優良誤認性の判断は競争に与える影響によるのでは2008年04月09日

その表示によって競争で優位に立つかどうかということが重要っていうことですね。

製紙8社に排除命令へ 公取委、古紙表示の改善求めるasahi.com

製紙各社が再生紙の古紙配合率を偽装していた問題で、公正取引委員会は8日、日本製紙グループ(東京)など大手を含む製紙会社8社に対し、景品表示法違反(優良誤認)で排除命令を出す方針を固め、各社に通知した。今後反論などを聴いたうえで、月内にも命令を出す。

関係者によると、ほかに命令を受ける予定の会社は、王子製紙、大王製紙、三菱製紙、紀州製紙、丸住製紙、北越製紙、中越パルプ工業の7社。

各社は、実際には古紙配合率が10~50%程度の一般消費者向けのコピー用紙を、「再生紙100%」「古紙70%」などと表示していたとされる。全く古紙が含まれていなかったケースもあった。すでに各社とも、「再生紙」の表示を取りやめたり、表示と実際の配合率が合うよう是正したりして販売しているという。命令が出た場合、各社は公取委への再発防止策の提出や、新聞広告などでの消費者への経緯説明などが求められる。

景品表示法に違反するかどうかについて業界内では、表示通りに古紙を配合した製品よりも、パルプの比率が高い「偽装品」のほうが、紙としての品質が高いため、「優良誤認にあたらない」という意見や反論もあるという。

これに対し、公取委は、環境保護の観点から高い古紙配合率の再生紙を求める消費者の立場からすれば、適正な再生紙でこそ商品価値があると判断。消費者の身近な商品で、影響も大きいとして、最も重い処分である排除命令を出すことにしたとみられる。

景品表示法は,消費者保護のための法律ではありますが,もともと独占禁止法の特別法としてできたものであり,競争に悪影響を及ぼす行為を取り締まるものです。

不当表示が取り締まられるのも,消費者に不利益を与えるというのが第一の理由ではありますが,同じ品質の製品を比べた場合,まっとうな表示をしている製品に比べて不当な表示をしている製品の方が消費者に選ばれる可能性が高まり,まっとうな表示をしている製品が競争に敗れて消え去ってしまうことになるからです。

エコ指向の世の中では,古紙配合率の高い再生紙の方が環境に優しいもの=優良なものとして消費者に認識され,買われるに至るのです。その結果,古紙配合率が高いと表示された再生紙はそうでない再生紙に比べ競争上優位に立り,まっとうな表示をしている製品は競争に敗れて消え去っていくでしょう。このように競争に影響を及ぼす以上,「品質が高いため、『優良誤認にあたらない』という意見や反論」は筋違いでしょう。そもそも,製紙業者だって,古紙配合率を高く表示した方が競争上有利と認識しているからこそそのような表示をしたわけで,それが今更優良誤認に当たらないというのはいかがなものかと思います。

なお,消費者保護という点でも,古紙配合率が表示されたよりも低いと知った消費者は,自分が環境に優しいことをしたと思っていたのが裏切られた気持ちになって精神的ダメージを受けるでしょうし,古紙が配合されていなければ買わなかったであろうものを買わされたことで損害を被ったと言えるでしょう。特に,量販店などで見ると,古紙が配合されているコピー紙は100%パルプの製品より値段が高いのですからなおさらです。

それにしても製紙業界といえば寡占,協調的といった印象を受ける業種ですが,不当表示についても協調して行ってしまうのでしょうか。