代理出産が認められている国の実情は? ― 2008年04月04日
【ニューヨーク1日時事】3月31日発売の米誌ニューズウィーク最新号は、第三者の子供を産む代理母に、軍人を夫に持つ女性が志願するケースが急増していると報じた。夫が戦地に赴いている間を利用できることなどが理由。テキサス州やカリフォルニア州では、代理母の半数を「軍人の妻」が占めるという。
同誌によれば、不妊に悩む夫婦らに代わって妊娠・出産に臨む代理母への報酬は、2万-2万5000ドル(約200万-250万円)。これに対し、新兵の年間基本給は最高で約2万9000ドル(約290万円)だ。転勤が多い米兵の妻が定職に就いてキャリアを築くのは困難だが、代理出産であれば家計に大きく寄与できる。
年間290万円の給与で軍人という危険な任務に就く人がいるのも驚きだが,代理母になる人には貧困者が多いという実態を思い知らされる。
妊娠・出産には現在でも死の危険が伴うわけで,軍人とその妻はいずれもその身を殊更に危険にさらす業務に,しかも高いとはいえない報酬(十月十日で200~250万円という収入より低い収入の代理出産依頼者(カップル)というのはまれであろう。)で就くことを余儀なくされている。
このような社会が妥当なのかどうか,代理出産を肯定する論者にはよく考えてほしいものだ。
一方,営利目的での代理出産を禁じさえすればいいのではないかというと,そうも言えない。
以下はむささびさんの記事経由で知ったものだが,英国の実態をよく知らせてくれていると思う反面,この記者の姿勢には疑問を感じざるを得ないものがある。
去年秋から今年の春にかけて英国の「代理母制度」を取材しました。英国では90年以降、手続きさえすれば、代理出産で生まれた子供を「実子」とすることが認められています。
いきなりですが、代理出産で産まれた子供を見たことありますか?
ということで、訪ねました。
こちらはオリバー君とアリスちゃん、15歳の双子です。
(年齢が、いかに前から制度があるかを物語っています)
「母は1人で混乱はないんだよね」「生まれてよかったです」の言葉に、どっきりしました。
高校に通う彼らは、授業で代理出産についてプレゼンテーションをしたりしているそうです。
代理出産のうちホスト・マザーと呼ばれる形態(日本で話題となったタレント夫婦もこの事例)では,体外受精によりできた胚を代理出産者の子宮に着床させて懐胎させる。その際,成功率を高めるために,一度に複数の胚を入れることがある。つまり,人為的に多胎の状況を作り出すのだ。上記の双子もそのようにして生まれてきたのだろう。 双子の妊娠・出産は一人の子どもの妊娠・出産よりも母体に負担をかけるものだ。子どもをほしいと望む夫婦自身が多胎による危険に自らをさらすのならまだしも,このような危険を第三者に受けさせることが果たして妥当なのだろうか。
記事は次に,代理出産を依頼して子どもを得た女性の話へと続く。
「とにかく代理出産で肝心なのは、代理母との信頼関係だ」とのこと。
過去の例では、10か月もお腹の中に居た子供を手放したくないと気持ちの変わる代理母も居て裁判になったりしています。・・・・いくら進んでいるとはいえ、産んだ女性が最初の段階で、母親であることには争いはありません。
出産後に手続きをするわけですが、それは当人同士の信頼関係でやるもの。法的義務はないため、余計に2人の間の関係が大事なのです。
リンダさんは、友人関係を続ける努力をしたといいます。
イギリスでも,出産と同時に依頼者が母親となるものではない,ということだ。このことは,遺伝子が依頼者のものだから依頼者夫婦との間の親子関係を直ちに認めるべきだ,とする人たちには特に強調しておきたい。
それにしても,子どもを引き取らせてもらえるために続ける努力をする友人関係って,いかがなものなんだろう?
