X JAPAN・TOSHIの会社などに賠償命令 啓発セミナーで2009年05月28日

2年前に第一審判決について触れた事件の控訴審判決が出ました。

http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090528/trl0905281539007-n1.htm

自己啓発セミナーに参加した栃木県の女性(41)が「マインドコントロール状態にされて金銭を支払わされた」として、主催者の「ホームオブハート」や人気ロックグループ「X JAPAN」のボーカル、出山利三氏(TOSHI)が経営する会社「トシオフィス」などを相手に、計約2100万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が28日、東京高裁であった。大谷禎男裁判長は、女性に財産を違法に提供させたことを認めた1審東京地裁判決を支持、1580万円の支払いを命じた。

判決によると、女性は平成14年にホームオブハート主催のセミナーに参加。「セミナーをやめると地獄のような人生になる」と脅されたり、「異常、バケモノ」と長時間にわたって罵(ば)倒(とう)されたりして判断力を失い、参加費などの名目で約1400万円を支払った。

ホームオブハートらからの控訴が棄却された反面,被害者からの附帯控訴については一部認められ,賠償金額が増額されています。

原告代理人山口弁護士のブログ

同じく代理人紀藤弁護士のブログ

被害者のサイト→ホームオブハートとToshi問題を考える会

「神世界」に1億6千万円請求 「霊感商法で被害」と17人2009年05月25日

http://www.47news.jp/CN/200905/CN2009052501000602.html

ヒーリングサロンを装った有限会社「神世界」(山梨)グループの霊感商法事件で、「がんは治らない」などと不安をあおられ、祈願代などの名目で現金を詐取されたとして、サロンに通っていた横浜市の会社役員(46)ら17人が25日、神世界と関連会社の幹部ら25人に総額約1億6800万円の賠償を求め、東京地裁に提訴した。

「神世界」グループの実態については,「ヒーリングサロンによる被害」のページに詳しく記されています。

今回提訴した被害者の代理人となった弁護団のサイトはこちらです。

神世界に対し第3次損害賠償請求2008年08月01日

霊感商法グループに5600万円請求(スポニチアネックス

「神世界」グループの霊感商法事件で、被害対策弁護団は1日、金をだまし取られたと訴える10都道府県の被害者19人が約5600万円を返還するよう神世界(山梨県甲斐市)に通知したと発表した。

今回が弁護団結成後3回目の請求になります。これまで合計77名の被害者が請求していますが,弁護団としては今後も被害者が集まれば,第4次,第5次と請求を行っていくとのことです。

詳しくは弁護団のサイトをご覧ください。神世界グループの活動実態については「ヒーリングサロンによる被害」に詳しく書かれています。

神世界被害対策弁護団のサイト2008年07月09日

標記サイトがアップされています。

神世界被害対策弁護団

弁護団ではこれまで2回にわたり,(有)神世界に対し損害賠償を求めています。(順次追加請求の予定です。)

詳しくは上記弁護団のページをごらんください。

参考:ヒーリングサロンによる被害

NTTの電話サービスと電凸2008年06月03日

電凸(この言葉に抵抗があるというのであれば,「問い合わせ」でもOK)について疑問に思うのは,電凸をする人って,自分の名前を名乗ってやっているのだろうか?ということだ。

人の家や仕事場を訪ねる際,名乗らずに訪れる人は(泥棒などを除けば)まずいない。電話も,相手に自分の素性を明かして使うべきものではないだろうか。

また,電話って,人の住まいや仕事場の平穏を乱す(少なくとも電話に出る手間と時間を取らせる)という点で,用法上の業務妨害機器ではないか。みだりに使われないようにするためには,電話を受けた人が,闖入者が誰かを知って応対することができるような仕組みになっている必要があるのではないか。

NTTは,ナンバーディスプレイサービスなどといって,架けてきた相手方の番号を表示するサービスで金を取っているが,これはおかしいと思う。無料で提供するのが当然ではないのだろうか。むしろ,ナンバーディスプレイができない電話機を使っている人用に,架けてきた相手方の電話番号を音声で知らせるサービスを提供すべきであるように思う。そのようなサービスがなければ,電話は使い方によっては危険な,設計上の欠陥を持った製品ないしサービスとして見られても仕方がないのではないだろうか。

製品事故の原因究明vs警察の捜査2008年02月05日

捜査っていっていつ戻ってくるかわからないんですよね・・・。

中国調査チーム、ギョーザ提供求めるTBSの動画ニュースサイト News i

中国産の冷凍ギョーザから殺虫剤が検出された事件で、来日中の中国政府の調査チームが日本側に対し、メタミドホスが入っていたギョーザの現物を提供するよう求めていたことがわかりました。

