抽選による航空券の提供~景品につられて購入した人への処置は? ― 2008年09月02日
航空会社と景品表示法って縁が薄くないもののはずですが・・・。
全日空、景品高すぎ法令上限超す 「値下げ」し当選者増(asahi.com)
全日空(ANA)は2日、往復航空券がもらえる今夏のキャンペーンで、景品が景品表示法の上限(10万円)を超える可能性があったとして、内容を変更すると発表した。同社は「認識不足だった。申し訳ない」と謝罪。すでに応募している約33万人には、メールなどで理解を求める。
問題となったのは、「夏の旅行インターネット予約・購入キャンペーン」。期間中(6月9日~9月30日)に、ネットを通じて予約・搭乗した同社マイレージクラブの会員を対象に、10月に抽選して国内・国際線で各5組10人に、希望する場所への往復航空券をプレゼントする内容だった。
ところが、路線や座席のクラスを限定しなかったため、たとえば当選者が成田―ロンドンのファーストクラス往復を希望した場合、金額は約200万円になることが、外部からの匿名の指摘でわかった。このため同社は「抽選で120人に10万円分のANA旅行券プレゼント」に改めることにした。
景品類の提供が制限されるのって,過大な景品でお客をつることが,本来商品・サービス自体の品質や価格でもって行うべき公正な競争を阻害するからです。いったん過大な景品類の提供を提示してお客を集めること自体,他の事業者との間の競争に影響を与える行為であり,いったんお客を集めてしまうことをした以上,景品類の提供を取りやめたからといって違法な状態(公正な競争を妨げた状態)が改まるわけではありません。
しかも,景品類の提供は,それが抽選によるものであれ,取引条件の1つですから,実際には提供することのできない景品をあたかも提供するかのように表示してお客を集めること自体,実際の取引条件よりも有利にみせかけるものであり,不当表示ともうけとられかねないものです。
この点は以前,弁護士広告と景品表示法でも述べたところです。
ところで全日空は,「すでに応募している約33万人には、メールなどで理解を求める。 」としていますが,そのようなことで済むのでしょうか。仮に今回の全日空の広告に惹かれて,ロンドン往復のファーストクラスの往復航空券のチケットが当たる可能性があると思って応募した人がいた場合,その人は取引条件について,全日空の広告により錯誤に陥らされたことになります。応募者は詐欺ないし錯誤を理由として契約を取り消し,又は無効が主張できるというべきでしょう。
ところで航空会社については,マイレージサービス導入時に,マイルをためることで取得できる航空券の額が景品表示法の景品額の上限(当時は5万円)を超えるかどうかが問題になったという歴史があります。
マイレージサービスについては,国際的に行われている中で日本の利用者だけが利用できないのはおかしいということで摘発が見送られました。さらに,この問題をきっかけとして,景品表示法上の景品類の解釈が変更され,マイレージサービスで提供される航空券は景品に当たらないことになりました。しかし,今回のように抽選で提供する場合については,航空券は依然として景品類に当たることとなります。
マイレージサービスが合法と認められた歴史を引き継いでいれば,マイレージサービスが景品表示法上合法か否か疑義のあるものであったこと,国際競争のもと各社が行っていることゆえ合法化されたことが分かるのであって,今回のような抽選によるサービスまで合法化されるものではないことがすぐにわかったのではないでしょうか。
商品・サービスの購入を条件とする,抽選による景品類の提供については,米国,欧州とも全面禁止といってもよい状況にあり,日本のように一定範囲で認めているのは,いわゆる先進国では例外に属します。全日空も国際線を持ち,国際競争にその身をさらしているのですから,このような法制度については慎重に検討しないと,やけどを負いかねないことになるでしょう。
河村たかし議員はなぜ起たないのか ― 2008年09月06日
自民党が総裁選挙に入り,民主党がかすんでいるという。 代表選挙をやらないのが原因と言われているらしい。
今こそ,河村たかし議員が起つべき時ではないのか。 民主党国会議員も,党の危機故やむなしとして,推薦議員に名を連ねるべきであろう。
少なくとも野田佳彦議員よりは,テレビに出たときの受けはいいのではないか。 実際に当選するかどうかはとにかく,あの人のアピールは強烈な印象を残すのではないか。
私自身,民主党に期待するところのほとんどない部外者であるが,(予想される自民党次期総裁より)よりまし(どのていどマシかは措く。)政権として,次期衆議院総選挙における与野党逆転を望んでいるので,民主党がじり貧になった結果政権交代は起こらず,福田政権よりもタカ派の政権(と予測されるもの)が続くという事態を避けるためにも,民主党に注目を集める手段が必要ではないかと思う。 (ただ,民主党所属議員の中にも獅子心中の虫がけっこういそうなので,上記のように一概には言えないかもしれないが。)
新司法試験合格者数~「ペースダウン」したと誇れるのか? ― 2008年09月11日
政治的なにおいのする数字ですね。
新司法試験:合格率33%に低下…合格者ゼロも3校に(毎日.jp)
法務省の司法試験委員会は11日、法科大学院の修了者を対象とした3回目の新司法試験の合格者を発表した。合格者数は2065人(男性1501人、女性564人)。合格率は33.0%で初めて3割台に落ち込んだ。委員会が今年の目安とした2100~2500人を下回り、合格者ゼロも3校に上った。また、新司法試験の受験資格は「法科大学院修了から5年で3回」と制限されており、172人が初めて受験資格を失った。
何か,昨年並みとか,昨年より減らすといったことはできないけれども,日弁連の顔を立てて従前の予定の枠よりはちょっと減らすか,といった政治的配慮でも働いたかのような数のように思います。
日弁連執行部は,従前から目安とされていた人数の下限を下回ったから「ペースダウン」を提言したのが効を奏したと言うのでしょうね・・・。でも,合格者の数自体は昨年より200人余り増えていますし,予定された人数の下限より約30~40人減というのを毎年加重していったとしても,2010年の合格者数は2880~2920人ということになり,やはり激増なのではないかと言わざるを得ません。
今回の合格者数については,予定数の下限より35名の減少が意味のあるペースダウンと言えるか,このようなペースダウンにとどまらず合格者数の削減まで踏み込むべきではなかったかという疑問はあります。これが,仮にペースダウンとして評価できるとしても,日弁連としては,会長の任期中に本格的提言について検討するなどといった悠長なことではなく,ペースダウンにとどまらない,合格者数の削減といった方向に舵を向けるべきような行動に移るべきように思います。
カテゴリ追加しました ― 2008年09月14日
新たにカテゴリとして「弁護士激増」と「法曹養成制度」を設け,既存の記事のうち関連するものを当該カテゴリに入れました。
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