彼女が話した言葉の重みは、代理出産を支援する団体の会合に通うと、さらに実感できました。
中に、涙ぐむ女性が居ました。彼女は、「代理母」の側でした。
妊娠したわけでもないのに、代理出産をするためには薬を飲んだりして、体調が悪いのだといいます。
さらに、「困っている旦那の親戚に依頼されたから断れなかった」、「でも旦那は複雑な表情をする」・・・そう話し、いかに大変な作業かを語ってくれました。
他にも「人生で自分の出産より遥かに大変だった」という人も居ました。
英国は日本に比べるとイエ制度の縛りなどが薄いと思っていたが,それでもやはり,「旦那の親戚」からの依頼となると断れないものなのか。 日本ではイエによる圧力が更に強力なものとしてかかってくるのではないだろうか。代理出産の「試行」を仮に認めるとしても,親族間での腹の貸し借りは認めるべきでないだろう。
それにしても,「旦那」っていう訳,ジェンダー的に問題あるのでは?何で「夫」と訳さなかったのだろう?
営利目的でない代理出産というが,対価無しに他人のために妊娠・出産のリスクを冒す他人ってどんな人なんだろうか。結局,親族などの関係にある人が周りの圧力から引き受ける場合くらいしか考えられないのではないか。現に,代理出産を日本で手がけている根津医師が呼びかけたボランティアも,代理出産に伴う危険性を告知された途端応募者がゼロになったではないか。
非営利での代理出産についても,周囲の圧力が働く危険が大きいということを考えれば,禁止すべきであろう。
ところで上記の日本テレビの記事,取材はなかなかよくできていると思うのだが,評価の部分になると以下のように,代理出産依頼者の側に偏った見方になるのが残念だ。
英国の代理出産制度は進んでいるといわれていますが、それでも多くの問題点や悩みを抱えていると感じました。
1)依頼する側と依頼される側の間に法的拘束力はなくトラブルになる可能性が残っていること
2)補助制度が整っていない など・・・まだ不備があります。
依頼される側に対する拘束力を課すのがよいとでも思っているのだろうか。十月十日にわたって体内で育んできた子どもを引き渡さなければならない代理出産者の気持ちには心が及ばないのだろうか?
また、アメリカと違って「商業主義」を禁止しているからこそ、
「必要経費」以外は負担しなくてよいとされていますが、
完全に依頼者目線だな。
こうしたことは日本では、まだまだ先のことかもしれません。法律や制度も違います。
ただ、代理出産で生まれた子供、代理母、依頼した母、の3者の「笑顔」を見て感じたこと;
それは素朴に同じ女性として、「選択肢」があるのはいいことではないか、ということでした。
冒頭で挙げた米国発の記事など見ると,代理母は,「選択肢」が与えられている者というよりもむしろ,依頼者に,代理懐胎の依頼という「選択肢」を提供させられている者ではないか。この記事を書いた記者は,自分や家族が貧困や家族の圧力によって「選択肢」を提供させられる側に回るということは考えないのだろうか。
代理出産については,メディアの報道では子どもを持てない女性の立場からのものが目立つように感じる。しかし実際に代理出産を行う人の立場はどのようなものか,なぜ代理出産を引き受けるようになるのか,といった観点からの報道がきちんとなされていくべきではないだろうか。
ここまで書いてきた後,冒頭の時事通信の基となったNewsweekの記事を見つけた。
The Curious Lives of Surrogates
ウエブ上の翻訳で大意をつかむことができたので,このニュースウイーク記事本体についても別項を立てて触れようと思う。
代理出産~やはりイエの圧力がかかってくるのだ ― 2008年04月06日
Newsweek誌の記事を取り扱おうと思ったが,ショッキングな事実が出てきてしまったのでこちらから。
代理出産:15組が実施、8組から10人誕生--根津医師公表(毎日.jp)
諏訪マタニティークリニック(長野県下諏訪町)の根津八紘(ねつやひろ)院長は4日、これまでに15組が代理出産を試みたことを同クリニックのホームページで公表した。4組は妊娠せず11組が妊娠。3組は流産、8組が出産し、10人が誕生したという。代理出産に関しては3月、日本学術会議の検討委員会(鴨下重彦委員長)が法律で原則禁止し、公的機関の管理下での試行を容認する報告書案をまとめている。
