司法修習二回試験不合格者数と激増問題2008年09月02日

どう考えればよいのでしょうか?

司法修習生卒業試験、5・1%の33人が不合格…最高裁(YOMIURI ONLINE)

最高裁は1日、司法修習生が法曹資格を得るための卒業試験の結果を発表した。

受験した修習生642人のうち、不合格は5・1%に当たる33人だった。不合格者は11月に実施される試験に合格すれば、法曹資格を得られる。

現在の司法修習は、旧司法試験に合格した「旧試験組」と、法科大学院(ロースクール)を修了した後に新司法試験に合格した「新試験組」に分かれて実施されているが、今回の修習生は旧試験組。昨年の不合格は、旧試験組が修習生1468人のうち71人(4・8%)、新試験組は1055人のうち76人(7・2%)だった。

司法修習生:33人「卒業」できず 06年旧試験合格者ら(毎日.jp)

司法修習卒業試験、33人が不合格 最高裁発表(NIKKEI NET)

 最高裁は1日、司法修習を終えた642人の修習生を対象に卒業試験を実施し、33人(約5.1%)が不合格になったと発表した。

今回受験したのは2006年の旧司法試験に合格した569人のほか、過去の卒業試験で不合格となった73人の再受験者。再受験者に限ると、13人(約17.8%)が不合格だった。

現行60期に比べて不合格率が増加したということだけ見ると,合格者数を減らしても質は上がらないじゃないか,ということになりそうです。

しかし,今回二回試験を受けた人には,現行61期の人のみならず,昨年の60期(またはそれ以前)の司法修習を受けた人も含まれています。

この再チャレンジをした人の人数については日経の記事でしかふれられていませんが,73人が受けて,不合格者数は13人ということのようです。

したがって,現行61期の司法修習を受けた人の不合格者数は20人で,受験者569人中の不合格者の率は 20÷569×100=約3.5(%) ということになります。

昨年の現行60期向け二回試験の,受験者数や不合格者数中の再受験者の数は分かりませんが,仮に現行59期向け二回試験の不合格者16人が全員再受験し,その不合格率も今年同様だったと考えると,  16人×(13÷73)=約2.8 ですから,2~3人が再チャレンジでも不合格だったという推計になります。

そうすると,現行60期についての,1回目の二回試験での不合格率は  (71-2.8)÷(1468-16)×100=4.69% ということになりますから,現行61期の不合格率は現行60期よりも低いということになりますね。

 合格者数が減った結果,修習生間のバラつきが減ったとみることができるのではないでしょうか。

 ただ,20人という不合格者数は,従前の合格者500名時代はもとより,合格者数700~1000名の時の留保者・不合格者の数に比べてもかなり多いものです。修習生数が当時とさほど変わらないか,比べる時代によってはむしろ減少しているにもかかわらず不合格者数が増えているのは,修習短縮や,増員による司法修習の希薄化(黒猫さんのブログに詳しく触れられています。)の影響が大きいのではないかという気がします。

それにしても,読売や毎日の記事だけ見ると,昨年よりも人数は減ったのに不合格者の率は増えているかのように見え,増員と「質」の間に関連性はない,したがって増員を改める必要はないかのように議論を誘導しようとしているかのように見えるのは穿ちすぎでしょうか?

抽選による航空券の提供~景品につられて購入した人への処置は?2008年09月02日

航空会社と景品表示法って縁が薄くないもののはずですが・・・。

全日空、景品高すぎ法令上限超す 「値下げ」し当選者増(asahi.com)

全日空(ANA)は2日、往復航空券がもらえる今夏のキャンペーンで、景品が景品表示法の上限(10万円)を超える可能性があったとして、内容を変更すると発表した。同社は「認識不足だった。申し訳ない」と謝罪。すでに応募している約33万人には、メールなどで理解を求める。

問題となったのは、「夏の旅行インターネット予約・購入キャンペーン」。期間中(6月9日~9月30日)に、ネットを通じて予約・搭乗した同社マイレージクラブの会員を対象に、10月に抽選して国内・国際線で各5組10人に、希望する場所への往復航空券をプレゼントする内容だった。

