今修正せずにいつ直せるのか ― 2008年01月07日
今日から仕事始めでした。
昨年末から立て続けに「明日の司法と日弁連を創る会」からのファクシミリが送られてきています。旧年中で終わるかと思ったら今日もまた・・・。お金があるんですね。
それにしても「創る会」の方々は,法曹人口問題は「乗り越える」ものであって,見直すものとは考えていないようですね。
「創る会」ニュース第3号では,平成6年に800人堅持の総会決議をしたが各界の猛反発を招いたということをひきあいに,拙速な合格者減の主張をすることは控えるべきだと言っていますが,平成6年当時の合格者数と現時点での合格者数は格段に違いますし,現時点では実際に就職に困難を来す人が増えてきているのです。
この弁護士激増による就職難問題はメディアでも取り上げられるようになり,法務大臣が激増を問題視する発言をするにまで至っています。今,弁護士激増の見直しを唱えることは,そんなに猛反発を受けることとは思えません。
「創る会」は,「市民」という言葉を持ち出しますが,その「市民」ってどのような人たちなんでしょうか。規制改革会議の面々ではないかなどとも勘ぐってしまいます。各界の猛反発を招くと言いますが,きちんと説明したけれどもなお反発したということなのでしょうか。反発に怖じ気づいてきちんとした説明をしなかったのでは?
いわゆるゼロワン問題についても,合格者数を3000人に増やさないとほんとうに解消できないものなのでしょうか。例えば,1000~1500人程度の合格者数で解消できるか否か,それは何年後になるのかということをこれまでの増員のペースから示すことはそんなに困難ではないのではないでしょうか。
「創る会」ニュースには,「法曹の質と量,法的ニーズの検証」を行った上,2010年3月までに法曹人口についての提言をすると書かれていますが,これは,「創る会」の人たちが日弁連執行部を担った場合,その任期中(2010年3月まで)には法曹人口見直しについて動き始めない可能性が高いことを示しています。2年間のうちに職にあぶれた修習修了者が大量に発生したらその責任はどう取ってくれるのでしょうか。「創る会」の面々が全部面倒を見て雇ってくれるのでしょうか。過当競争の結果,本来成果を得る見込みのない案件も事件として処理し,依頼者によけいな費用だけかけさせる事案も増えてくるのではないでしょうか。そのような状況について「創る会」の人は事後的な懲戒などのみで足りるとするのでしょうか?借金まみれの法科大学院出身者に損害賠償責任を認めても実質的救済にはなりません。
また,上記の「検証」についても,昨年見られたような,ノキ弁の推奨や会費減額などの弥縫策の結果何とか壊滅的な状況は避けられたとして,激増は乗り越えられたから見直しの必要はないという結論が出てくることが予想されます。
今すぐに見直しを始めないと,破滅的状況が来るまで見直しがなされないことになるのではないでしょうか。
今年こそ弁護士激増見直し元年としたいものです。
愛煙家にHは無用~タクシー車内禁煙施行に際して ― 2008年01月09日
東京都内のほとんどのタクシーが1月7日から禁煙になりましたね。
夜遅くに帰る時など使うことがあるので,車内が禁煙になってくれるのは大変嬉しく思います。
ところで,上記記事ではいずれも愛煙家ということばが使われているのですが,この用法には異議があります。
愛煙家って本当に煙を愛しているんでしょうか?
喫煙者が直接吸い込む煙よりも周りにはき出す煙の方が有害物質の量が遙かに大きいということを聞いたことがあります。
愛煙家というのであれば煙に対する愛を徹底していただき,タバコからでる煙をすべて体内に吸収し,少しも外に逃がすことのないようにしてほしいものです。
自分が吸い込むより多い有害物質を吐き出すなど,愛煙家というより排煙家(haienka)と呼ぶべき存在でしょう。いや,周囲が煙で濁ることを考えればバイエンカ(煤煙家)と呼んだ方がよいかもしれません。
煙を愛でているから愛煙家なのだという反論もあるでしょうが,愛でるにしても逃がさないようにするためにはやはり全部吸い込むしかないでしょう。
今では,煙が外に出ないタバコも,少し値段は張りますが存在します。ただ,以前煙を出さないタバコが大々的な宣伝つきで発売開始となった記憶はあるものの,そのようなタバコを吸っている人を未だ見かけたことがありません。
煙を出さないよう喫煙者の意識に訴えかけることが無駄なことがわかった以上は,法制度上,有害成分を含んだ煙を出すタバコの販売を一定の猶予期間の後に禁止することとし,猶予期間中にタバコ製造業者には,煙を出さない新製品の開発にいそしんでいただく。それしか喫煙者の方々に煙を満喫し,丸ごと愛していただく方法は無いでしょう。様々な分野で新製品が続々登場する今日,タバコだって形態に変化があってよいはずです。
喫煙者の人たちがHつき=排煙家でなく,真の「愛煙家」になる日が来ることを願ってやみません(「愛煙家」御自身が健康に配慮して禁煙するのが一番よいとは思いますが)。
マスメディアにも権力すり寄りと言われていますよ ― 2008年01月09日
