恐怖を回避するのなら2009年04月02日

恐怖を回避することより,煽り立てることの方が優先されているのではないでしょうか。

http://mainichi.jp/select/today/news/20090402k0000e030029000c.html?inb=ff

衛星写真などからミサイルの先端が球状で人工衛星搭載用ロケットの形状に近く、米政府は北朝鮮が主張する人工衛星を搭載している可能性があるとみている。一方で米政府は、北朝鮮のミサイル開発が核弾頭搭載を目的とした核計画の一環として、国連安保理決議に違反するとの立場をとっている。発射した場合、日本、韓国と協力して国連安保理で協議する方針だ。

形状が人工衛星搭載用ロケットに近く,人工衛星搭載の可能性があるということは,米政府も認めているわけです。むやみにミサイルだと騒ぎ立てることについては,何か別の意図があるのではないかと勘ぐられてもやむを得ないでしょう。

日本として何が怖いかといえば,日本船舶の航行する海域や日本の領土に落ちてくることでしょう。それならばいっそ,人工衛星だという朝鮮の主張を逆手にとって,種子島の宇宙基地を貸与してそこから打ち上げさせるくらいのことをすればいいのではないでしょうか。

「裁判員いらなインコ」 制度反対の市民団体ビラ配り2009年04月06日

朝日新聞にとっても無視できない存在になってきたということなのでしょうか。

http://www.asahi.com/national/update/0405/TKY200904050189.html

5月の裁判員制度スタートを前に、反対派の市民団体がつくった「裁判員いらなインコ」が登場。5日、山手線の主要駅を回り、ビラを配った。

鳩山元法相が着ぐるみに入ってPRした法務省の「サイバンインコ」に対抗したが、予算がないため、既製品に「ストップ裁判員制度」のゼッケンを着せた。

asahi.comのRSS配信で知ったのですが,ビラ配りが全国紙のネットニュースとしてRSS配信されること自体画期的ですね。

ただ,

官民とも「ゆるキャラ頼み」に、渋谷駅前でビラを受け取った女子大生は「制度の中身を知る前に、着ぐるみの可愛さで賛成・反対を決めろと言われてるみたい」。

という点は,裁判員制度への賛否の問題をキャラの優劣の問題に矮小化しようとする意図が見えるようで,朝日新聞社は相変わらす「改革」マンセーな体質が改まっていないのだな,という気がします。

参考:裁判員はいらない!大運動

法科大学院入学後の能力向上は無視してもよいと?2009年04月11日

中教審って,まあ次から次へとむちゃくちゃなこといいますな・・・。

法科大学院「倍率2倍割ったら定員減を」 中教審提言へasahi.com

法科大学院のあり方を議論する中央教育審議会(文部科学相の諮問機関)の特別委員会が近くまとめる最終報告に、競争倍率が2倍を割っている大学院について、定員削減を求める趣旨の文言が盛り込まれる見通しとなった。

10日、特別委の会合が文部科学省内で開かれ、入学者の質を確保するための定員削減を議論するなかで方向がほぼ固まった。競争倍率が低く、入学時の試験の成績が悪くても学生を入学させている大学院があることをふまえた。

文科省によると、08年度入学生の試験では、倍率が2倍未満の大学院は全体の約3分の1という。

倍率が低いことと受験生の質が低いことがパラレルであるということなのでしょうか?そうなると,司法試験合格者の「質」を高くするためには,合格者に対する受験者数(法科大学院修了者+予備試験合格者)の割合を高めるべきということになるはずですが,中教審はそのようなことは主張しないんでしょうか(審議会の審議事項の範囲外と言って逃げるのでしょうが・・・)。

そもそも,大学の善し悪しって,どういう受験生を集めるかではなく,どういう卒業生を送り出すかで決まってくるのではないのでしょうか。中教審の意見は,今回の定員削減論にせよ,適性試験による足きり論にせよ,入学者の「質」の確保に重点が置かれていますが,このような考え方って,入学者の「質」=卒業者の「質」と見るもので,大学内でいくらよい教育が行われ,また入学者が努力してもそれは取るに足らないものなんだ,結局,法科大学院って単なる箱物でしかないんだ,とさえ言っているようにも見えます。

