日弁連会長選挙は再投票に2012年02月14日

日弁連会長選挙,4人が立候補していましたが,宇都宮氏と山岸氏の間で再投票を行うことになりましたね。

今回は4年振りに候補者の名前を書いて投票しましたが,再投票は2年前と同様になりそうです。

しかし今回の選挙,東弁も二弁も保守から共産系まで派閥による支持が出そろいましたね~。

前回の選挙で宇都宮氏支持を明示して強力にプッシュしていた弁護士が,今回は沈黙をしているのもこのような状況を受けてのことなんでしょうね。

山岸氏と尾崎氏を比べて前者が保守,後者が左翼という評もありましたが,上記のような派閥支持状況からみて,それは当たっていないというか,保守派取り込みのための山岸氏支持者の「ステマ」であるような気がします。

再投票について,森川氏の票は宇都宮氏に行くという読みがあるようなんですが,どうなんでしょうかね。森川氏と宇都宮氏の路線の違いは明白ですし,その点は宇都宮氏を前回強力に支持した弁護士も明言していますから,森川氏への投票者が易々と宇都宮氏に流れるとは思えません。まあ山岸氏にもいかないでしょうが。

尾崎氏と山岸氏との関係もどうなんでしょうかね。「野合」するという噂も耳にしましたが,ホントにすんなりと成立するんでしょうか。

とにかく今回の再投票,私にとっては選択肢のないものなので,できれば再選挙になってまた選択肢ができないものかと思います。

日弁連会長選挙公聴会に行ってきた2012年02月14日

※選挙後になってしまいましたが,折角書いておいたものなので挙げておきます。

日弁連会長選挙の,高松と那覇で行われた公聴会に行ってきました。

高松へは前日の夜の「サンライズ瀬戸」で現地入り。

寝台列車に乗るのは1999年以来ですから,13年振りですね。

日本の寝台列車ということになると,1991年秋以来なので,21年振りとなります。ちなみに当時乗ったのは東京から米子までの出雲号でした。

高松の公聴会は,宇都宮候補は公務で欠席。推薦演説が20分ありました。

この推薦演説,前半は宇都宮候補の実績を語るものでしたが,後半は法科大学院が廃止されるべきものであることなどを強調し,政策的にはまるで森川候補の支持演説かのよう。ちなみに宇都宮候補は他所の公聴会では,法科大学院については法学部と並立させたことがまずかったと言っているようです。

裁判員制度についての質問に対して尾崎候補,被告人が有罪であるか,有罪での場合どのような量刑が適当かを考えるのは,社会を構成する人の一つの権利であり義務である,日本社会を構成していく上では必要だからということで、協力してほしい,と述べました。この論理からいけば,国を守るためには必要だからと言うことで,兵役にも協力してほしいということにもなるのでは?

山岸候補は業務拡大を言いながら,具体策も「アウトリーチ」とか遵法支援員とか,採算性,実現性に疑問のあることばかり。そういえば,ひまわり基金の弁護士だったか即独した人だったかの話として,赴任地の税理士事務所に飛び込みで営業していたというのを賞賛するかのような言い方をしていました(これは沖縄だったかな?)。

質疑応答の時間で,60期代の弁護士4名の連名で,法科大学院は廃止すべき,教員は司法試験合格者に限るべき,といった意見についてどう思うかという質問がありました。廃止の理由も,経済的に余裕のある人しか法曹になれない,法曹を目指して特に学者教員は文部科学省の方ばかり向いているヒラメ教員であるといったもので,この問題意識には,法科大学院廃止を唱える森川候補以外は答えられない感がありありとうかがえました。

沖縄での公聴会も宇都宮候補は欠席。推薦人は50期代。言っていることからみるとどう見ても森川候補支持では?(何でもたたかってばかりではいけない,と言って森川候補不支持の理由としていましたが)と思えるものでした。

震災・原発事故を契機とする緊急事態条項制定の動きについて尾崎候補,そのような動きはないと認識という発言。人権問題の解決をうたう割には人権感覚がどうなのか。

最終演説では山岸候補が,宇都宮候補批判とおぼしき議論を思いっきり展開してました。法務省,最高裁などとの関係が,緊張関係ということではなくなってしまっている,ということが,外の世界から問題になっている。最低限の対話は成り立つようにしなければならない。官の関係に立ち入って実現させていく。それが,信頼関係が壊れ,不信関係になった時には難しい,と。