ホームページによると、代理出産について、約100組から相談を受けた。実施した15組の依頼女性をみると、6人は生まれつき子宮がないか小さいケース、9人は子宮筋腫、子宮体がんなどで子宮を摘出していた。出産を引き受けた女性(代理母)は▽実母5人▽実の姉妹3人▽義理の姉妹7人。年齢は34歳以下が5人、35歳以上10人。55歳以上も4人含まれている。
根津院長は「『代理出産の条件付き容認、悪用する者へは刑事罰』(根津私案)という基本の下で、さらに症例数を増やしながら議論していくべきだ」としている。【大場あい】
毎日新聞 2008年4月5日 東京朝刊
「実施」した15組について代理母になった人をみると,一番多いのが「義理の姉妹」というのは,単純に親族間の情誼からくる美談とは言えないだろう。
義理の姉妹ということは,代理母の側から見た場合,(1)自分の夫の姉妹夫婦のために生むケース,(2)自分の兄弟とその妻のために生むケース,(3)自分の夫の兄弟の妻に代わって生むケースが考えられる。
いずれにしても,「依頼女性」(その夫の存在が無視されているので,このような言い方はいかがなものかと思う。)と代理母との間を結びつける存在として,「夫」や「兄弟」といった男性が存在している。
この点については,男性中心のイエ制度の保持のためではないかという疑念を強く感じる。フェミニストの研究者によく研究してほしい。
ところで,上記記事で触れられている,根津医師の診療所の「ホームページ(「当院の代理出産から考えること」--当院における代理出産のご報告--)」を見てみたが,この医師,とんでもないことをしているといわざるをえない。
上記ウエブページには,「実母による代理出産をされた方の声」として,自分の夫の子を自分の実母に妊娠・出産させた女性の声が掲載されている。この女性は,生まれつき子宮に欠損があるため子どもを産めない身体であったが,そのことを理解してくれる現在の夫に出会い,結婚するに至った。しかし,そのような彼のために子どもがほしいと願い,向井亜紀・高田延彦夫妻についてのニュースを見たのをきっかけに代理出産を希望するに至る。彼女が実母に出産してもらうまでに至る経緯は以下の引用のとおりだ。
私は向井さんと同様、代理母出産を望みました。夫と話し合い、当初はアメリカでの代理母出産を考えていました。そのような時にインターネットで諏訪マタニティークリニックを知り、根津先生が近親者を代理母とするならば、代理母出産を行っていることを知ったのです。すがる思いで、すぐにお電話させて頂きました。先生の、「あなたのお母さんに手伝ってもらいなさい。」との一言で、私は電話口で声を出して泣いてしまいました。これまでの子供が産めないという苦しみや夫や夫のご両親への引け目が先生の一言で少し救われた気持ちになったからです。この先生の言葉を母に伝えると、母は快く引き受けてくれました。そこで、クリニックへは私と夫、そして私の両親の4人で受診しました。そこで、根津先生からの提案について、私たちはもう一度よく話し合い、私と主人の受精卵を母の子宮に戻すことを決めました。そして、数回目の試みで、母の体に新しい命が宿りました。それを聞き私たち家族は泣いて喜びました。それから出産に至るまでの間、私は母とともに生活しながらその日を待ちました。そして待望の出産、私は涙が止まらず我が子をまともに見ることができませんでした。ただただ先生をはじめ、温かく見守り続けてくれた諏訪マタニティークリニックのスタッフの方に対する感謝の気持ちと、何より頑張ってくれた母に対して感謝の気持ちで胸がいっぱいになり、涙が止まりませんでした。
「あなたのお母さんに手伝ってもらいなさい。」って,根津医師,母親に代理母になってもらうよう慫慂しているではないか。しかも「手伝って」などと,出産の主役が依頼者であるかのような表現を使って。現実は,依頼を受けた実母自身が危険を冒して出産するのであって,「手伝」うなどという生やさしい行為を依頼するのではないのに。上記のような根津医師の言い方は,依頼者を,代理母の負担に思いを寄せることから遠ざけるものであり,代理出産をより「気楽」に依頼できるようにしようとするものであって,代理母の依頼を受ける実母の生命に対する配慮のかけらもないものだ。まあ,根津医師自身,上記ウエブページに付された資料の末尾で,
2 実母が代理母となる利点
として,
1.娘の為に子供を産む、というところから意識がスタートしているため、依頼時には既に様々な事柄に対する覚悟が出来ている。
2.出産した子供=孫になる為、子供の受け渡しに関しトラブルは起きない(障害児が例え生まれた場合も含め)