また,大学の志望動機って,就職に役立つかどうかというのもありましたが,特に私立大学の場合,校風や建学の精神などにも惹かれて入ってくる受験生もいるものです。仮に法曹の多様性確保ということを言うのであれば,少数だが特徴的なマニアックな受験生狙いの大学があってもいいはずで,一律に受験倍率で定員の多寡を判断するというのはいかがなものかという気もします。

どのような学生を募集し受け入れるかという大学教育の根幹に関わることについて「足きり」や「倍率」といった形で関与してくることは,大学の自治に対する介入と見てもよいのではないでしょうか。このような介入は本来,自由な教育・学問の場であるはずの大学を,法曹という専門職養成という公的意義付けをしてしまったために,招いてしまったものです。さっさと受験資格付与機関という軛を外すことが,法曹志望者のみならず,大学にとってもいいことなのではないでしょうか。

法科大学院、司法試験合格下位校は統廃合を…中教審提言2009年04月18日

紙面では1面トップニュースになっていましたね。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090417-OYT1T00968.htm

法科大学院のあり方を検討している中央教育審議会(文部科学相の諮問機関)の特別委員会は17日、法科大学院改革を巡る提言の最終報告をまとめた。

司法試験の合格率が低い大学院などに入学定員の自主的な削減や大学院同士の統廃合を検討するよう求めた。法曹の質と量を向上させるため、2004年に一斉開学した法科大学院にとって厳しい内容で、文科省は今後、最終報告書を各大学院に送付し、自主改革を迫る。

某巨大掲示板上のネタでは,国立大学法人に対しては一律2割削減を文科省が要求しているといったことが言われていました。

独立行政法人って,どこが独立なんだか・・・。

最終報告によると、定員削減の対象となるのは、〈1〉入学時の競争倍率が2倍に満たない〈2〉司法試験の合格率が低迷している――などの大学院。特に、小規模校や地方の大学院については、教員の確保が難しく、志願者が集まりにくいことから、統廃合を検討するべきだとした。法科大学院74校のうち、半数近い36校が定員50人以下で、今後、こうした小規模校を中心に再編が進む可能性がある。

日弁連は大都市の大規模校を中心とした定員削減を要求していましたが,それは一蹴されたように見えますね。

一方、最終報告は、三つの評価機関が法科大学院の教育内容をチェックしている第三者評価について、「『不適合』の認定は大学院教育の質に重大な欠陥がある場合に限定する」ことを求めた。今年3月までに22校が不適合の認定を受けたが、1クラスの人数が基準より数人多かっただけで不適合となるケースもあったためだ。また、評価機関によって評価基準にばらつきがあることも指摘し、「協議の場を設けて調整を図る必要がある」とした。

言っている内容は妥当なようにも見えますが,認証評価内容について文科省が口出しするということです。法曹養成制度に対して文科省に口出させることってどうなの?ということはもっと議論されていいのではないかと思うのですが・・・。

それに,「大学院教育の質に重大な欠陥」と言われることの内容が,司法試験受験対策をしっかりやることだったりするのではないかということを考えると,文科省との協議の場を設けたから改善されるとは到底思えません。

◆3校で合格者ゼロ◆

法科大学院は、当初の想定を大幅に上回る74校が乱立したことにより、新司法試験合格率の低下を招いた。昨年は前年比7・2ポイント減の32・98%。大学院別でも20%未満が33校に上り、愛知学院、信州、姫路独協の3校は合格者数がゼロだった。

入学希望者数の低迷も深刻で、昨年度まで2年連続で入学者が入学定員の8割未満にとどまった大学院は10校あった。姫路独協大は40人だった定員を今年度から30人に減らしたが、それでも今春の入学者は定員割れ。竹橋正明・法務研究科長は「さらなる定員減も検討するが、地方の法科大学院には存在意義があるので、ニーズの掘り起こしも図らないといけない」と話す。

ニーズの掘り起こしって,どこぞやの事業者団体の執行部が十年近く前から言い続けていまだ実現されていないことのようにも思えるのですが。

それに,ここで言われているニーズの掘り起こしって,法科大学院に通う時間と金をかけてまでも法曹(有資格者)になりたいという人のことになるのでしょうが,そのようなニーズが今までと比べて増えているのか,減っているのか。法曹のおかれた経済的状況を踏まえて冷静に分析することが必要ではないでしょうか。

一方、合格率の高い大学院でも定員削減の動きが出ており、東京大は来年度から300人を240人に減らし、京都大も200人を160人に削減する。東京大の井上正仁・法学政治学研究科長は「学生の質の向上をはかるため」と説明している。

100名規模(後記の日弁連意見)とは言えないまでも2割減らさせたことをもって日弁連執行部は成功だというのかも知れませんね。でも,この2割減(東大,京大ともに2割減と一致しているのは偶然でしょうか?)が文科省の指導によるものだとすれば,法曹養成過程の中核をなすはずのものである(あくまでも日弁連執行部によれば,ですが)法科大学院に対する官僚の統制であるとして厳しく指弾されるべきものなのではないでしょうか?