しかしまあ宇都宮会長の路線を対決路線と評すること自体センスを疑いますし(お願い路線というべきように思います。),協調を強調すること自体問題と言わざるをえません。政府はこの期に及んでも司法改革推進路線を変えていないのですから,協調を唱えていては変更は望めないでしょう(これは司法改革の維持推進を唱えている宇都宮,尾崎候補共に言えることですが)。

弁護士,弁護士会,弁護士会費2011年12月20日

司法試験合格者数の激増等による就職難,弁護士収入の減少により,弁護士会費が高すぎるということを問題視する声が目立つようになりました。

私の属する弁護士会は,全国の中でも会費はかなり安い方ですが,それでも日弁連会費を併せて月額約4万円が取られています。

正直言って多いとはいい難い収入の中からこの会費を納めるのは結構きついものがあります。司法試験合格者数を仮に毎年1000名としても今後の弁護士数が増えていく一方,弁護士の平均収入は下降が予想されるという状況の中,今の弁護士会費を維持する必要が本当にあるのか?というのは問われていいように思います。

ただ,更に進んで,委員会活動など弁護士会の各種人権活動を抑制すべきか?と言われたら,個人的には否です。弁護士会でなければできない活動などあると思うので。

また,強制加入を止めて任意加入にすることについても,やはり否ですね。役所の監督下に置かれるなんてまっぴらです。

(もっとも,「司法改革」を推進してきた日弁連を見ていると,個々の弁護士が鵜飼いの鵜,日弁連が鵜匠,裁判所・政財界が料理をいただくお客さんという感じで,日弁連執行部は自分たちのエエカッコシイのために弁護士の公益活動義務化や激増といった負担を課して,権力者とつるんでいる存在にしかみえないんですけどね。それでも役所の監視下に置かれるのよりは数段よいと思います。)。

こうした問題が顕在化してきたのは,弁護士が弁護士人口激増により経済的余裕をなくしてきたことにあるんですよね。みんな会費が払える弁護士業界を,すぐには無理でもどう復権させるか(その場合の会費は今と同じとはいかないでしょうが),それが今度の日弁連会長選挙で問われるべき問題のように思います。

「参加」というワナ2011年12月19日

来年2月に行われる日弁連会長選挙ですが,4氏が立候補を予定しているようですね。立候補予定者(敬称略)と選出母体は次のとおりです。

森川文人(43期,第二東京) 憲法と人権の日弁連をめざす会(めざす会)

尾崎純理(25期,第二東京) 新しい日本と司法を興す~2012弁護士の会(興す会)

山岸憲司(25期,東京) 弁護士未来セッション(セッション)

宇都宮健児(22期,東京) 第2期・市民のための司法と日弁連をつくる会(つくる会)

弁護士激増,新法曹養成制度(法科大学院),裁判員制度導入を謳った「司法改革」については,めざす会は反対ですが,他の3団体は是とする立場です。この点「興す会」「セッション」の立場は明確ですが,「つくる会」も「第2次司法改革」などと述べ,「司法改革」を否定していない点には留意が必要でしょう。

ところで,毎日新聞の記事によれば,日弁連の法曹人口政策会議は,「合格者をまず1500人程度にまで減員し、さらなる減員は法曹養成制度の成熟度などを検証しつつ対処すべきだ」という内容の提言案をまとめたとのことです。この点については,政策会議の中では1000人にすべきという意見も多くあったようですが,1000人という数値の主文中への明示は見送られたとのことです。

しかし,今年の,修習生の弁護士一斉登録の段階で,約400人の未登録者が出てくるという就職難の状況を踏まえると,現状の2000人はもちろん,1500人でも多すぎると言わざるをません。合格者数1000人でも今後弁護士数は増加していくのであり,昨今の経済不況が改善する見込みの薄いことを考え合わせると,いったん合格者輩出停止措置でもとったほうがいいのではないかというくらいの状況です。

そうした中で「まず1500人」というのは,何をのんきなことを,と言われても仕方がないものと言わざるを得ないでしょう。

ところで,この会議は,宇都宮日弁連会長が議長となっています。そうだとすると,このような提言案について批判する以上は,当該政策会議の執行部を批判することは避けられないのではないでしょうか。

この点に関しては,宇都宮会長体制になってから,人口問題政策会議が開かれ,従前「司法改革」に批判的だった人たちが委員として発言できるようになったことを評価する向きもあるようです。

確かに,委員として発言権を持つようになったことは,従前とは変わった点ではあります。

でも,その結果としての提言案がどのようなものであるかを考えた場合に,そのとりまとめに責任を負うべき議長を批判しないことは,無理があると言わざるを得ないのではないでしょうか。