3.代理母である実母も実父も、実の娘のためという意識下で行うため、家族間における妊娠中・産後の不都合に対する不満は起きにくい。また代理母妊娠中に依頼者が生活を共にすることも親子間であることから行いやすく、代理母の家族と依頼者の家族が密接に関わることができる。
4.妊娠出産経験者であり健康体であるため、一般の不妊治療を行っている方より高齢であっても妊娠出産率が高いものと考える。
などと,母親であれば娘のため,孫を手にするためと思っていろいろと我慢してくれることを挙げているぐらいだから,上記のような発言がなされたとしても不自然ではないが。
特に,前述の,「声」が掲載されている女性の場合,
先天的に子宮の欠損があるこの診断に両親は驚愕し、ただ泣いていました。
というのだから,子どもがそのような症状を持って生まれてきたことについて母親は責任を感じていただろうと推測できる。このように責任を感じている母親が娘から「手伝って」と言われて,そう簡単に断れるのだろうか。娘が子どもを産めないのは自分のせいだという強迫観念から,断れなくなるだろう。代理出産推進者の根津医師はそのような状況を見越して前記のような「手伝い」発言をしたのだろう。
それにしても「様々な事柄に対する覚悟が出来ている」ことを利点に挙げるって,(繰り返しになるが)代理母となる女性の身体を危険にさらすことについてきちんと配慮しているのか疑問を抱かざるをえない。実際に「マタニティ」ドレスを着用し,出産するのは代理母となる人なのだが,この医師の目には代理出産を依頼する人のことしか目に見えていないのではないか。
根津医師の報告ページはこのほかにも突っ込みどころ満載なのだが,新聞記事で引用された箇所との関係で,あと1,2点のみ触れておく。
新聞記事では15組が試行しそのうち8組が出産,10人が誕生したとされている。これだけ読むと,成功率が15分の8とは高いではないかとの感を持つだろう。私も持った。
しかし,報告によれば,
代理出産に挑戦した15例に37回のET(戻し)をして、11例に妊娠、即ち体外受精(IVF・ET)妊娠率29.7%、8例に生児を、即ち、体外受精出産立(ママ)21.6%(体外受精妊娠率30.4%、分娩率19.2%、日本産科婦人科学会調べ)でした。
ということなのであり,一般的な体外受精に比べ低いとはいえないものの,受精卵移植が成功した場合でも出産率は2割強にすぎない。つまり8割のケースでは,代理母に負担をかけながら「成果」を得られずに終わっているのだ。そして,15例に37回の戻しをしているというのだから,1症例当たり平均2回以上のET(戻し)をしている計算になる。こうしたETを行うについての負担はどの程度のものなのだろうか。マスコミは,こうしたことについてもきちんと伝えるべきではないだろうか。そこまで行かなくとも,ghanajapanさんが触れられているような,流産時の負担などについては気づいてしかるべきだろう。
根津医師は,報告の最後で
ボランティアによる代理出産も今後の課題であると考えております。これに関しては、代理出産禁止の条件となっている、妊娠・出産における危険性を無視して考えることは出来ません。すなわち、いつ何時代理母が死亡したり後遺症を残すような重篤な疾患に陥るかも分かりません。例え危険を承知でのボランティアとは言え、その場合の保障制度、トラブル化した場合の対応策を考えてからでなければ、ボランティアにより代理出産は簡単にスタートすべきではないと考えます。
今回はそのような場合にも当事者間だけで問題解決が可能な身内での代理出産、すなわち兄弟姉妹間、親子間のケースに関する実例報告をさせて頂きました。
と述べている。
身内での代理出産であれば当事者間だけで問題解決が可能というのは,親族間の争いを日常的に処理する立場からすると,楽観的にすぎるといわざるをえない。問題が起こらないとすれば,それは,実害を受けた者の側(夫や子どもを含めて)が,圧力に負けて泣き寝入りをしたということではないだろうか。
根津医師の上記のような考え方には,kurokuragawaさんの予想されるような事態が,むしろ当然の前提として組み込まれているのではないだろうか。
依頼時に加え,問題解決時に圧力がかかる,親族間での代理出産。仮に代理出産の「試行」が認められるとしても,親族間での代理出産は絶対に認めてはならないだろう。
改憲論の真相が暴露されたからでは? ― 2008年04月08日
