臓器移植法~こんな状態で法改正してよいのか ― 2007年01月12日
臓器提供カードに署名しないことの意味が大転換するかも知れないんですが・・。
臓器提供カードへの署名、01年以降は増えず(YOMIURI ONLINE)
昨年12月に50例に達した脳死臓器移植について、提供者の84%(42人)が、臓器移植法施行の1997年から2000年までの3年余りの間に臓器提供意思表示カードに署名をしていたことが、日本臓器移植ネットワークの集計で分かった。
01年以降、カード署名者があまり増えていないことを示唆する結果とみられる。ネットワークは「関心のない人にどう協力を仰ぐかが課題」と話している。
意思表示カードを持っていても署名していないと、脳死下での臓器提供者にはならない。集計によると、最も多かった署名時期が99年(24人、48%)。98年(11人、22%)、2000年(7人、14%)と続いた。99年は大手コンビニエンスストアチェーンがカードを店舗内に常設したり、同年2月に1例目の臓器提供があったことが普及に結びついた。
一方、配布期間が3か月しかなかった1997年(0人)を除くと、署名数が少ないのは最近6年間で、2001~06年の累計は8人(16%)。06年(0人)、01年と04年が各1人(2%)、02、03、05年が各2人(4%)だった。
前国会に上程されていた臓器移植法改正案のうちの、いわゆる自民党案(要綱,提出時法律案)では、あらかじめ拒否の意思を示しておかないと、家族の一存で脳死判定され、脳死と判定されれば臓器が摘出されてしまうことになります。今はあらかじめ承諾しない限り「脳死」状態で臓器が摘出されないのに対し、仮に自民党案が改正法として成立してしまうと,「脳死」判定や「脳死」状態での臓器摘出を拒むためには,あらかじめ拒否の意思を示しておかねばならないことになるのです。自民党案は,生命についてネガティブ・オプションの仕組みを導入するものと言えるでしょう。
別稿でも触れたとおり,「脳死」者からの臓器移植には多くの問題点があります(この点については「図書新聞」での小松美彦さんに対する以下のインタビュー記事が参考になります。)。
宇和島での事件を機に、小松美彦氏に聞く
緊急インタビュー◆
脳死・臓器移植が抱える闇――教育基本法改定の流れとも連動する改定A・B案
自民党案に従った改正法が成立すると,臓器提供カードの所持と提供拒否の意思の表示は,こうした問題の多い臓器移植から自らの生命を守るために必須のものとなります。
こうした情報を国民にきちんと示さないままに,国民の生命に重大な影響を及ぼす法改正をしていいんでしょうか?
臓器提供カードの普及を図ろうとするのであれば,上記のような「脳死」移植にまつわる問題点を明らかにした上で,自民党案が成立した場合に臓器提供カードを持たないことが自らの生命保持に与える影響を示すのがよいのではないでしょうか。生命の保持を望む国民は大あわてでカードを持つでしょう。
もっとも,そんなことをすれば自民党案の成立自体が危うくなるでしょうが,こんなとんでもない法改正は直ちに撤回させるべきではないでしょうか。
法改正の大きな理由の1つである児童からの移植を可能とするという点についても,こうした事実を踏まえて慎重な議論が必要だと思います。この意味で,公明党案(ドナーたり得る児童の年齢の引下げを内容とする。)についても考え直させるべきでしょう。
コメント
トラックバック
このエントリのトラックバックURL: http://nomura.asablo.jp/blog/2007/01/10/1104946/tb
※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。
コメントをどうぞ
※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。
※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。