私は昔,国の審議会の庶務をやっていたことがありますが,委員の選任は部署内でよく検討しましたし,サブ(Substance=内容)担当の人がペーパー作成や根回しに使う労力はすごいものがありました。こうした状況をわきまえずに,権力側の作った機構に,自分らの意見を反映できると乗り込み,いったん乗り込んだ以上はつきあわざるをえないと,ずるずると取り込まれていった(むしろ嬉々として協力していたという話もありますが・・)のが,司法制度改革審議会への日弁連の加担だったのではないでしょうか。今回の日弁連人口問題政策会議の提言案を批判しつつ,宇都宮会長は評価するということについては,失礼ながら,司法制度改革審議会に対する日弁連の対応に似たものを感じてしまいます。

裁判員制度についても言えることですが,「参加できる」ということは,それだけで何か自分が何か特権を得たかのような感覚を参加者にもたらします。しかし人を選んで参加してもらうということは,参加者を選ぶ側,参加制度を作る側にも何らかの狙いがあるはずで,参加する側と参加してもらう側との緊張関係を忘れて「参加」することに浮かれていると,とんでもない誤りをしてしまうのではないでしょうか。

弁護士はとかく自信をもっている人種だけに,尚更注意が必要なように思います。

司法試験予備試験,初年度の合格者116人。2011年11月10日

司法試験予備試験口述試験の合格者が発表されました。

コチラ

合格者の方,まずはおめでとうございます。来年度の本試験でよい結果を得られることを期待しています。

初年度の今年の合格者は116人。論文合格者123名のうち1名は口述試験を受けなかったようですね。口述試験の合格率は95%。予備試験の口述試験は法律実務基礎科目について行われるのですが(司法試験法5条4項),この科目で口述試験が行われるのは初めてなのに,受験生は健闘したものですね。

この予備試験,出願者が8971人,受験者が6477人という数でした。受験者に対する合格者数の割合は1.79%となります。たかが受験資格を得るだけのために1.79%という関門をくぐらなければならないとは,不合理極まりないように思います。

法務省のサイトには,参考情報として,興味深いデータが出ています。参考情報というのは,データが出願者の自己申告によるものだからでしょう。

まず男女比については,男性103人,女性13人。女性の割合は11%にしかすぎません。新司法試験の合格者においては,女性の割合は2割を超えていましたから,男性優位ですね。受験者に対する合格者の割合でも,男性が約53人に1人であるのに対し,女性は約79人に1人になっています。

年齢別合格者数(5歳区切り)を見ると,20~24歳が40人と最も多くなっています。25~29歳は8人と激減,30~34歳が33人,35~39歳が16人となっています。20代後半は受験者数もその前後の年代に比べると少なめです。法科大学院に行った人が多いんでしょうかね。それにしても60歳以上の人が400人も受けているのには驚きです。

20~24歳の人たちが最多ということは,今後予備試験については,若くして法曹になれる最短コースとしての注目度が高まるということなのでしょうか。

職種別では大学生が40人と最多。無職32人がこれに続きます。有職者は35人。大学生は合格率も高いです。試験内容や合格者数が有職者の合格を遠ざけるものとなってしまったのではないかと思われます。

最終学歴別を見ると,法科大学院修了者が載っていました。法科大学院を修了した以上,予備試験は全員合格のはず・・と思って見ると,336人受験して19人合格。合格率は約5.7%です。修了者全員が合格するくらい予備試験の合格者数も増やすべきと考えると,  116÷0.057=2035 つまり2000人くらいは予備試験に合格させてもよいのではないか,という計算になります。

過去の司法試験の受験経験を見ると,最終合格者中80名が旧試験のみ受験したことがある者とのこと。予備試験が,法科大学院義務化によって法曹への途を閉ざされた者にとっての希望の途であることがうかがえる内容です。

司法試験については本来,法科大学院修了を受験資格から外すべきであると思いますが,それまでの間は予備試験の合格者を増やす形で,できるだけ多くの人が法曹資格取得へチャレンジする途を開いてほしいものだと思います。

連携法と法曹養成制度見直し2011年10月19日

先日,所属する弁護士会の常議員会で,会長から,法曹の養成に関するフォーラム(以下「フォーラム」といいます。)の状況についての報告がありました。

それによると,

8月に貸与制導入を決めて以後の会合が決まっていなかったが,次回期日が10月24日からと決まった。

同日の会議で今後の議論の進め方が議論される

とのことでした。

ところで,法曹養成に関しては,新司法試験と法科大学院教育の間について連携が取られるべきものと法律で定められています(「法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律」。以下「連携法」といいます。)。

この連携法には附則として,以下の定めが置かれています。

(施行期日)