ところが、路線や座席のクラスを限定しなかったため、たとえば当選者が成田―ロンドンのファーストクラス往復を希望した場合、金額は約200万円になることが、外部からの匿名の指摘でわかった。このため同社は「抽選で120人に10万円分のANA旅行券プレゼント」に改めることにした。

景品類の提供が制限されるのって,過大な景品でお客をつることが,本来商品・サービス自体の品質や価格でもって行うべき公正な競争を阻害するからです。いったん過大な景品類の提供を提示してお客を集めること自体,他の事業者との間の競争に影響を与える行為であり,いったんお客を集めてしまうことをした以上,景品類の提供を取りやめたからといって違法な状態(公正な競争を妨げた状態)が改まるわけではありません。

しかも,景品類の提供は,それが抽選によるものであれ,取引条件の1つですから,実際には提供することのできない景品をあたかも提供するかのように表示してお客を集めること自体,実際の取引条件よりも有利にみせかけるものであり,不当表示ともうけとられかねないものです。

この点は以前,弁護士広告と景品表示法でも述べたところです。

ところで全日空は,「すでに応募している約33万人には、メールなどで理解を求める。 」としていますが,そのようなことで済むのでしょうか。仮に今回の全日空の広告に惹かれて,ロンドン往復のファーストクラスの往復航空券のチケットが当たる可能性があると思って応募した人がいた場合,その人は取引条件について,全日空の広告により錯誤に陥らされたことになります。応募者は詐欺ないし錯誤を理由として契約を取り消し,又は無効が主張できるというべきでしょう。

ところで航空会社については,マイレージサービス導入時に,マイルをためることで取得できる航空券の額が景品表示法の景品額の上限(当時は5万円)を超えるかどうかが問題になったという歴史があります。

マイレージサービスについては,国際的に行われている中で日本の利用者だけが利用できないのはおかしいということで摘発が見送られました。さらに,この問題をきっかけとして,景品表示法上の景品類の解釈が変更され,マイレージサービスで提供される航空券は景品に当たらないことになりました。しかし,今回のように抽選で提供する場合については,航空券は依然として景品類に当たることとなります。

マイレージサービスが合法と認められた歴史を引き継いでいれば,マイレージサービスが景品表示法上合法か否か疑義のあるものであったこと,国際競争のもと各社が行っていることゆえ合法化されたことが分かるのであって,今回のような抽選によるサービスまで合法化されるものではないことがすぐにわかったのではないでしょうか。

商品・サービスの購入を条件とする,抽選による景品類の提供については,米国,欧州とも全面禁止といってもよい状況にあり,日本のように一定範囲で認めているのは,いわゆる先進国では例外に属します。全日空も国際線を持ち,国際競争にその身をさらしているのですから,このような法制度については慎重に検討しないと,やけどを負いかねないことになるでしょう。

問題とされるべきは法曹養成のプロセスではなくその成果だそうです2008年09月04日

日弁連が,法科大学院教育の到達目標についての提言を出しましたね(提言本文はこちら(PDF))。

これ,タイトルこそ「法科大学院教育の到達目標」となっていますが,中身を見ると,その実は,「法科大学院修了時に学生が最低限修得しておくべき共通の到達目標(以下,単に「到達目標」という。)」というものです。

しかも,その到達目標については,

教育の結果を問題にするものであり,その達成過程を問題とするものではない。したがって,カリキュラム編成や個々の授業内容・具体的な授業の実施方法等は,各法科大学院及び個々の教員の裁量(創意工夫)に委ねられる。

