「勝ち組」用であることを誇る法科大学院関係者が自己責任論を唱えているが・・・2008年12月25日

卒業生の合格率が低いことについても学生の自己責任だっていうのでしょうか?

世界的視野で判断すれば、法曹人口の増員と強化が不可欠なことがわかる

法曹人口拡大への批判は大きく分けて三点に集約される。

①増員に伴い法科大学院卒業の新司法試験合格者の水準が低下し、さらに就職難のためOJT(オンザジョブトレーニング)の機会喪失により弁護士の質が低下する。

②弁護士の需要は実際には少ないのに、増員のため競争が激化し、濫訴や食えなくなった弁護士による違法行為など弁護士の倫理が低下し、国民に被害を与える。

③我が国古来の醇風美俗とされる平穏で和を尊しとする社会秩序の崩壊をもたらす。

という指摘である。

しかし、これらの論点に対しては改革論者から以下の通り再反論がなされている。

①に対しては、新司法試験合格者の質が低下したという証拠はない。一部の論者は司法研修所修了試験(二回試験)の不合格者が増加している事実をその根拠としているが、法科大学院卒業者で二回試験を終えたのは、旧司法試験を受験するために予備校で教育を受けてきた、二年制の既修コース卒業生のみ(不合格率七・二パーセント)である。旧試験組の不合格率五・一パーセントと大差ない。制度の本則である三年コース修了者はまだ二回試験を受験しておらず当然、弁護士にもなっていないのであるから、そもそも法曹としての質を云々する段階にいたっていない。不断の業務能力の向上は専門プロフェッションとしての一人一人の弁護士の研鑽と所属弁護士会の指導によるべきものであって、勤務弁護士でなければOJTが受けられないというものではない。司法研修期間が短縮され、自ら研鑽する能力のない者が二回試験に失敗し、法曹資格を取得できないという当然の結果にすぎない。

今月中旬に,未修者を含めた新司法試験合格者の二回試験の結果が発表されたわけですが,その直前に

法科大学院卒業者で二回試験を終えたのは、旧司法試験を受験するために予備校で教育を受けてきた、二年制の既修コース卒業生のみ(不合格率七・二パーセント)である。

って,殊更に時期を前倒しにして書いたとしか思えないのですが・・・。

それよりも見過ごせないのが以下の記述。

不断の業務能力の向上は専門プロフェッションとしての一人一人の弁護士の研鑽と所属弁護士会の指導によるべきものであって、勤務弁護士でなければOJTが受けられないというものではない。司法研修期間が短縮され、自ら研鑽する能力のない者が二回試験に失敗し、法曹資格を取得できないという当然の結果にすぎない。

不合格者が大量に発生していることについて「司法研修期間が短縮され,自ら研鑽する能力のない者が二回試験に失敗」という「当然の結果」って,要するに自己責任論ってことですか?制度の改変については何らおかしいことはないっていいたいわけですか。

久保利弁護士は以下のようにも述べています。

法曹人口激増のためのインフラである法科大学院に対しても、厳しい注文が寄せられている。「特許やコンテンツ、経済活動の基礎である金融・証券の基礎の分かる人材が少ない」「いまは独善的な弁護士が多いので社会人経験も必要である」「市民の目線で依頼者の心理も理解する優しい弁護士が欲しい」などと、「法律学でガチガチになった頭の持ち主」ではなく「かけがえのない人生を生きる国民の社会生活上の医師」という弁護士像が求められている。一例を挙げれば〇八年に大宮法科大学院から合格した一六名中一一名が非法学部出身である。一〇名が社会経験を持ち、現職の医師をはじめ、理系院卒の電機・通信専門家、英米の大学・大学院卒業者など多士済々である。国民はこんな経歴の弁護士を待っている。

何人の大宮法科大学院修了者が受験したのかを記さないのはフェアではないでしょう。法務省のサイトによれば2008年度試験の受験者は81名,合格率は19.75%です。未修者全体の合格率が22.52%ですから,お世辞にも高いとはいえません。久保利弁護士が挙げるような有為な人たちを合格に導けなかったことについて,単に研鑽が足りないということで済ませるつもりなのでしょうか?

それに,

現職の医師をはじめ、理系院卒の電機・通信専門家、英米の大学・大学院卒業者など多士済々である。

って,大宮法科大学院が一定の学歴などを誇る者向けのロースクールだって誇っているように読めますが,こんなことでよいのですか?

コメント

_ まぁ坊 ― 2009年01月05日 17時41分10秒

こんにちは!!はじめまして!!
自分は愛知県に住む平凡なサラリーマンです。
ブログ拝見させていただきました。
結構深い内容ですね。
法科大学院修了者の司法試験合格率が低いことが自己責任になっているなんて・・・。
かなり無責任ですね。
正直5年後、10年後が怖いです。
でもこれは法科大学院に限ったことではないみたいです。
どこの大学院も修了しても就職できないみたいです(医学、薬学、歯学を除く)。
それは大学院重点化政策が始まってから顕著になったそうです。
それは何故かというと、少子化に伴い学生が確保できない大学側と文部科学省の利害が一致したからなんだそうです。
詳しくは「高学歴ワーキングプア」を読んでみてください。
法科大学院についても書かれていますよ。

http://f310ab.jugem.jp/?day=20090104
↑高学歴ワーキングプアを紹介しているブログ↑

ちなみにこのブログは僕が書きました(笑)
もし良かったら読んでみてください。
また寄らせていただきたいと思います。

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。

名前:
メールアドレス:
URL:
次の質問に答えてください:
三権分立といった場合の三権とは,立法,行政と何?(答:司法)

コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://nomura.asablo.jp/blog/2008/12/25/4026617/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。