被疑者被告人の人権をないがしろにしているのは誰? ― 2007年12月26日
来年1~2月(投票日は2月8日)の日弁連会長選挙をにらんでのことでしょう。「創る会政策ニュース」なるものが私のような末端弁護士のところにも送られてきました。
それにしてもごまかし方が尋常ではないですね。
上記ニュースでは
国選弁護態勢を瓦解させようとする動きは被疑者・被告人の人権をないがしろにするものです
という見出しのもと,
契約拒否によって現在の制度(管理人注:被疑者段階での国選弁護制度)を瓦解においこもうと主張されている方がいます。この主張は,被疑者の人権をないがしろにするもので,市民に理解されないものといわざるを得ません。
と言っていますが,拒否呼びかけの対象とされている契約がどことのものなのかという本質的問題に触れていません。
契約拒否を訴えかけているのは,その契約が,法務省の監督下にある日本司法支援センター(法テラス)との契約だからであり,弁護活動に法テラスの介入があるのではないかという危惧感を強く持っているからです。
検察庁出身者の牙城である法務省の監督下にある法テラス。そこに生殺与奪の権を握られるのを嫌って国選弁護から手を退くというのは,弁護士として自然な感情だと思うのですが。
しかも執行部は,国選弁護人の選任権を法テラスに委ねることに同意するだけでなく,一部地域で見られた,独自に国選弁護人を推薦する仕組みを作ろうとする動きをつぶすのに躍起になりました。
今の執行部やその前任者たちが,国選弁護態勢を瓦解させるような振る舞いに及んでいたのです。
国選弁護を辞退せざるを得ない状況に弁護士を追い込んだことについて,「創る会」代表世話人に名前を並べる歴代日弁連会長の方々は,何ら責任を感じないのでしょうか?
上記ニュースでは国選弁護報酬の増額への取組みを重点課題として挙げていますが,単に報酬を増額すればいいという問題ではないのです。
なお,契約拒否を呼びかけている側も,被疑者国選の制度化自体に必ずしも反対しているものではなく,現在の制度に反対というにすぎません。国選弁護が司法支援センターという法務省監督下の法人に牛耳られることへの警鐘を鳴らしているにすぎないのです。契約拒否即被疑者弁護の否定ともとりかねられない上記ニュースの表現は,不当なレッテル貼りと言えるでしょう。
60期の就職未定者数は? ― 2007年12月27日
新60期の裁判官,検察官採用者数が発表されましたね。
新60期の修習修了者の数は別記事でふれたとおりですから
986-59-66-42=986-167=819人
が新60期の修習修了者のうち裁判官にも検察官にもならなかった人の数になります。
先ほど日弁連の会員専用ホームページで調べたところ,60期の弁護士の数は2096人でした。日弁連の12月5日時点での発表では弁護士になった旧60期の人の数は1257人ということでした(司法修習生:弁護士未登録者は17人 例年並み)から,
2096-1257=839人
がそれ以後に弁護士になった60期の人(旧,新合計)の数になります。
旧60期以前の修習生で今年11月の二回試験に合格して修習を終了した人の数は52人(69-17=52)ですから
819+52-839=32人
と,12月5日時点で未登録者となっている17人(前述毎日記事)の合計49人が未登録者ということになります。
日弁連執行部はノキ弁とか新たな雇用形態を喧伝しまくっていましたが(そのような形態自体問題ですが・・),それでもなおこれだけの未登録者が出ているのです。2500名でこのような状態であれば,3000人に増やすことは無謀なことは明らかではないでしょうか。
年間3000人という法曹人口激増政策は直ちに見直すべきでしょう。
「道路は誰のためにあるのか」シンポジウム報告書が公開されています ― 2007年12月27日
以前お知らせしたシンポジウムの報告書が第二東京弁護士会のサイトで公開されています。
平成19年度 日弁連人権擁護大会プレシンポジウム「くるま社会を考える」~「道路整備中期計画書」は、住み続けたいまちづくりの未来を示せるか~に関する報告書
報告書本体(PDF)
当日配布資料(PDF)
なお,シンポジウムを受けてその後,第二東京弁護士会会長名で,「道路整備中期計画」に関する意見書(PDF)が提出されています。
上記意見書では,
1 温暖化効果,交通事故,公害環境面などの,道路整備の社会的費用の検証
2 社会的費用検証に当たっての,自動車交通抑制策(TDM)への転換
3 道路整備中期計画策定に当たっての検討を,省庁横断的に行うべきこと
が提唱されています。
「先進会員」でさえ経済的苦境に陥っていることについて ― 2007年12月27日
今日送られてきた日弁連速報に以下のような記載があった。
☆先進会員の会費免除は「申請により」行われる。遡って免除をすることはできない。会費免除申請の用紙を新たに定め,各会に周知したので,これをご利用ください。傷病の場合には,各弁護士会での免除の時期と同じ期間免除されることとなる。
先日の,新人弁護士への会費減額を決めた総会での発言で,新人会員のみならず「先進会員」への配慮もお願いしたいというものがあった。これに対し平山会長は検討する旨を述べていた。今回の日弁連速報で前後の脈略無く上記のような記載が置かれているのは,総会での上記会長発言を受けてのことだろう。
しかし「先進会員」って何だ?
「先進」について広辞苑(超漢字広辞苑)を引くと,
1 年齢・学芸・地位などが他より先に進んでいること。また、その者。先輩。
2 他より進歩・発達していること。「―技術」↔後進。
とある。要は先輩又は高齢者の弁護士ということだろう(1の意味)。そうすると若手弁護士は後進会員?それとも発展途上会員ということになろうか。(cf.発展途上国)
日弁連会則(PDF)上,1.弁護士登録期間通算50年以上の者,2.登録期間20年以上でかつ77歳以上の者,3.病気又は傷害により執務困難であるとして所属弁護士会で会費免除を受けている者については,申請によって会費・特別会費が免除されるものとなっている(95条の4)。
つまり「先進」会員に対する免除の制度は以前から置かれていたわけで,今回の記事の眼目は,
免除申請用紙を新たに定め,各会に周知した
という点にある。
そのような措置を執行部が取るに至ったのは,経済的状況の悪化して免除申請をしなければ生活できなくなった「先進」会員が今後増大する,又は既に増加しているということを,執行部自体認めざるを得なくなったからではないだろうか。
これまでの司法試験の合格者数であっても,経済的に苦況にたち,会費を納入できない弁護士が増えてきている。これ以上の弁護士激増はあちこちから会費減免の要請を生み,弁護士自治の崩壊につながるのではないだろうか。
それにしても「先進会員」なんて耳慣れない言葉を説明無く使う日弁連執行部は,言葉を使うことを職業とする者の団体の指導者としての適性を備えているのだろうか(cf.精通弁護士)?若手のことを本当に親身になって考えているのだろうか?
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