こんな日弁連をどうするか?2010年03月10日

小林正啓弁護士の書かれた「こんな日弁連に誰がした?」,ようやく読み終えました。早々と送っていただきながらご紹介が遅れてすみません。また,送っていただいたことに,遅ればせながらこの場でお礼申し上げます。

本書は

戦後,裁判所が右傾化するのと機を即して左傾化していった日弁連が,法曹増員に対する対応を誤り,司法改革についての当事者能力を失ったのを,司法制度改革審議会において法曹一元導入の夢を叶えるべく巻き返しを図ったが惨敗した

という歴史(ストーリー?)を,当時の新聞記事や日弁連総会議事録,司法制度改革審議会議事録などにあたって丹念につづられています。

本書は司法制度改革の是非ということではなく,戦術論,戦略論の方に重きを置いて書かれたものですが,どのような戦術・戦略を取るのかも,どのような目的・目標を掲げるのかと密接に関連しているので,そもそも得ようとしている目標の評価と離れては戦術・戦略を論じ得ないようにも思いました。

本書では,1994年の日弁連総会決議で,司法試験合格者800人の決議を行ったことで,日弁連が世間の支持を失い,法曹人口問題に関する当事者能力を失わせることにつながったとしています。

今日再投票が行われる日弁連会長選挙の,執行部承継候補支持と思われる文書内で,上記時代のことを挙げて,過激な主張は控えるべきだとの内容が書かれていましたが,問題にしている増員の内容も違いますし,また,1994年当時の,規制緩和拡大の流れと,新自由主義への反発・規制緩和一辺倒の見直しの声が拡大し,弁護士の就職難が現実化している現在とでは,情勢も異なるので,過去の事例の反省から,合格者数減員を持ち出すのは慎重たるべき,ということにはならないでしょう。

本書で書かれている,日弁連の「失敗」の原因については更に別に触れてみたいと思いますが,今日が投票日ということで,とりあえず会長選挙に絡むところのみ触れてみました。

日弁連会長選挙再投票,宇都宮候補が勝利2010年03月10日

日弁連会長選挙の再投票が今日行われ,宇都宮健児候補が勝利したようですね。

私の属する第二東京弁護士会では前回よりも投票率が上がっているようで,しかもその多くが宇都宮候補に流れた模様。驚きです。

私はいずれの候補も支持するものではありませんが,宇都宮候補におかれては当選された以上,司法試験予備試験について,

法科大学院の現状は,多様な人材を法曹に迎え入れるという理想どおりになっているのか,そして今後,法科大学院教育が質的に優れていることは別ルートからの受験者との競争によっても検証できるのではないか,などの視点から,司法試験予備試験を「例外的・補完的なもの」として位置づけるのが適切であるのか,再検討します。

との公約(市民のための司法と日弁連をつくる会政策要綱)を是非果たして,法科大学院などという得体のしれないものに通わなくても法曹になれる途を広く開くようにしてほしいものです。

(再検討の結果,例外的・補完的なものとするという結論が出されそうなおそれも大ですが・・)