弥縫策は可決されたが・・・2007年12月06日

先ほどまで日弁連の臨時総会に出席していた。

一番の大議題は,新人会員に対し,弁護士登録後2年間の日弁連会費を半額にするというものだ。弁護士会の会則を改定しなければならないので3分の2以上の多数が賛成しなければならない。

結論から先に書くと,

賛成 6992(本人出席384,代理出席6573,会出席35)

反対 1096(本人出席83,代理出席1001,会出席12)

棄権 40(本人出席3,代理出席36,会出席1)

で可決されてしまった。

日弁連の総会では,各弁護士に加え,各地の弁護士会も会単位で1個の議決権を持つ。 4分の1の会が反対の意思表示をしたことの意味はかなり大きなものではないか。

(私自身はもっと反対する会が多いのかと思っていたが・・・。)

この議案が提案された背景には,新人弁護士の収入減がある。収入減の理由は,弁護士数の激増だ。

このことは日弁連執行部も認めている。何しろ本議案の提案理由で,

近時,司法修習生の人数が増加し,新規登録弁護指数も非常に多くなってきた。一方で,修習直後の弁護士について,勤務弁護士の給与水準は低下傾向にある。

と言っていたのだから。

今回の減額の幅は1か月当たり7000円だから,年間8万4000円になる計算だ。ちょっと前までの国選弁護1件分の報酬に相当する金額である(今は下がってしまったが・・・)。

だがその国選弁護も,法務省所管の日本司法支援センターに推薦権が移ってしまっており,法務省による活動の制約を嫌えば受けることはできなくなってしまっている。日本司法支援センターの設立を易々と許した執行部は,会員の職域をむしろ狭めているのである。

またそもそも,新人弁護士の収入減は,年間8万4000円などというものではない。今日の総会での執行部の説明でも,百万円単位で減少しているということが言われていた。

こんな年間8万4000円の負担減などといった小手先の弥縫策ではなく,収入減の根本原因である大増員をストップさせることが先決ではないのか。

しかし今日の総会でも会長は,年間3000人を直ちに見直すべきではないかとの質問に対し,法科大学院修了者の質の見極めが済んでいないなどの理由を挙げ,2010年に3000人に達するまで様子を見てというような回答を行っていた。

のんびり検証し続けている場合なんだろうか。

転身の決意は評価しますが・・・2007年12月07日

同じ社会人からの転身組としてがんばってほしいとは思いますが・・・。

菊間アナがフジ退社、司法試験に専念

フジテレビの菊間千乃アナウンサー(35)が同局を退社することが6日、分かった。親しい同局関係者や番組で共演したタレントらに報告を始めている。アナウンサー業のかたわらで司法試験の勉強を進めており、今後は勉強に専念するとみられる。

以前から法科大学院に通学しているという噂は聞いていましたが,試験全体の合格率が当初の予想より低いものになるだけに,受験に本腰を入れるという選択をしたのかなと思います。

ただ,単に

親しい関係者は今後について「新しい人生を切り開きたいという思いが強く、司法試験も勉強に専念して合格を目指したいようだ」とみている。

という動機では,35歳という年齢を考えた場合,今後予想される就職難を乗り越えられるのかと他人事ながら不安も感じます。これまでのキャリアなどから引く手あまたなのかもしれませんが。

原発と小児白血病~ドイツだから,疫学調査だからなんていわないでしょうね2007年12月10日

原発周辺で小児白血病増大=閉鎖前倒しも-独【ベルリン10日時事】

ドイツ連邦放射線保護庁が9日までに公表した調査結果によると、原子力発電所の近くに住む子供ほど白血病を発病する危険が高いことが分かった。

(中略)

同庁によれば、1980-2003年に16カ所の原発から5キロ圏内の住民を調査したところ、5歳未満の子供37人が白血病を発病した。統計上の平均値は17人で、発病の確率は2倍以上。居住地が原因として考え得るとしている。

23年間という期間,16カ所の原発から5キロ圏内の住民という数からすれば,かなりの数を調査したようにも見えます。

日本ではこのような疫学調査の結果は軽視される傾向にありますが,ヨーロッパでは,試験管内での実験よりも,実際の人間への影響を計ることのできる疫学調査が重視されています。