ということになっています。

「達成過程を問題とするものではない」,つまり,どんなプロセスを経てもよいから,到達目標に達するようにさせるべき,ということです。

それならば,法科大学院というプロセスを経なくても,到達目標に達した学生については司法試験の受験資格を与えてしかるべきなのではないでしょうか。

新司法試験については,法科大学院の修了又は司法試験予備試験の合格が受験資格とされています。

司法試験予備試験の合格者数を徒に絞り込む理由はなくなったのではないでしょうか。

河村たかし議員はなぜ起たないのか2008年09月06日

自民党が総裁選挙に入り,民主党がかすんでいるという。 代表選挙をやらないのが原因と言われているらしい。

今こそ,河村たかし議員が起つべき時ではないのか。 民主党国会議員も,党の危機故やむなしとして,推薦議員に名を連ねるべきであろう。

少なくとも野田佳彦議員よりは,テレビに出たときの受けはいいのではないか。 実際に当選するかどうかはとにかく,あの人のアピールは強烈な印象を残すのではないか。

私自身,民主党に期待するところのほとんどない部外者であるが,(予想される自民党次期総裁より)よりまし(どのていどマシかは措く。)政権として,次期衆議院総選挙における与野党逆転を望んでいるので,民主党がじり貧になった結果政権交代は起こらず,福田政権よりもタカ派の政権(と予測されるもの)が続くという事態を避けるためにも,民主党に注目を集める手段が必要ではないかと思う。 (ただ,民主党所属議員の中にも獅子心中の虫がけっこういそうなので,上記のように一概には言えないかもしれないが。)

新司法試験合格者数~「ペースダウン」したと誇れるのか?2008年09月11日

政治的なにおいのする数字ですね。

新司法試験:合格率33%に低下…合格者ゼロも3校に(毎日.jp)

法務省の司法試験委員会は11日、法科大学院の修了者を対象とした3回目の新司法試験の合格者を発表した。合格者数は2065人(男性1501人、女性564人)。合格率は33.0%で初めて3割台に落ち込んだ。委員会が今年の目安とした2100~2500人を下回り、合格者ゼロも3校に上った。また、新司法試験の受験資格は「法科大学院修了から5年で3回」と制限されており、172人が初めて受験資格を失った。

何か,昨年並みとか,昨年より減らすといったことはできないけれども,日弁連の顔を立てて従前の予定の枠よりはちょっと減らすか,といった政治的配慮でも働いたかのような数のように思います。

日弁連執行部は,従前から目安とされていた人数の下限を下回ったから「ペースダウン」を提言したのが効を奏したと言うのでしょうね・・・。でも,合格者の数自体は昨年より200人余り増えていますし,予定された人数の下限より約30~40人減というのを毎年加重していったとしても,2010年の合格者数は2880~2920人ということになり,やはり激増なのではないかと言わざるを得ません。

今回の合格者数については,予定数の下限より35名の減少が意味のあるペースダウンと言えるか,このようなペースダウンにとどまらず合格者数の削減まで踏み込むべきではなかったかという疑問はあります。これが,仮にペースダウンとして評価できるとしても,日弁連としては,会長の任期中に本格的提言について検討するなどといった悠長なことではなく,ペースダウンにとどまらない,合格者数の削減といった方向に舵を向けるべきような行動に移るべきように思います。

カテゴリ追加しました2008年09月14日

新たにカテゴリとして「弁護士激増」と「法曹養成制度」を設け,既存の記事のうち関連するものを当該カテゴリに入れました。

新法曹養成制度~誰をどう「救済」すべきか?2008年09月14日

先日,某出版社の人から電話があり,弁護士激増による就職難について話を聞きたいとの申入れを受けました。どうやら,弁護士激増反対パンフを読んで,電話をかけてきたようです。

私自身は53期で,最近の就職事情の厳しさについてそれほど詳しくはない(パンフでも,私自身の時の就職事情についてしか話をしていない。)と言って取材は断ったのですが,その際,相手方から,新60期の人のできはどうか,低下しているのかという質問を受けました。それに対してどう答えたかって?きっぱりと否定しましたよ。総体としてどうこういうことはできないし,私自身が接した範囲の人はよくできる人だ,って。

相手方からはさらに「司法改革」全般についての問題点について聞かれたので,司法改革での一番の問題点は,法科大学院などというところに行かなければ司法試験を受けることも原則としてできないっていうのは,いままでの一念発起,人生巻き返し型の受験ができなくなるという点だという旨のことを述べました。

ところで新司法試験合格者数~「ペースダウン」したと誇れるのか?という記事に対し,合格者さんから,

しかし、これを見た受験生はどのような気持ちになるでしょうか? 

