深夜3時の公園で全裸になることの可罰性は?2009年04月23日

タレントが,深夜に公園で全裸になって声を上げていたということで,公然わいせつの被疑事実で逮捕されましたね。

記事によれば警察に通報があったのは午前2時55分との由。草木も眠る丑三つ時,からはちょっとずれていますが,深夜であることは変わりありません。

公然わいせつ罪というのは,公衆の性的羞恥心を害する罪であり,不特定又は多数人がわいせつ行為を認識する可能性があれば成立するとされていますが,ちょっとでも可能性があれば成立するものではありません。刑罰の対象となる行為と言えるためにはそれなりの可能性が必要で,「例えば,人が通行する可能性もほとんどない浜辺や早朝の道路・公園等で全裸になる行為は本罪に該当しないと解すべきだろう」(前田雅英・刑法各論講義(初版)483頁)とされています。

逮捕現場の公園をグーグルマップで検索した結果はこちらです。ミッドタウンに隣接と記事には出ているけど,結構大きな公園です。公園内のどこにいたかによっても,公衆の性的羞恥心を害する可能性の程度はだいぶ違ったものになるのではないでしょうか(この辺りは六本木に居住ないし職場を構えられている方にお聞きしたいものです。)。さらに,youtubeで流されていたテレビ報道によれば,現場は深夜は人通りのほとんどないところであり,しかも当該タレントは,警官がかけつけた時は芝生の上であぐらをくんでいたというのです。そうすると,公衆の性的羞恥心を害する可能性の程度はかなり低いもので,上記の引用のように,「本罪(公然わいせつ罪)に該当しない」とされる可能性も否定できないような気もします。そうだとすると,当該タレントが言ったと報道されている「裸になって何が悪い」というのも,まんざらおかしくはないのではないでしょうか。

加えて,記事によれば男性からの通報も「酔っぱらいが騒いでいる」というものであり,裸だから何とかしてくれというものではなかったようですから,公然わいせつ罪として逮捕するほどの違法性があるものだったかどうか疑問が残ります。

まあ,公然わいせつ罪が厳密には成立しないとしても,人質司法の現状を考えた場合,全裸でいたことが事実であるならば,形式的に有罪とされてしまう可能性もあるので,反省の意を示して釈放してもらう方向で動くのが「賢明」なのかも知れません。しかし,マスメディアが,全裸でいたことが即犯罪を構成するかのように大々的に騒ぐのってどうかと思います。

リンク

弁護士落合洋司の「日々是好日」

情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)

コメント

_ h ― 2009年04月24日 12時07分50秒

しかも,まるで殺人か放火でもやったかのごとき大騒ぎ。
「地デジごり押し」の妨げになったので苛立つのは判りますが,たかが鳩山ふぜいに「最低」などと言われる筋合いはないと思いますがね。

_ ノムラ ― 2009年04月25日 18時40分18秒

>hさん
「地デジごり押し」の方が現実に不特定多数の人の利益を害するものである点で悪質のような気がします。

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。

名前:
メールアドレス:
URL:
次の質問に答えてください:
三権分立といった場合の三権とは,立法,行政と何?(答:司法)

コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://nomura.asablo.jp/blog/2009/04/23/4261750/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。