憲法改正「反対」43%、「賛成」を上回る…読売世論調査(YOMIURI ONLINE)
読売新聞社が実施した憲法に関する全国世論調査(面接方式)によると、今の憲法を改正する方がよいと思う人は42・5%、改正しない方がよいと思う人は43・1%で、わずかながら非改正派が改正派を上回った。
ただ、各政党が憲法議論をさらに活発化させるべきだと思う人は71%に上り、改めたり加えたりした方が良いと思う条文を挙げた人も7割を超えた。施行61年を迎える憲法に、時代にそぐわない部分が増えているとの認識は根強いようだ。
調査は3月15、16日に年間連続調査「日本人」の一環として行った。
1981年から実施している「憲法」世論調査では93年以降、一貫して改正派が非改正派を上回っていた。しかし、今回は改正派が昨年より3・7ポイント減る一方、非改正派が4・0ポイント増え、これが逆転した。憲法改正に強い意欲を示した安倍前首相の突然の退陣や、ねじれ国会での政治の停滞へのいらだちなどが影響したと見られる。
これまでずっと多数派だった改正派を非改正派が上回ったということは,憲法を変えることの意味(危険性)に国民が注意し始めたということではないでしょうか。
読売は,改正派の減少と非改正派の増加の原因について
憲法改正に強い意欲を示した安倍前首相の突然の退陣や、ねじれ国会での政治の停滞へのいらだちなど
と分析していますが,解せません。改憲論を唱えた安倍首相の体たらく振りをぶりを見て,彼の唱える改憲論がやばいものであることが広く認識されるに至ったということでしょうか。それならばこの部分は分からなくもありません。
しかし,政治の停滞へのいらだちについては,閉塞感打破のために改憲を!という声を強める要因にはなれ,改憲論を収縮させるものとは思えません。読売も旧年来の主張である自主憲法制定が国民の支持を得られなくなりつつあると感じてやけになっているのでしょうか。
改正派にその理由を複数回答で聞いたところ、「国際貢献など今の憲法では対応できない新たな問題が生じているから」の45%が最も多かった。非改正派では「世界に誇る平和憲法だから」が53%で最多だった。
改憲の争点が9条にあることははっきりしてきたのではないでしょうか。環境権の規定がないとかいうのはまやかしであると見抜かれてきたのでしょう。
憲法で関心のある点(複数回答)では「戦争放棄、自衛隊の問題」が47%で7年連続で最多となった。昨年との比較では「裁判の問題」が20%(昨年15%)に増え、裁判員制度への関心の高まりをうかがわせた。
自衛隊の海外派遣全般に関する原則を定める恒久法を必要と思う人は46%で、「そうは思わない」42%を上回った。9条を今後どうするかについては「これまで通り、解釈や運用で対応する」36%、「解釈や運用で対応するのは限界なので、改正する」31%、「厳密に守り、解釈や運用では対応しない」24%となった。
上記のように争点がはっきりと認識されてきた中で,9条は変えないという意見が58%と過半数に達していることも注目すべき点でしょう。
こうした世論が本当にきちんと反映される仕組みになっているのか,改憲の方向に煽られたりしないのか,改憲投票法についてはそのような観点から,廃止も視野に据えた抜本的見直しが必要でしょう。
優良誤認性の判断は競争に与える影響によるのでは ― 2008年04月09日
その表示によって競争で優位に立つかどうかということが重要っていうことですね。
製紙8社に排除命令へ 公取委、古紙表示の改善求める(asahi.com)
製紙各社が再生紙の古紙配合率を偽装していた問題で、公正取引委員会は8日、日本製紙グループ(東京)など大手を含む製紙会社8社に対し、景品表示法違反(優良誤認)で排除命令を出す方針を固め、各社に通知した。今後反論などを聴いたうえで、月内にも命令を出す。
関係者によると、ほかに命令を受ける予定の会社は、王子製紙、大王製紙、三菱製紙、紀州製紙、丸住製紙、北越製紙、中越パルプ工業の7社。
各社は、実際には古紙配合率が10~50%程度の一般消費者向けのコピー用紙を、「再生紙100%」「古紙70%」などと表示していたとされる。全く古紙が含まれていなかったケースもあった。すでに各社とも、「再生紙」の表示を取りやめたり、表示と実際の配合率が合うよう是正したりして販売しているという。命令が出た場合、各社は公取委への再発防止策の提出や、新聞広告などでの消費者への経緯説明などが求められる。
