弁護士広告と景品表示法2005年12月23日

弁護士業務も役務だから,抽せんで一定数の人に無料で提供します,といえば,景品類の提供になります。

したがって,上限は10万円,無料で提供できる人の割合は,50人に1人が限界のはずですが・・・。

http://www.news2u.net/NRR20059529.html

奥村弁護士のページを通じて知りました。)

●「今年の内に借金整理キャンペーン」(実施期間:2005年12月25日~30日) 債務処理費用全額(自己破産の場合¥283,500円)を25人に1人(2=じ、5=こ/「じこ」破産)無料

無料となる対象者の発表は、債務処理相談時の顧客ナンバーを1月10日に、・・・発表します。(裁判所に支払う実費・予納金は本人負担)

不当景品類及び不当表示防止法第2条の規定により景品類及び表示を指定する件(平成10年12月25日公告,平成11年2月1日施行)

不当景品類及び不当表示防止法(以下「法」という。)第2条第1項に規定する景品類とは,顧客を誘引するための手段として,方法のいかんを問わず,事業者が自己の供給する商品又は役務の取引に附随して相手方に提供する物品金銭その他の経済上の利益であって,次に掲げるものをいう。ただし,正常な商慣習に照らして値引又はアフターサービスと認められる経済上の利益及び正常な商慣習に照らして当該取引に係る商品又は役務に附属すると認められる経済上の利益は,含まない。

一~二 略

三 きよう応(映画,演劇,スポーツ,旅行その他の催物等への招待又は優待を含む。)>

四 便益,労務その他の役務

景品類等の指定の告示の運用基準について(昭和五十二年四月一日事務局長通達第七号)

5 「物品、金銭その他の経済上の利益」について

(2) 商品又は役務を通常の価格よりも安く購入できる利益も、「経済上の利益」に含まれる。

6 「正常な商慣習に照らして値引と認められる経済上の利益」について

(4) 次のような場合は、「値引と認められる経済上の利益」に当たらない

ア  対価の減額又は割戻しであっても、懸賞による場合、減額し若しくは割り戻した金銭の使途を制限する場合(例 旅行費用に充当させる場合)又は同一の企画において景品類の提供とを併せて行う場合(例 取引の相手方に金銭又は招待旅行のいずれかを選択させる場合)

25日からの相談者を対象とする企画ということでもあり,また,相談にとどまる内は無料ということなので,直ちに撤回の告知をすれば,「実施すれば過大景品,実施しなければ不当表示(広告で表示した取引条件が実際よりも,景品の当たる確率の点で有利であると誤認させる。)」という景品表示法上のジレンマからは逃れられると思います。

総額規制と射幸心2005年12月24日

以前とりあげたペプシのおまけの件ですが,懸賞による景品の提供とみなされて,景品の提供総額の規制に抵触するということで問題にされていました。

具体的には,懸賞の方法によって景品を提供する場合には,提供される景品の総額が,景品提供の対象となる取引期間内の売上高の2%以内でなければならないという規制に触れるとされたのです。

このように総額が規制されている理由について,提供される景品の総額が大きいと射幸心をあおるから,ということが言われます。宝くじや公営ギャンブルの当選金分配率が抑えられていること,ぱちんこにおける出玉率に上限が設けられていることについても,同様の理由が言われます。

でもこの理由,よく分かりません。 500円の物を買った人の中から100万円を1名様に,という場合と,1万円を200名様に,という場合,どちらが射幸心をあおるのでしょうか。提供される景品の総額が大きいのは後者(1万円を200名様に)ですが,上記のような広告を見た人が一発ねらってやるか!という気になるのは前者(100万円を1名様)であり,前者の方が射幸心をあおるように思えるのですが。

また,射幸心をあおらないようにするという趣旨を徹底するのならば,景品提供キャンペーンに当たっては,景品がもらえる確率を明示する措置を事業者に義務づけるべきでしょう。消費者が購入する商品が500円の時に上限ぎりぎりの1万円の景品を懸賞の方法で提供する場合,当たる確率は

 500÷10000×0.02=0.001

つまり多くても1000人に1人しか当たらないのです。このことを隠して景品提供キャンペーンを行うのは,少数の景品をおとりに商品を買わせるもので,極めて欺まん的なように思います。当選確率が明示されない状態では,総額規制は,射幸心を抑えるよりも,このような欺まん的な取引を蔓延させる方向に働くのではないでしょうか。

日本では懸賞による景品の提供については金額に制限が付けられているにすぎませんが,欧米(独仏,米国州法)では,商品の購入を条件として懸賞により景品を提供する方法自体が禁止されているところが目立ちます。懸賞による景品の提供については,上記のように欺まん的な面があることを考えるならば,日本でも欧米同様に金額の多寡を問わず禁止するか,せめて当選確率を記載させることを考えるべきように思います。