これは日本政府側が会議終了後に明らかにしたもので、中国の調査チームは日本側に対し、メタミドホスが検出されたギョーザの現物の提供を求めたということです。

これに対して、会議に参加していた警察庁の担当者は、「警察の捜査資料なので提供するには国際法上の手続きが必要」として、「持ち帰ることはできない」と説明したということです。

それ以外の回収中のギョーザについては、「企業のもので、政府の所有物ではない」と説明し、ギョーザの持ち帰りは実現しないことになりました。

会議では、日本側から中国側へのこれまでの事実経過についての情報提供に終始し、具体的な進展はありませんでした。

今回に限らず,警察って製造物による事故が起きると,捜査のためって言って持ち去ってしまって,なかなか所有者に返してくれないんですよね。

製造物責任法ができるときの議論でも,消費者団体や,実際に事故にあった人から,警察が物を持って行ってしまって民事訴訟の証拠として使えないという苦情があがっていました。

今回の中国の要請にまるまる応えることがよいのかどうかは別として,警察には,捜査に必要なのだからといつまでも製品を占有せずに,事故の被害者の損害賠償請求などのために便宜を図ってほしいものです。

中国製餃子事件と製造物責任法~欠陥の存在時期2008年02月03日

中国製餃子の問題,中国側から日本にまで調査団が乗り込んでくる事態になっていますね。

毒性を持つ農薬が入っていた餃子は,食品が通常持つべき安全性が無かったことは明らかですから,少なくとも被害者が食べた時点においては欠陥ある商品であることは明らかです。

欠陥商品による被害については,製造物責任法が製造者その他に損害賠償責任を課しています。

責任を取るべき業者としては,実際に製造した中国の業者にくわえ,輸入した業者,商品を自社ブランドで販売した業者などが考えられます。

しかし,消費者が食べて中毒を起こした食品から農薬が検出されたとしても,直ちに中国の製造業者や輸入業者,自分のところの製品としてブランド名を付した業者などに責任を問えるということにはなりません。

問題なのは,欠陥がどの時点で存在したのか,という点です。

この点に関して製造物責任法は,

第三条  製造業者等は、その製造、加工、輸入又は前条第三項第二号若しくは第三号の氏名等の表示をした製造物であって、その引き渡したものの欠陥により他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が当該製造物についてのみ生じたときは、この限りでない。

と定めています。

この規定からは一見明らかではありませんが,欠陥については,責任を問われる業者が引き渡した時に存在していたものでなくてはならないとされています。

また,業者が引き渡した時に欠陥が存在していたということについては,損害賠償を求める消費者の側で証明しなければならないこととされています。

この,製造業者らが引き渡した時点で欠陥が存在したことの証明を消費者側に求めることについては,立法段階から批判がありました。

この点に関して,製造物責任に関するEC指令では,「流通過程においた時点で欠陥が存在しなかったか,または流通過程においた後に欠陥が発生したことの蓋然性が高いことを証明した場合」(第7条(b)。訳は『製造物責任法の論点』84頁(上原敏夫執筆)による。)に製造者の責任が免除されると定められています。この規定から,消費者が,損害発生時に欠陥が存在したと証明した場合には,製造者が流通過程においた時点で欠陥が存在したということが推定されるものと解されています。

日本での製造物責任法制定の際にも,せめてECなみの消費者保護をということで,このような欠陥の存在時期についての規定を置こうという動きがありました。しかし,証明責任分配の原則に反する(権利を発生させる根拠となる事実は権利を主張する側が証明すべき)ということを理由に,結局欠陥の存在時期についての推定規定を置くことは見送られたのです。法律上の推定規定を置くことは裁判所による自由な心証形成を妨げる,といった批判もありました。

しかしそれでは消費者に負担をかけすぎるという批判をかわすためでしょうか,裁判での事実上の推定に期待するといった趣旨の文言が,法律案制定前の審議会の報告書には盛り込まれました。国会審議での質疑応答にも出ていたと思います。

事実上の推定に期待するというのは,法律で一律には定めはしないけど,損害時に欠陥があると証明されたら,流通過程に置いた時に欠陥があったものとして裁判官が考えることを期待しますよ,ということです。司法に丸投げしたわけです。

本件では,複数個の製品から有機リン系農薬が検出されるなどの事情があったことから,製造,輸入時に欠陥が無かったことを製造業者,輸入業者の側である程度反証しない限り,製品が流通に置かれた時点で欠陥ありとされる可能性は強いように思われます。

しかし,本件のように,流通に置かれた時点での欠陥が存在したことの推定できる事情が必ずそろうとは言えません。流通に置いた際の事情については製造業者らの方が消費者よりも詳しいことからすれば,損害発生時に欠陥が存在したということから,流通に置いた時に欠陥が存在したと推定する規定を置くことは,消費者保護の観点から望ましく,また,製造業者らにとっても負担をかけるものではないように思います。欠陥の存在時期に関する推定規定を置くように法改正すべきではないでしょうか。