景品表示法に違反するかどうかについて業界内では、表示通りに古紙を配合した製品よりも、パルプの比率が高い「偽装品」のほうが、紙としての品質が高いため、「優良誤認にあたらない」という意見や反論もあるという。
これに対し、公取委は、環境保護の観点から高い古紙配合率の再生紙を求める消費者の立場からすれば、適正な再生紙でこそ商品価値があると判断。消費者の身近な商品で、影響も大きいとして、最も重い処分である排除命令を出すことにしたとみられる。
景品表示法は,消費者保護のための法律ではありますが,もともと独占禁止法の特別法としてできたものであり,競争に悪影響を及ぼす行為を取り締まるものです。
不当表示が取り締まられるのも,消費者に不利益を与えるというのが第一の理由ではありますが,同じ品質の製品を比べた場合,まっとうな表示をしている製品に比べて不当な表示をしている製品の方が消費者に選ばれる可能性が高まり,まっとうな表示をしている製品が競争に敗れて消え去ってしまうことになるからです。
エコ指向の世の中では,古紙配合率の高い再生紙の方が環境に優しいもの=優良なものとして消費者に認識され,買われるに至るのです。その結果,古紙配合率が高いと表示された再生紙はそうでない再生紙に比べ競争上優位に立り,まっとうな表示をしている製品は競争に敗れて消え去っていくでしょう。このように競争に影響を及ぼす以上,「品質が高いため、『優良誤認にあたらない』という意見や反論」は筋違いでしょう。そもそも,製紙業者だって,古紙配合率を高く表示した方が競争上有利と認識しているからこそそのような表示をしたわけで,それが今更優良誤認に当たらないというのはいかがなものかと思います。
なお,消費者保護という点でも,古紙配合率が表示されたよりも低いと知った消費者は,自分が環境に優しいことをしたと思っていたのが裏切られた気持ちになって精神的ダメージを受けるでしょうし,古紙が配合されていなければ買わなかったであろうものを買わされたことで損害を被ったと言えるでしょう。特に,量販店などで見ると,古紙が配合されているコピー紙は100%パルプの製品より値段が高いのですからなおさらです。
それにしても製紙業界といえば寡占,協調的といった印象を受ける業種ですが,不当表示についても協調して行ってしまうのでしょうか。
弁護士激増,裁判員制度見直しに向けた集会のお知らせ ― 2008年04月18日
4月から弁護士会も年度が替わり,日弁連も新執行部体制となったようです。
しかし,法務省でも司法試験合格者3000人について見直しを含めた検討をするための組織が立ち上げられたというのに,日弁連会長のあいさつを見ると,会長選挙の時に公約としていた,3000人到達時期の延期や,法曹のニーズに対する検証といった言葉は消え去っています。
また,裁判員制度についても,来年5月21日から施行されるということが決まりましたが,依然として国民の反対は強く,「参加したい」「参加してもよい」といった回答は全体の15.5%にすぎません。(アンケート報告(PDF))しかもこの割合は,上戸彩まで導入しての広報にもかかわらず(個人的には仲間由紀恵の方が好みですが),前回調査よりも減っています。裁判員制度の本質を市民が見抜いたからこそ嫌がっているのではないでしょうか。それにもかかわらず宮崎新会長は「ご協力をお願い」などと宣っています。市民の思いに無理解極まりないと言わざるを得ません。
こうした日弁連の動きに釘を刺し,弁護士激増と裁判員制度の見直しに向けて舵を切らせようということから,集会が開かれます。ぜひ御参加を!
4.18 弁護士・市民集会~ 弁護士激増・裁判員制度・改憲に対決して ~
日 時 : 4月18日(金)午後6時00分~8時30分
会 場 : 弁護士会館2階クレオ(東京)
ゲスト : 斎藤貴男さん(ジャーナリスト)
新藤宗幸さん(千葉大学教授・行政学)
●ビデオ上映「7年前の臨時総会 激増はここからはじまった」
●「さあ 日弁連の再建だ!」高山俊吉(東京弁護士会)
●弁護士激増と若手の声
「若手弁護士は何を考え決起したか」増田尚さん(大阪弁護士会)
「私たちにも言わせろ」(60期の会員ほか若手弁護士)(私(若くはないですが^^;)も発言する予定です。)
●裁判員制度はいらない!~市民の立場から
< 主催 : 憲法と人権の日弁連をめざす会 >
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