数年前まで受験生であった者として、彼らの気持ちは察するに余りあります。 

私も、個人的な見解はありますが、受験勉強を続ける友人や後輩もいる中、とても「削減すべきだ」などとは公には言えません。

というコメントをいただきました。

受験生にとっては確かに,その後のことは何とかするから受からせてくれ!という気持ちはあるのかもしれません。

ただそれを満たす方法は合格者増でなければならないのか,各年度の合格者数は少なくても頑張って受け続けることができる制度に戻すということではいけないのか,という疑問があります。

私自身,「司法改革」のうち最悪の制度が新法曹養成制度だと思っていることもあって,受験生も気の毒ではあるが,他にもっと気の毒な人もいるだろ!という気持ちが抜けないんですよね。誰かって?諸事情により法科大学院に行くことができないために,司法試験を受験できない人たちです。

以下,参考までに,私が以前,所属する弁護士会の選挙の政策パンフに書いた文章の抜粋を再掲載します。

後生に恨まれない法曹養成制度を(2002年12月作成)

先の臨時国会で,法科大学院修了又は司法試験予備試験合格を司法試験受験資格とするという新司法試験法が成立しました。一方二弁でも,昨年の常議員会において,学校法人佐藤栄学園の埼玉県大宮への法科大学院設立に当たって同学園と提携するとの基本協定を締結することが議決されました。

法科大学院修了のためには2,3年間にわたる時間的拘束のほか,年間200万ないし300万円の学費とその間の生活費の支出が必要です。これでは,社会人特に被扶養家族を持つ人が法曹資格の取得を志すことは事実上不可能です。加えて,法科大学院には,文部科学省が認証権限を有する「第三者評価機関」を通じて,官僚による間接的統制が及ぼされます。結果として,大学を卒業してストレートで法科大学院に入り,2,3年間のスクリーニングを経たという,同じような経歴の者で法曹界はあふれ,法曹は画一化することは必至です。

大宮法科大学院への協力も問題です。二弁の人員を割くのですから,費用負担は行わないというのはまやかしです。また,弁護士会が支援という形ではあれ特定の学校の運営に関与するのは,本来は総会の決議,会則の変更を経るべき重大事項です。しかし,協力決定に至るプロセスは,法科大学院設立というバスに乗り遅れまいという拙速さばかりが目立ち,十分な手続,議論に欠けています。

私たちが後生の法曹志望者ほか市民に対してなすべきなのは,法科大学院という成果の分からないプロセスに手間と金をかけ,法科大学院教員という新たな業務分野の拡大を図ることではなく,多様な経歴を持つ人々の中から志あるものが心おきなく法曹資格取得に挑戦できる仕組みを確保し,それによって多様な分野での多様な内容のサービスが市民に提供されるようにすることです。(後略)

将来の法曹を法科大学院の闇と軛から解き放とう(2003年12月作成)

 法科大学院については,2003年11月27日に66校についての認可と4校についての不認可,2校についての認可保留という設置認可の過程の中で,設置認可基準がなかなか明らかにされなかった,予備校との関係という本来の教育内容と無関係の点が問題とされて不認可となるなど,文部科学省による恣意的介入のおそれが早くも現実化しています。

弁護士会執行部は不明瞭な審議過程を批判していますが,一方,自らの関与した大宮法科大学院については,その認可申請に当たっての文部科学省との間の議論の内容を明らかにしていません。

また,修了のために2,3年間にわたる時間的拘束のほか,年間200万ないし300万円の学費とその間の生活費の支出が必要であるという問題点は解決していません。社会人特に被扶養家族を持つ人が法曹資格の取得を志すことは事実上不可能なままです。

大宮法科大学院大学については,授業料だけで年間200万円が必要になることも明らかになりました。給付される奨学金についても,授業料の大幅な減額を受けられるのは定員100名のうち15名にすぎず,大多数の学生は学費だけで3年間600万円の支出を余儀なくされます。

また,教育ローンの利子補給について「二弁会員を中心として行う募金活動を通じて集められた寄付によって基金を作り、負担します。」とされ,基金が集まらなかった場合の責任が二弁にあるかのような記載となっている点は問題です。募金の依頼なども弁護士会の資金で行うべき筋ではありません。