ドイツという他国の話だから関係無い,疫学調査の結果にすぎないから証拠として不十分などと言っていてよいとは思えません。

日本でも労働者や周辺住民の被曝,健康被害について速やかに調査すべきではないでしょうか。

いつまでもエエカッコシイな日弁連2007年12月10日

先日報告した日弁連総会の内容を記した日弁連速報が送られてきました。

新規登録弁護士に対する会費減額の議案への反対意見に対する執行部答弁として以下の内容が記載されています。

法曹人口の問題については社会のニーズと質の観点から具体的検証を進めている。法的なニーズが満たされ,これ以上の増員がマイナスであるという状況になれば,政府に対して政策の変更を求めていく。本議題は,新人弁護士が増えていく現実に対して,経済的支援にとどまらず,研修や公益的活動を支援するという制度を日弁連として整備するものである。弁護士会が最大の努力をし,それでも質が低下しているとすれば,増員を見直す論拠となり,その意味で本議案は法曹人口問題への対応においても意味があると考えている。

先日紹介した内容に比べて少し前向きに述べたように記載されていますね。

実際には法科大学院卒業生の質の見極めが済んでいないと明確に述べられており,今すぐ3000名合格という路線を見直す意向のないことは明らかな口ぶりでした。

それにしても,

法的なニーズが満たされ,これ以上の増員がマイナスであるという状況

って,これだけ新人弁護士の就職難が騒がれているのに,まだニーズがあると言い張るつもりなのでしょうか。

ニーズがあるというのなら,執行部の方々が新たなニーズのある分野に進んで見られてはいかがでしょうか。

また,

弁護士会が最大の努力をし,それでも質が低下しているとすれば,増員を見直す論拠となり,

と言っていますが,質の低下を客観的に計ることなどできるのでしょうか。客観的に明らかでないといってどんどん見直しが遅れ,そのうち食えない弁護士が激増し,非弁提携弁護士などに被害を受ける依頼者も激増するということにならないのでしょうか。

また,仕事が無く,生活ができなければ,研修や公益的活動などに時間を割く金銭的・精神的余裕もなくなってくるでしょう。

研修や公益的活動に参加しない(できない)弁護士は排除すればよい,そう考えているのでしょうか?

構成員の利益を守れない事業者団体は構成員から見放されることは避けられません。今のままではやがて強制加入制の廃止論が出てくるのを防げないでしょう。

激増反対が弁護士のエゴだと見られるのをいやがって結論を先送りするというエエカッコシイはいい加減止めたらどうかと思います>日弁連執行部

自衛隊派遣ありきの「対案」なんて意味あるの?2007年12月11日

人道支援に限っても,自衛隊を派遣することはやめるべきではないでしょうか・・・。

補給支援法 民主、対案まとめる 今国会への提出見送り

民主党の外務防衛部門会議は11日、政府の補給支援特別措置法案の対案として、「アフガニスタンの復興支援等に関する特別措置法案」をまとめた。活動内容を医療や生活物資配布などの人道復興支援に限って、アフガニスタンに自衛隊を派遣する。アフガンで活動する国際治安支援部隊(ISAF)の根拠となっている国連安保理決議1386に基づく派遣と位置づける。ただし、武力行使を伴うISAF本体への参加は見送る方針だ。

アフガニスタンで活動を行っている復興支援NGOが行った以下の要望について,民主党の人たちはどう考えているのでしょうか?

JVC~アフガニスタン復興支援に対し、NGOからの要望を各党に伝えました

11月27日(火)、衆議院議員会館にて開かれた超党派議員の勉強会にて、アフガニスタンで活動するNGOが日本のアフガニスタンに対する支援に関し要望を訴えました。要望はJVCなど5団体(※注:カレーズの会特定非営利活動法人ジェン(JEN)社団法人シャンティ国際ボランティア会(SVA)特定非営利活動法人日本国際ボランティアセンター(JVC)特定非営利活動法人ピース ウィンズ・ジャパン(PWJ))の連名によるもので、軍事的な支援でなく文民による復興支援の重要性を訴えています。