第一条 この法律は、平成十五年四月一日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、それぞれ当該各号に定める日から施行する。

 一 第三条第三項から第五項まで及び第六条第二項第一号の規定 公布の日

 二 第五条第二項、第四項及び第五項並びに第六条第二項第三号の規定 平成十六年四月一日

 (検討)

第二条 政府は、この法律の施行後十年を経過した場合において、法科大学院における教育、司法試験及び司法修習生の修習の実施状況等を勘案し、法曹の養成に関する制度について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。

上記附則によれば,平成15年4月1日の法施行から10年後の平成25年4月1日以後には,法曹養成制度について検討が加えられることになります。あと1年半弱ですね。

しかし,10年経過後に1から議論というのでは遅すぎるので,今のうちから議論を重ねようとする場がフォーラム,という見方ができるでしょう。

連携法の附則の見直し条項については,特に見直しの内容について,制限を加えていません。したがって,連携法の基礎となっている,司法制度改革審議会の意見とも異なる方向での見直しも可能なはずです。

ただ,現在のフォーラムの議論状況を見ると,法曹養成制度が法科大学院を中核とするものであるべきという前提を見直そうという気運があるようにはみえないんですよね。まあこれは,フォーラムが「司法制度改革の理念を踏まえる」ことを前提に法曹の養成に関する制度の在り方について検討を行う場と位置づけられている(平成23年5月13日付内閣官房長官ほか申し合わせ(PDF))ことからすれば当然の帰結なのですが。

上記のようなフォーラムの問題点を考えると,フォーラムはいったん解散として,新たに白紙状態で法曹養成制度について検討する場を設けた方が,法曹養成制度を抜本的に見直すためにはいい(というか必須な)んでしょうね。

それにしても自民党政権下での閣議決定に,政権交代後の民主党政権がどこまで拘束されなければならないんでしょうかね・・・。

桐蔭横浜と大宮、法科大学院で初の統合~「勝ち組」向け法科大学院の終焉2011年08月09日

久保利英明氏以下の歴代二弁会長経験者はこの結果をどう総括してくれるのでしょうか。

日経記事

桐蔭横浜大学法科大学院と大宮法科大学院の統合について(大宮法科大学院と横浜桐蔭法科大学院の記者向け共同発表文)

桐蔭横浜大学法科大学院との統合について(大宮法科大学院学長の学生,修了生向け報告文)

私の属する第二東京弁護士会(二弁)は大宮法科大学院に関し,その経営母体である佐藤栄学園と提携しています。今回の「統合」ですが,「統合」とはいいながら共同発表文に

学校法人桐蔭学園の下で、新たに「桐蔭法科大学院」として運営していくことに合意しました

とあることから,佐藤栄学園が事業を譲渡して法科大学院の経営から撤退したと見るのが妥当でしょう。

二弁はこれを機に(できれば直ちに)法科大学院の運営への関与から手を引き,間違っても桐蔭学園との提携などしないでいただきたいものです。

しかし,大宮法科大学院の柏木俊彦学長(二弁の弁護士です。)の報告文ですが,

現在の法科大学院の状況を打破し、将来に向けて、法科大学院制度を定着、発展させるためには、理念と制度設計を共有する法科大学院の統合が最も適切な選択であると考えます。司法制度改革審議会の意見書の掲げる法曹像に共鳴し、大宮の修了生、在学生と私ども教職員とで熱く共に作り上げてきた本学は、その教育理念を持続的に発展させるべく、桐蔭横浜法科大学院との統合に踏み切りました。

って,依然として司法制度改革審議会意見書を是とする考え方を変えないのですね。「撤退」を「転進」と称した戦前の日本軍みたいで,見苦しいと言わざるを得ません。

また,

今後は本学と桐蔭横浜法科大学院とを連続した一体の法科大学院ととらえ、多様な法曹の養成という松明を、より明るく、より強く、より確かなものとするために引き続き努力していく所存です。

って,二弁に対し大宮大学院大学に対するのと同様の協力をと言っているようで,いやらしいことこの上ありません。まあ,大宮の運営陣や教員からしてみたら,統合に当たって少しでも有利な条件をひきだすために「手土産」として二弁の協力がほしいのかもしれませんが,新法曹養成制度自体に制度発足当初から一貫して反対してきた私としては,もうこれ以上の協力は御免被りたいと思います。

※大宮法科大学院関連過去記事

「勝ち組」向け法科大学院の現状から考える

新法曹養成制度~誰をどう「救済」すべきか?

「勝ち組」用であることを誇る法科大学院関係者が自己責任論を唱えているが・・・

法科大学院と司法試験~もう切断しかない