法科大学院については,法曹となる途を制度的に極端に狭める点で,制度に根本的誤りがあります。この制度の欠陥を補填する司法試験予備試験制度が真に開放的なものであるよう,また,誰にでも開かれた司法試験という現行試験の美点を残すものとして機能するよう,その枠の確保と試験制度の改変を働きかけ,将来的には法科大学院修了を試験資格としない方向への改変を目指すべきです。

大宮法科大学院大学に対する支援については,取りやめる方向での抜本的な見直しが必要です。佐藤栄学園に対しては協定の厳正な遵守を求め,費用についても弁護士会が余計な負担を負わないように働きかけるべきです。

まだ実績も何もない法科大学院というプロセスを,自分たちが経験していないにもかかわらず良いものであるとして押しつける,それは傲慢と理不尽でしかありません。法曹となるための自由で開かれた道を確保する,それが後生に対する私たちの責任ではないでしょうか。(後略)

法科大学院の「枠」にとらわれない法曹養成制度を

法科大学院については、既習者コースの卒業者が受験する2006年度の合格者数について現行試験800名、新司法試験800名という素案が法務省から司法試験委員会に示されたという新聞報道をきっかけに、その制度的混迷が誰の目にも明らかになりました。

二弁は会長声明を出して前記素案を批判しましたが、新司法試験が前提とする「法科大学院における教育内容」が現在法科大学院で現実に行われている教育内容でよいのかどうかは何らふれていません。法科大学院の教育内容についての検証が何ら行われていない段階でその卒業者のみの合格枠=特権拡大を求める議論は乱暴です。成果も不明確な新制度を既存の制度よりも良いものであるはずと決めつける論法はまさしく詭弁です。

現行の司法試験について移行措置であることを強調し、法務省素案の合格者数が多すぎると暗に批判している点も疑問です。得体の知れない法科大学院に費用と時間をかけて通うのをためらうのは自然であり、他のルートで法科大学院修了者と同等の「知識、思考力、分析力、表現力」を身につけることを志す途が制約されるのは不当です。

法科大学院では入学者数に比べ卒業者数が絞られることを強調する人もいます。しかし、どの程度の法科大学院が学生募集に際して「厳格な成績評価・単位認定」をスローガンとして打ち出したのでしょうか。また、大学院側に厳格な成績評価・単位認定を行うだけの資質は備わっているのでしょうか。法科大学院というシステムだけで法曹志望者の選別を行えるというのは傲慢です。

新司法試験では受験資格取得後5年間以内に3回という受験回数の制限が設けられています。この受験回数制限に示されるように、新たな法曹養成制度は、法曹志望者を自分たちが関与した「法科大学院」を卒業した「短期合格者」へと選別排除していくものです。そこには制度の枠外に放り出された現行試験受験生、法科大学院中退者、受験資格を喪失した法科大学院卒業生・予備試験合格者への配慮は感じられません。(後略)

私は,弁護士人口激増によってとんでもない事態が弁護士業界に巻き起こると思っていますし,私自身それに巻き込まれる可能性は十分にあると思っていますから,弁護士激増に反対ですが,仮に激増が生じたとしても,法曹資格取得の入り口が広く開かれていれば,激増後の荒野の中から立ち上がってくる人が出てくるかもしれません。でも,法科大学院に行く手間と金を司法試験受験に当たって必要とする制度(さらに今後は,司法修習の際に借りたお金を返すという負担が加わります。)は,そのような人が出てくる余地を極めて狭めてしまう もので(私は,「プロセスによる法曹統制」と呼んでいます。),弁護士業界にとっても,市民にとっても不利益となると思います。なお,この問題は,奨学金制度の充実などによって解決できる問題ではありません(詳しくはこちら週刊金曜日の拙文をご覧ください。)。

新法曹養成制度については,現に目の前に現れてくる新司法試験受験者や法科大学院生だけではなく,その背後に隠された法曹志望者に対しどう途を開くかといった観点から見直されるべきように思います。とりあえずは予備試験の合格者数について,「三振者」以外の人も合格できるように,相当程度の数を確保することが必要ではないでしょうか。また,新司法試験の「三振者」については,受験回数制限の適用を猶予する臨時措置法でも作って救済するようにすべきと思います。