NGOの要望では,ISAF(国際治安支援部隊)もISAF傘下のPRT(地域復興チーム)による復興支援活動も現地では軍隊による活動と見られることが多く現地住民の信頼を得られていないこと,現地住民にNGO等とPRTの活動が混同され,PRTの活動によりNGOが攻撃対象となる可能性が高まったことが指摘されています。

私は上記NGOの1つであるSVAの現地スタッフの報告会を聞いたことがありますが,日本はこれまで自衛隊をアフガニスタンに派遣してこなかったことが,日本のNGOスタッフが現地の人々の信頼を勝ち得てきた要因となっているということでした。

民主党案では,停戦合意が成立している地域や

人道復興支援活動に対する妨害により住民に被害が生じることがないと認められる地域

などに限って活動するとしていますが,たとえ復興支援活動であっても軍隊が行っているということで信頼されない状況が作られるわけですから,それまで平和だったからといって自衛隊派遣後も平和であるとは限らないでしょう。

「国連決議」があればいいとか「人道復興支援」であればいいとかいった言葉遊びや,自衛隊派遣のための「対案」づくりはやめるべきではないでしょうか。

公取委の審判廃止を検討 政府与党、権限集中弱める2007年12月12日

http://www.hokkaido-np.co.jp/news/politics/65403.html北海道新聞

政府、与党は11日、公正取引委員会が企業の不服申し立てを受けて行政処分の是非を自ら判断する「審判制度」を廃止する方向で検討に入った。公取委への権限集中を弱めるためで、実現すれば不服審査は裁判所などで行うことになり、競争政策上、大きな制度改正となる。

自民党は12日に開く独占禁止法調査会で、公取委の審判制度を廃止するとの結論をまとめる見通し。政府内でも廃止論が強く、公取委が主張する制度存続は極めて難しい状況となった。

私が在籍していた十年以上前ですら,審判にたえうる勧告ということで,審査部門はかなり慎重に審査を進めていたように思います。

最近は審判官も法曹人が増えるなどして,審査部門との独立性が高まっているように思えるのですが,審判で審決が取り消される割合はどうなっているかなど,公正さについての検証は行われたのでしょうか。

経済界が問題として主張するように

ひとつの機関が検事と裁判官を兼ねるのはおかしい

というのであれば,審判を行う部門を国税不服審判所みたいに別組織とするのがいいようにも思えますが,行革ばやりの昨今は難しいのでしょうか。

公取委が10月に示した独禁法改正案が自らの権限を大幅強化する内容だったため、自民党内でくすぶっていた審判廃止論が再燃し、独禁法調査会の大半の議員が廃止を主張。

って,自民党や経済界は公取を相変わらず煙たがっているんですね・・・。

新司法試験合格者の二回試験の結果2007年12月18日

新司法試験組が初の卒業試験、59人が不合格にasahi.com

法科大学院修了者を対象にした初めての新司法試験で合格し、司法修習生になった約1000人(新60期)のうち986人が11月、司法研修所の卒業試験を受け、59人が不合格となったことがわかった。最高裁が18日に発表した。不合格者は希望が認められれば、次の期の卒業試験を受けられる。

59/986=0.05983ですから,不合格者の割合は約6%ということになります。

旧60期が修習生約1500人に対し不合格者71人で,5%弱の不合格率でしたから,修習期間が4か月短縮となったことを考えれば新60期の人たちは頑張ったということはできるでしょう。

ただ,新60期の修習生が法科大学院で2年間に及ぶ教育を受けてきた人たちであることを考えると,旧60期に比べて合格率が劣ることについては,法科大学院での教育がどれだけ成果を上げているのか?という疑問は残ります。

ところで,今回二回試験を受けたのは,新司法試験合格者だけではありませんでした(以下,前記新聞記事asahi.com)) 。

今回の試験は、旧司法試験に合格しながら司法研修所の卒業試験で不合格となった「59期」「旧60期」の再受験組69人も受けた。再受験組は17人が不合格だった。

再受験組の約4分の1が不合格という,こちらの結果の方がむしろ衝撃的ですね。やはり合格者数が増えたことで修習生間のバラつきが大きくなっていたということなのでしょうか。この結果は,今後の司法試験合格者数激増の末路を暗示しているように思います。