請願行動と静謐の保持2006年10月17日

デモに参加してきました。1000人パレードということでしたが,2000人近く集まっていたのではないでしょうか。

日比谷公園の霞門から永田町の国会請願受付場所まで声を挙げながら(シュプレヒコールというやつですね)行進したのですが,途中,首都高速霞ヶ関ランプの手前でシュプレヒコールは終わり。その後は静かに行進です。なんとたすきも外すことになりました。

私は以前霞ヶ関ランプの前の建物で働いていたことがあるのですが,そのときから,デモ行進の声がこの場所でとぎれるのを不思議に思っていました。聞こえてくるデモ先導者の説明では,「ここから請願行進に入ります」というのです。政治デモならばむしろ国会近辺でこそ訴えの声を挙げられるようにするのが筋では?

今回デモから戻ってググってみると,「国会議事堂等周辺地域及び外国公館等周辺地域の静穏の保持に関する法律というのがあるのを発見。この法律によれば何と,霞門から霞ヶ関ランプに至るまでの区域も規制の対象となっています。

ただ,立法当時の国会での質疑で,大蔵省(現財務省)北側までは街宣車先導でいけるという旧来どおりの行動が認められるという答弁がなされたため,霞ヶ関ランプまでは街宣車先導でシュプレヒコールができるようになっているようです。

ところで,本法で禁じられているのはあくまでも静謐を害する方法での拡声器の使用ですから,肉声だけでシュプレヒコールをあげるのも,旗やのぼりを立てての行進も禁じられていないはずなのですが,霞ヶ関ランプをすぎると旗などをおろして行進するようにとの指示。自粛しているのでしょうか?それとも許可を受ける際の遵守事項として規制されていたのでしょうか。

後者についていえば,国会周辺でのデモ行進は国政についての政治的意見の表明行動として行われるものが大半でしょうから,一自治体の定める条例で規制することは疑問ですし,本法が拡声器の一定方法での使用のみを規制しているのは,表現の自由に配慮してこれ以上の規制は敷くべきでないと考えたものとみるべきでしょうから(国会での立法時の議論でも,具体的な場合について規制を受けるかどうかが議論されています。),それ以上に厳しい規制を敷くことは法律の範囲を超えた条例の制定,運用で許されるべきものではありません。

前者(自粛)についてみると,必要以上に萎縮してしまうデモ主催者にも問題がありますが,萎縮効果をもたらすような法律自体に問題があることは確かでしょう。ただ,国会近辺でも働いたことのある身としては,拡声器の使用についてはある程度規制するというのはやむをえないかなとも思います。

本法制定に当たっての立法趣旨は,国会議事堂周辺での静謐を保持し国会の審議権が保持されるようにするというもののようで,背景には,主に右翼の街宣車が使用する拡声器による騒音被害の問題があったようです。しかしいったん立法されてしまうとそれ以外の政治活動にも適用され(そのことは立法当時から明言されていました。),さらに拡声器を使用しない形態での気勢をあげる行為も自粛されるということで,市民の声が直接国会に届くのを妨げる役割を果たしてしまっています。

静謐さの保持ということが一人歩きして,声を発して気勢をあげること自体許されないような状況になっているのは問題です。この点は,条例によって過度の規制が行われないようにするとともに,デモを行う側も,規制されている行為の範囲ををきちんと確認して過度に萎縮することのないようにしていくしかないように思います。

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