ザ・コーヴ騒動について思うこと(ネタバレあり) ― 2010年06月22日
昨日弁護士会館に出向いたところ,ザ・コーヴという映画に関するシンポジウムが開催されていた。
今日事務所に出たら,シンポジウムでか,関係者宛にということでか配られたとおぼしき同映画のパンフが。
パンフを見たが,この映画で表現されている点で注目すべき点があるとすれば,他の食物であれば規制値を超えることとなる量の水銀がイルカの肉に含まれている,それが学校給食にも使われていた,ということだろう。
これが,キケンなイルカを食べさせるな,と言うのならば,その趣旨にもうなずけなくはない。ただ,それはイルカ漁の是非とは別の話のはずである。また,イルカを鯨と表示しているというシーンもあったが,それ自体は食品表示の問題で,イルカ漁の是非とは別である。しかしこの映画では,水銀の話,食品表示の話に,さらに,イルカの屠殺のシーンが組み合わされていることで,イルカ漁への否定的評価が観客にすり込まれるようになっていると感じた。表現の自由は重要だから上映中止などはおかしいと思うが,公正な表現ではなさそうだなと感じるものだ。
ちなみにイルカが水銀に汚染されているのが問題だというアピールがなされていると知って私が思ったのは
水銀に汚染されていないイルカの肉が食べたい
ということだった。
食物連鎖の最上層に属するイルカだから自然に水銀が蓄積されてしまうのか,規制値を超える値まで蓄積されるのは海洋汚染が激しく進んだことによるのか。そういったところにも目を向けて,どうやったら汚染されていないイルカ肉が入手できるのか,といったところにも触れてくれれば評価できる映画になったかもしれないのにと思う。
裁判員裁判~無罪判決の成立過程は? ― 2010年06月23日
裁判員裁判で,初の無罪判決が出ましたね。
これを伝える読売(紙面)の昨日夕刊の記事だったか解説で,裁判官全員が無罪と言うと,全体では有罪であっても無罪とせざるを得ないということを問題であるかのように取り上げていました。
上記解説を読むと,今回の無罪判決が,職業裁判官全員が無罪と主張したゆえに無罪になったかのような印象を受けます。
仮にそうだとするならば,市民の常識の反映で無罪判決が得られたとは言えないのではないでしょうか。こうした点を検証するためにも,判決の根拠となる評決結果についても公開されるべきなのではないでしょうか(私は制度自体反対ですが)。
それにしても,判決後の記者会見での裁判員のコメント(毎日記事 )を見ると,
男性裁判員の一人は「検察に『もっと頑張れ』という気持ち。サッカーで言えば(弁護側の)守りがよかったのではなく(検察側の)攻めが弱かった」と努力不足を指摘した。
などと,捜査機関を応援する気持ちを持つ人が目立つようにも思います。しかもこの記事を書いた記者自体
今月9日には、強盗致傷、詐欺罪などに問われた被告の裁判員裁判で、東京地裁立川支部が一部無罪を言い渡している。共謀したとされる少年らの証言の信用性を否定し、裁判員からは「証拠がない」「警察、検察の捜査が甘かった」との指摘が相次いだ。
裁判員制度開始から1年が経過し、今後は被告が本格的に無罪主張する事件の審理も相次ぐ見込み。裁判員裁判は、捜査当局に改めて緻密(ちみつ)で説得力のある証拠収集と立証を求めている。
って,被告人を有罪にするよう頑張れと発破を掛けているように見えるのですが,ちょっと方向が違うのではないでしょうか。
少年・刑事特別会費の増額と法律援助特別会費の創設って・・ ― 2010年06月25日
少年・刑事特別会費が月1100円増額となり,法律援助基金の財源に充てるための特別会費が月額1300円徴収されるようにすることについて,弁護士会に意見照会を実施したというものだ。実現すれば合計月額2400円の負担増だ。
負担増の理由は,日弁連が日本司法支援センターに委託している法律援助9事業について,事業活動に充てられる贖罪寄付等の寄付金が減少する一方で,具体的な援助対象事件はいずれの事業においても想定以上に増加していることによる財源難を補うためだという。
援助対象事件の想定以上の増加とは,みんないわゆる公益的事業に参加しているのだなあと思う反面,決して高いとは言えない援助事業による弁護士報酬でも良しとする弁護士が増えているのかなあ,不景気で弁護士費用を払えない人が増えているのだなあ,社会問題がより深刻化しているのかなあなどとも思う。
一方,財源である寄付金の減少については,不景気による贖罪寄付者の資力低下もあろうが,弁護士激増による弁護士の経済状況の悪化や,法務省管下の日本司法支援センターに対する反発がかなりあるんじゃないだろうか。
収入を増やそうと思うんだったら,法テラスからの委託の引上げと,激増政策撤廃による弁護士界の景況改善が,根本からの解決なんじゃないかと思う(でも今からようやく法曹人口政策会議を設置して政策立案を検討するなどと言っているようじゃ期待できないが・・・)。
それにしても,月2400円の負担増って,弁護士の懐は打ち出の小槌とでも勘違いしているのではないだろうか。こんな負担増を続けていたら,弁護士会が会員から見放されて任意団体化してしまうことも避けられないのではないだろうか。
この会費負担増には断固反対である。

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