法科大学院~大学にとっても災厄だったのではないか2008年12月08日

法科大学院:4分の1超で定員削減 見直し検討も過半数毎日.jp

文部科学省が10~11月に全国74法科大学院を対象に実施したヒアリングで、4分の1を超える19大学院が10年度入試(09年実施)からの定員削減を決めていることが分かった。また、このほか49大学院が定員の見直しについて「検討を始める」と回答。新司法試験の合格率低迷などを受け、多くの大学院が現状に危機感を抱いている実態が浮かんだ。

5日に開かれた中央教育審議会の法科大学院特別委員会で文科省が報告した。具体的な大学名や削減人数などは明らかにしなかったが、9割超の68大学院が何らかの対応を考えていることが判明した。「現状維持する」とした残る6大学院はすべて私立だった。

「検討を始める」と回答した大学院には、10年度入試からの削減を視野に入れているケースもあるが、「全体が(削減に向けて)動けば対応できるようにする」などの消極的な意見もあった。入学時の適性試験に新たに最低基準を設けるなどの改善策を進めるとした大学院も複数あった。

文科省は「早急な改善策をさらに求めていく」としている。委員からは「各大学院が様子を見合っているのではないか。大規模校も教員体制などを踏まえて適正定員を検討し、全体の音頭を取っていくことが必要だ」などの意見が出た。

特別委の中間まとめ(9月30日)では▽質の高い教員の確保が困難▽新司法試験の合格率が低い--などの場合に「大学院が自発的に定員を縮小する必要がある」と提言。文科省は中間まとめが示した方向性に基づいて、各大学院に対応を求めてきた。【加藤隆寛】

この定員削減,中央教育審議会の特別委員会の中間まとめを受けて行われたもののようですが,大学院の定員という経営方針の根幹にかかわるところに文句を言われて唯々諾々と従う法科大学院って,大学の自治をどう考えているんですかね・・・。

それにしても4分の1超の19大学院(検討を始めるとした法科大学院49校も含めると9割以上)で定員削減って,生産調整カルテルみたいですね。法科大学院協会は弁護士激増による競争激化は求めるのに・・。また,削減したからといって,その法科大学院からの合格者がその分減れば,合格率の向上には結びつかないのですが。それに,教員不足といいますが,例えば問題視されている兼任教員の問題,大規模校と小規模校のどちらでより深刻な問題になっているのでしょうか?各科目に1人しか教員のいない小規模校でより深刻だとすれば,定員減で解決する問題ではないはずですが。

ところで,法科大学院については,たくさん認可したのがいけない,とか,法科大学院は協力して定員削減すべきとかいった意見がこれまで仄聞されてきましたが,私はそのような意見には反対です。法科大学院を中心とした新法曹養成制度という制度維持のために法科大学院が協力せよ!って,全体主義じゃないですか?

法科大学院については,前の記事で書いたとおり,どんな教育内容のところにせよ,そのようなところに行かないと司法試験の受験すらできないというシステムにすること自体が大問題だと考えています。したがって私自身,その教育内容について関心がありません。その意味で,法曹養成に関する問題点については「法科大学院問題」と称するのは妥当ではなく,「新法曹養成制度の問題点」として考えるべきだと思います。

法科大学院問題と称すべきものがあるとすればむしろ,その教育内容や生き残りの可否の問題ではなく,専門職大学院としてさまざまな役所による規制(認証評価機関を通じた間接的なものも併せて)を受けることにあるように思います。到達目標とか,カリキュラムとか,定員のみんなそろっての調整とか,それぞれもっともらしそうな体裁をとるものではありますが,法科大学院への公的介入ではないでしょうか。このような公的介入を,受験資格付与機関としての「特権」と引換えに受け入れる大学って何物?という気がしないでもありません。

ただこの点は,各大学も制度の犠牲者かもしれないという気もします。何しろ,制度発足当時は,法科大学院を作らないと法学部に来る学生を集められない,といった,生き残りをかけた設立競争のような状況があり,このような法科大学院濫立は法科大学院義務化の当然の帰結と言えなくもないからです(法科大学院修了が義務化されなければ,学卒で司法試験合格者を輩出できる大学として生きる道もあるでしょうし。)。

また,新法曹養成制度が法制化される時点では,私が名を存じ上げている大学教授の中でも,法科大学院制度に反対していた方は結構おられました。優秀な人が法曹をめざさなくなる,とか,法学部教育が破壊される,とか,研究に割く時間がなくなる,とか理由はさまざまでしたが,法科大学院設立に向けて教員確保などに奔走する大学の内情を深刻に憂えておられました。そのように懐疑的な方がいたことは,

ロースクールを考える

といった本にも現れています。

法科大学院義務化は,結局,これをネタに一旗揚げようとした人のごく一部を除いて,誰も幸せにしない制度であるように思います。

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