法科大学院、司法試験合格下位校は統廃合を…中教審提言2009年04月18日

紙面では1面トップニュースになっていましたね。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090417-OYT1T00968.htm

法科大学院のあり方を検討している中央教育審議会(文部科学相の諮問機関)の特別委員会は17日、法科大学院改革を巡る提言の最終報告をまとめた。

司法試験の合格率が低い大学院などに入学定員の自主的な削減や大学院同士の統廃合を検討するよう求めた。法曹の質と量を向上させるため、2004年に一斉開学した法科大学院にとって厳しい内容で、文科省は今後、最終報告書を各大学院に送付し、自主改革を迫る。

某巨大掲示板上のネタでは,国立大学法人に対しては一律2割削減を文科省が要求しているといったことが言われていました。

独立行政法人って,どこが独立なんだか・・・。

最終報告によると、定員削減の対象となるのは、〈1〉入学時の競争倍率が2倍に満たない〈2〉司法試験の合格率が低迷している――などの大学院。特に、小規模校や地方の大学院については、教員の確保が難しく、志願者が集まりにくいことから、統廃合を検討するべきだとした。法科大学院74校のうち、半数近い36校が定員50人以下で、今後、こうした小規模校を中心に再編が進む可能性がある。

日弁連は大都市の大規模校を中心とした定員削減を要求していましたが,それは一蹴されたように見えますね。

一方、最終報告は、三つの評価機関が法科大学院の教育内容をチェックしている第三者評価について、「『不適合』の認定は大学院教育の質に重大な欠陥がある場合に限定する」ことを求めた。今年3月までに22校が不適合の認定を受けたが、1クラスの人数が基準より数人多かっただけで不適合となるケースもあったためだ。また、評価機関によって評価基準にばらつきがあることも指摘し、「協議の場を設けて調整を図る必要がある」とした。

言っている内容は妥当なようにも見えますが,認証評価内容について文科省が口出しするということです。法曹養成制度に対して文科省に口出させることってどうなの?ということはもっと議論されていいのではないかと思うのですが・・・。

それに,「大学院教育の質に重大な欠陥」と言われることの内容が,司法試験受験対策をしっかりやることだったりするのではないかということを考えると,文科省との協議の場を設けたから改善されるとは到底思えません。

◆3校で合格者ゼロ◆

法科大学院は、当初の想定を大幅に上回る74校が乱立したことにより、新司法試験合格率の低下を招いた。昨年は前年比7・2ポイント減の32・98%。大学院別でも20%未満が33校に上り、愛知学院、信州、姫路独協の3校は合格者数がゼロだった。

入学希望者数の低迷も深刻で、昨年度まで2年連続で入学者が入学定員の8割未満にとどまった大学院は10校あった。姫路独協大は40人だった定員を今年度から30人に減らしたが、それでも今春の入学者は定員割れ。竹橋正明・法務研究科長は「さらなる定員減も検討するが、地方の法科大学院には存在意義があるので、ニーズの掘り起こしも図らないといけない」と話す。

ニーズの掘り起こしって,どこぞやの事業者団体の執行部が十年近く前から言い続けていまだ実現されていないことのようにも思えるのですが。

それに,ここで言われているニーズの掘り起こしって,法科大学院に通う時間と金をかけてまでも法曹(有資格者)になりたいという人のことになるのでしょうが,そのようなニーズが今までと比べて増えているのか,減っているのか。法曹のおかれた経済的状況を踏まえて冷静に分析することが必要ではないでしょうか。

一方、合格率の高い大学院でも定員削減の動きが出ており、東京大は来年度から300人を240人に減らし、京都大も200人を160人に削減する。東京大の井上正仁・法学政治学研究科長は「学生の質の向上をはかるため」と説明している。

100名規模(後記の日弁連意見)とは言えないまでも2割減らさせたことをもって日弁連執行部は成功だというのかも知れませんね。でも,この2割減(東大,京大ともに2割減と一致しているのは偶然でしょうか?)が文科省の指導によるものだとすれば,法曹養成過程の中核をなすはずのものである(あくまでも日弁連執行部によれば,ですが)法科大学院に対する官僚の統制であるとして厳しく指弾されるべきものなのではないでしょうか?

日弁連内部,というか第二東京弁護士会の一部の人たちが司法研修所に代わるものとして法科大学院制度の導入を提唱した理由には,司法研修所が最高裁判所当局の支配下にある,というものがありました。最高裁による支配がいけないのなら,同じ官公庁である文部科学省による支配についても指弾していくべきで,間違っても文科省(の息のかかった中央教育審議会)の削減案は評価できるなんていうべきではないでしょう。

しかし日弁連は,教育の質の向上名目とはいえ,「教育体制充実の見地から法科大学院の入学定員の見直し(適正化)に言及していることは,評価に値する。」(中央教育審議会大学分科会法科大学院特別委員会「法科大学院教育の質の向上のための改善方策について(中間まとめ)」に対する意見)などと述べて定員削減の形での文科省の介入を容認しています(ほかには到達目標の策定など)。これでは法科大学院構想は法曹養成過程という新たな利権作りではないかと見られてもやむを得ないのではないでしょうか。

定員削減策について更に思うのは,法科大学院についていわば定員削減という形での供給調整が認められるのであれば,弁護士についても司法試験合格者数削減という形での供給調整が認められない理由はないのではないか,ということです。大学当局者や文科省におかれては,法科大学院の定員削減を唱えるのならば,司法試験合格者数削減についても併せて唱えていただきたいものです。

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