのように定めているかは私は知りません。しかし仮に同様の定めが置かれているとすれば,契約上を履行するプロセスである「採卵」→体外受精→受精卵の子宮への移植という行為が犯罪の実行行為であるとして,韓国の生命倫理法の適用を受ける可能性は高いでしょう。
その場合,業者は日本にいるので事実上処罰を免れるが,かかわった韓国の医師とドナー,依頼者夫婦は処罰されるといった事態が想定されます。
ドナーにしてみれば,お金に魅力を感じて応募したら,刑事罰を受けた上,報酬も没収されたということになりかねません。
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