日弁連内部,というか第二東京弁護士会の一部の人たちが司法研修所に代わるものとして法科大学院制度の導入を提唱した理由には,司法研修所が最高裁判所当局の支配下にある,というものがありました。最高裁による支配がいけないのなら,同じ官公庁である文部科学省による支配についても指弾していくべきで,間違っても文科省(の息のかかった中央教育審議会)の削減案は評価できるなんていうべきではないでしょう。

しかし日弁連は,教育の質の向上名目とはいえ,「教育体制充実の見地から法科大学院の入学定員の見直し(適正化)に言及していることは,評価に値する。」(中央教育審議会大学分科会法科大学院特別委員会「法科大学院教育の質の向上のための改善方策について(中間まとめ)」に対する意見)などと述べて定員削減の形での文科省の介入を容認しています(ほかには到達目標の策定など)。これでは法科大学院構想は法曹養成過程という新たな利権作りではないかと見られてもやむを得ないのではないでしょうか。

定員削減策について更に思うのは,法科大学院についていわば定員削減という形での供給調整が認められるのであれば,弁護士についても司法試験合格者数削減という形での供給調整が認められない理由はないのではないか,ということです。大学当局者や文科省におかれては,法科大学院の定員削減を唱えるのならば,司法試験合格者数削減についても併せて唱えていただきたいものです。

女性検事どんどん増える 実力勝負、特捜でも存在感2009年04月19日

隔世の感がありますね・・・。

http://www.asahi.com/national/update/0417/TKY200904170009.html

ボ2ネタ経由で知りました。)

法務省によると、検事に占める女性の割合は、95年は5.7%で、法曹三者で最低だった。だが08年には17.2%に急上昇。裁判官の15.4%、弁護士の14.4%を上回った。

司法試験合格者に占める女性の割合は、ここ10年ほどは25%前後だが、検事任官者では00年に18%だった女性の割合が、08年に34%となった。女性検事正も現在、富山と松江の2地検にいる。

私が司法修習を修了したのがまさに2000年10月でしたが,その時には女性の検察官採用については司法研修所の各クラス1名に限る(例外的に2名)という「女性枠」が存在していました。修習生有志で「検察官任官における『女性枠』を考える53期修習生の会」が作られ,研修所当局への申入れや,国会議員,弁護士会などへの働きかけをしていました。

この問題については日弁連も前向きに対応してくれ,当時の法務大臣に対する要望書を出してくれたりしました。メディアでも取り上げられたこともあり,翌54期には14クラスから20名の女性検察官が採用されるなど変化の兆しは現れていましたが,ここまでに至るとは隔世の感があります。国レベルでは男女共同参画が方針として決められていることも影響しているのかもしれません。いずれにせよ運動はやってみるものですね・・・。

臓器移植法「改正」論議について思う2009年04月22日

WHOで海外での臓器移植が規制されそうだということをきっかけに,臓器移植法「改正」に向けた動きが急になっている。

海外でできなくなるから日本でできるようにしよう,ということらしい。「改正」案については特に,日本では子どもからの移植が禁止されていることとの関係で,子どもを救えないという親の声がよく報道されている。

この点に関してメディアは,

また、首相は与党が今国会で採決する方針を固めた、子供への臓器提供機会の拡大を目指す臓器移植法改正案について、重要法案と位置づけ、成立を図るよう指示。会談では、海賊対処法案や年金関連3法案なども早期に成立させる方針で一致した。

麻生首相:補正予算案などの早期成立を指示毎日.jp

等と報道している。しかし,今回の臓器移植法「改正」案(A案)が法文上目指しているのは,子ども「から」の臓器提供機会の拡大である。臓器を「提供する」人(「改正」案A案によれば人ではなくなっているものだが)の数を増やそうという目的から,法的にドナーとすることのできる人の範囲を子どもにも広げるのであって,法律上広げられるのはあくまでも子ども「から」の臓器提供機会の拡大なのである。

