モバゲーに公取委立ち入り 他社へのゲーム提供妨害容疑 ― 2010年12月08日
急成長した業界ゆえに,独禁法に対する意識が薄いのでしょうか?
http://www.asahi.com/national/update/1208/TKY201012080234.html
DeNAは1月、ゲーム制作会社が開発したソーシャルゲームを自社のサイトで公開できる「オープン化」に踏み切り、グリーも6月末にオープン化した。
関係者によると、DeNAは今年夏ごろ、モバゲータウンにゲームを提供している制作各社に対し、同じゲームをグリーのサイトには出さないよう要請。両社のサイトに同じゲームを出している一部の制作会社はモバゲータウンの人気ゲームランキングから除外されたり、検索してもゲームが表示されなくなったりしたという。
モバゲータウンは、人気ゲーム「怪盗ロワイヤル」のヒットなどで急速に会員数を伸ばしており、9月末の会員数は前年同期比4割増の2167万人。同月末現在で、231社から538タイトルのゲームの提供を受けている。一方、グリーの会員数は2246万人。約60社から約100のゲームを提供されているという。
矢野経済研究所によると、2008年度に約45億円だった国内のソーシャルゲーム市場は、09年度には7倍超の338億円に拡大。今年度は700億円を超えると予想している。DeNAは「現在、(公取委の)検査中であり、コメントできない」としている。
昨年度300億円超,今年度700億円超の市場ということになれば,来年度には1000億円超となる可能性もあるわけです(上記矢野経済研究所の試算では,2011年度は1171億円とのことです)。1000億円超ということになれば独占的状態(独占禁止法2条7項)にあるかどうかの調査対象業種となるわけで,重要産業の一つといって差し支えないでしょう。
今回問題になったとされる行為は
モバゲータウンにゲームを提供している制作各社に対し、同じゲームをグリーのサイトには出さないよう要請。両社のサイトに同じゲームを出している一部の制作会社はモバゲータウンの人気ゲームランキングから除外されたり、検索してもゲームが表示されなくなったりしたという。
というものです。ソーシャルゲームにおいては,利用者同士の交流や競争が参加意欲を高める要因になるので,利用者が多いこと自体が更なる集客要因となります。ゲームを探す際の検索機能の重要性については言うまでもないでしょう。つまり上記措置は,競争業者とも取引を行った制作会社のゲームを,事実上モバゲータウンから亡きものにしてしまうというものです。2010年1~3月期のモバゲータウンの売上高が139億円(こちら)と,市場におけるシェアが大きなことを考えあわせると,DeNAの上記行為は制作会社に競争業者との取引をやめさせるに十分なものと言えます。
ソーシャルゲームはユーザーの時間を奪うことによって成り立つものですが,多くのゲームを抱えることは,サイトへの集客力を高め,ユーザーにより多くの接続時間を使わせることにつながります。この,ゲーム獲得競争において,自社の市場支配力を楯に強制的に他社との取引をやめさせることで,競争業者は多くのゲームを集めることが困難となり,競争力を削がれるわけですが,上記のようなやり方は,取引条件の優劣で競争するという本来の競争のあり方とはそぐわないものであり,非常に悪質な行為と言わざるを得ません。
ソーシャルゲームについては,グローバル市場へ打って出ようとする動きがあるようですが,競争のあり方から公正なものとしないと,国際的に通用する企業にはならないのではないでしょうか。
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