新61期司法修習2回試験結果~不合格率は減少2008年12月16日

ボ2ネタ経由。

新制度2期生、落第5%超=前年下回る-最高裁時事ドットコム

最高裁は16日、今年11月の司法研修所の卒業試験で、2回目となる2007年の新司法試験に合格した司法修習生(新61期)のうち、5.6%の101人が不合格になったと発表した。昨年の1期生の不合格率6.0%は下回った。 最高裁によると、11月の卒業試験を受けた新司法試験組の修習生は1811人。合格した1710人は17日に修習を終え、法曹資格を得る。不合格者は修習生を罷免され、法曹になるには来年8月の卒業試験に合格する必要がある。 

導入修習が無かったにもかかわらず不合格率が減少したということで,修習生はよく頑張ったと思います。

ただ,導入修習が無くなったことに対して弁護士会が独自の研修を開いたりして対応していたことがあるので,これで,導入研修は無くてもよいとか,法科大学院での教育が効を奏しているとか言うのは早計でしょう。>最高裁,法科大学院関係者

また,人数が増えたが不合格率が抑えられたということを理由に,合格者数が増えてもOK!という論が出てきそうな気もしますが,それも違うような気がします。激増の問題点は質うんぬんよりもむしろ,就職難や競争激化による無理な事件化のおそれ等にあるような気がするからです。

今年の二回試験,不合格率が抑えられたことは(少なくとも修習生の立場からは)よかったと思うのですが,気になるのは,昨年の新司法試験合格者1851名のうち,1811名しか二回試験を受けていないということです。新司法試験受験生は法科大学院で2~3年にわたる費用と時間を強制的に掛けさせられて受験したのですから,合格したら一刻も早く法曹になりたいと思いそうなものなのですが,40名もの人が二回試験を受験していないということは,法曹が進路として魅力を失ってきているということなのでしょうか?

優良誤認の「優良」って?~日本ヒルトン(株)に対する件から考える2008年12月16日

レストランの出す料理に関する排除命令といえば成形肉ステーキに対する件以来でしょうか・・・。

日本ヒルトン株式会社に対する排除命令について(PDF)

排除命令の前提としている事実の摘示が興味深いものがあります。

2(1) 日本ヒルトンは,平成9年5月ころから平成20年9月ころまでの間,肩書地に所在し同社が運営する「ヒルトン東京」と称するホテル(以下「ヒルトン東京」という。)内で「トゥエンティワン」と称する飲食店(以下「トゥエンティワン」という。)を運営し,同店において一般消費者にフランス料理を提供していた。

(2) 「前沢牛」とも称される「いわて前沢牛」と称する牛(以下「前沢牛」という。)は,岩手県奥州市で肥育された黒毛和種の牛であり,その肉は一般的に高級品として認識されている。

(3) 「オーガニック野菜」と称する野菜(以下「オーガニック野菜」という。)は,一般的に化学的肥料及び農薬を使用しない方法により生産された野菜として認識されており,安全性の高い野菜として一般消費者に好まれる傾向にある。

(4) 北海道産の「ボタンエビ」と称するえび(以下「ボタンエビ」という。)は,外国産のものに比べ,良質なものとして一般消費者に好まれる傾向にある。

「前沢牛」は「一般的に高級品として認識されている」,「オーガニック野菜」は「安全性の高い野菜として一般消費者に好まれる傾向にある」,北海道産の「ボタンエビ」は「良質なものとして一般消費者に好まれる傾向にある」って,実際に高級か,安全性が高いか,良質かということとは関係なく,消費者がそのような認識をもっているから,そのような認識の対象物であるかのような虚偽の表示をすることが優良誤認とされているのです。

つまり,ここでいう優良誤認の優良とは,一般に優れたものとして考えられているものということであり,一般消費者の好みを基準として判断されるもの(検査や実験などによる評価の結果ではない。)ということです。

消費者保護という観点から言えば,上記のような消費者の好みが保護に値するものかどうかということがもう少し厳密に問われてよさそうな気もしますが,その点が問われず,ただ消費者の選好に影響を与えるという点で優良誤認か否かが決まるのは,景品表示法が独占禁止法の特別法であるからではないでしょうか。消費者の選好に影響を与える以上競争に影響を与えているという点で,規制の対象とすべきと考えられているのです。

しかし,こうした表示に対して排除命令が下されるのを見ると,産地表示に対する選好の高さ,地域ブランドを作り上げる意味の大きさを強く感じます。そのような選好をするのが本当に賢い消費者なのかというのは議論されるべきようにも思いますが。