臓器を提供させられることとなる子どもからの視点が欠けているといわざるをえない。

ところで,「脳死」という概念自体,あたかも「脳死」状態に陥った人が全体死に至ることが間近かつ必至であるかのような概念で,ミスリーディングなものである。

国会の委員会の参考人質疑においても,「脳死」といわれた後長期間生存した事例や,自発呼吸が再開した事例が報告されているのだから,メディアは脳死者と呼ばれる人がどのような状態にあるのか,ラザロ徴候といわれるものがどのようなものなのか,報道すべきだ。

「脳死」と呼ばれる人の実態については,小松美彦教授の「脳死・臓器移植の本当の話」に詳しく書かれている。この問題について報道するメディアや,法案について審議採決する国会議員は,この本を一度熟読してから審議・採決に望むべきではないだろう。

今回の「改正」法案審議,海外に渡って移植を受けることができなくなるから日本でもできるようにしようという目的のようであるが,そもそも,日本でやってはいけないことは海外でもやってはいけないことなのであって,海外へ渡航しての臓器移植自体についても,日本同様の規制をクリアしたものだけが認められるべきとすべきで,それに違反した人は国外犯処罰規定による刑事罰の対象とすべきだったのではないのだろうか。

今回,法の「改正」の可否については

人を法律上死んだことにしてまで臓器移植がやりたい(臓器がほしい)人たち

の願い(欲望)を,自発呼吸再開の可能性があり,身体も動き,暖かみのある人の命を奪ってまでかなえるのかどうか,ということが問われているのだ,ということがもっと認識されるべきように思う。

深夜3時の公園で全裸になることの可罰性は?2009年04月23日

タレントが,深夜に公園で全裸になって声を上げていたということで,公然わいせつの被疑事実で逮捕されましたね。

記事によれば警察に通報があったのは午前2時55分との由。草木も眠る丑三つ時,からはちょっとずれていますが,深夜であることは変わりありません。

公然わいせつ罪というのは,公衆の性的羞恥心を害する罪であり,不特定又は多数人がわいせつ行為を認識する可能性があれば成立するとされていますが,ちょっとでも可能性があれば成立するものではありません。刑罰の対象となる行為と言えるためにはそれなりの可能性が必要で,「例えば,人が通行する可能性もほとんどない浜辺や早朝の道路・公園等で全裸になる行為は本罪に該当しないと解すべきだろう」(前田雅英・刑法各論講義(初版)483頁)とされています。

逮捕現場の公園をグーグルマップで検索した結果はこちらです。ミッドタウンに隣接と記事には出ているけど,結構大きな公園です。公園内のどこにいたかによっても,公衆の性的羞恥心を害する可能性の程度はだいぶ違ったものになるのではないでしょうか(この辺りは六本木に居住ないし職場を構えられている方にお聞きしたいものです。)。さらに,youtubeで流されていたテレビ報道によれば,現場は深夜は人通りのほとんどないところであり,しかも当該タレントは,警官がかけつけた時は芝生の上であぐらをくんでいたというのです。そうすると,公衆の性的羞恥心を害する可能性の程度はかなり低いもので,上記の引用のように,「本罪(公然わいせつ罪)に該当しない」とされる可能性も否定できないような気もします。そうだとすると,当該タレントが言ったと報道されている「裸になって何が悪い」というのも,まんざらおかしくはないのではないでしょうか。

加えて,記事によれば男性からの通報も「酔っぱらいが騒いでいる」というものであり,裸だから何とかしてくれというものではなかったようですから,公然わいせつ罪として逮捕するほどの違法性があるものだったかどうか疑問が残ります。

まあ,公然わいせつ罪が厳密には成立しないとしても,人質司法の現状を考えた場合,全裸でいたことが事実であるならば,形式的に有罪とされてしまう可能性もあるので,反省の意を示して釈放してもらう方向で動くのが「賢明」なのかも知れません。しかし,マスメディアが,全裸でいたことが即犯罪を構成するかのように大々的に騒ぐのってどうかと思います。

リンク

弁護士落合洋司の「日々是好日」

情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)