日弁連会長選が白熱 「合格者増」「裁判員」が争点(asahi.com)
全国に約2万5000人いる弁護士のトップを決める日本弁護士連合会の次期会長選が9日、公示された。
(中略)
今回の会長選が特に注目されているのは、司法試験合格者を2010年までに年間3000人に増やす政府計画に異論が相次いでいるからだ。
日弁連執行部は計画実現に向けて政府に歩調を合わせてきたが、弁護士の急増で新人の就職が厳しくなり、「質の低下」や「過当競争」も懸念されるようになってきた。中国地方弁護士会連合会や中部弁護士会連合会が計画の見直しを求めるなど、執行部は足元から揺さぶられている状況だ。
09年春にスタートが近づいた裁判員制度も争点の一つ。日弁連は最高裁や法務省とともに推進の立場で広報や準備を進めてきたが、「連日開廷は負担が大きく、被告の権利を害する恐れがある」「市民が制度参加に積極的でない」といった理由から、弁護士の一部には不満や批判もくすぶっている。
会長選は、現執行部のスタンスを基本的に継承する宮崎氏と、執行部を批判してきた高山氏が争う形になる。このため、当落の行方や、双方がどれだけ票を集めるかが、弁護士だけでなく、法務・検察や裁判所関係者の間でも注目されている。立候補の受け付け終了後は、候補者が並んで討論する公聴会が全国10カ所で開かれ、各陣営が支持を訴える予定だ。
マスメディアにも,日弁連執行部は「(司法試験合格者を年間3000名に増やすという)計画(の)実現に向けて政府に歩調を合わせてきた」,つまり権力に迎合してきたと認識されているんですね。裁判員制度についても「最高裁や法務省とともに推進の立場で広報や準備を進めてきた」と言われていますし。
それにしても,マスメディアにこれほどまでに取り上げられるとは,日弁連選挙も重大事象になったということなのか,重大事象であることがメディアにようやく認識されるに至ったというべきなのか。
ところで上記記事では,弁護士の言葉として引用しているであろう部分で「連日開廷は負担が大きく、被告の権利を害する恐れがある」って書かれていますが,弁護士が「被告人の権利」と言わずに「被告の権利」っていうことはまず考えられません。
記事全体のトーンは悪くないのですから,引用は正確にしていただきたいものです>朝日新聞
60期の弁護士の減少? ― 2008年01月10日
以前60期の就職未定者数は?で,60期の弁護士の数を2096名と書きましたが,今日日弁連の会員専用ホームページで調べてみたところ,2095名と,1名減っていました。
日にちがたてば,入会手続が遅れていた会員が新たに入ってきて会員数が増えると思っていたのですが,そうではないようです。
会員数が減ったのはなぜなんでしょう。従前の会員数の計算が間違っていたのか,従前,本当は登録していない会員を登録したものとしてカウントしていたのか,はたまた,弁護士登録はしたものの会費の負担等に耐えかねて弁護士業務を辞めた人が出たためか。
たった1名の違いかもしれませんが,不思議です。
なお,今回の検索結果に基づき,60期の未就職者の数を計算しなおすと,50名となります。
言論の力を信じられない人たち ― 2008年01月12日
日弁連会長選挙が始まって,両候補からのハガキが各弁護士に届いているようですね。
ところで,私のもとには一方の候補者からのものしか届いていません(1/12現在。1/15日に届きました。)。同じ事務所に所属する弁護士には,両候補者からのハガキのいずれもが送られてきている弁護士もいるというのに。
また,各候補者の支援者団体とおぼしきグループのうち「創る会」からは,政策ニュースのファクシミリは送られてきていたものの,主張が記載されたのであろうパンフレットは送られてきていません。
うーん,私が反対派であるからということで,最初から送付先に入れていないのでしょうか(ファクシミリについては,全会員あてに送るシステムがあり,それを使うのが簡便なため除外していないのでしょう。)。
もし仮に,反対派に対しては送るだけ無駄ということで送付してこないとすれば,自分たちの言葉に自信がないことの現れということにならないでしょうか。
また,弁護士というのは文章や言葉で他人を説得することを仕事とする人のはずなのに,最初から説得を諦めるというのは,弁護士の業界団体のトップに立とうとする人間としてどうよ?とも思います。
自分たちに反対していることが明らかな人へ郵便物を送らないというのは,送付費用を節減でき,かつ,ネタとして批判されるのを防げるという点で合理的と考えられたのかもしれません。でも,送らなければこのように送ってこなかったこと自体もネタになるのですがねえ。
追記(1/15) 今日私のところにも他方当事者のハガキが届きました。でも政策パンフは来なかったので,この記事は残しておきます。
マイナーOS使いの法律家 ― 2008年01月13日
米国ではMac使いの法律家のためのブログというのがあるんですね(小倉弁護士のブログ経由で知りました。)。
私も今の職に就く以前の勤務先が当時Macintoshを使っていた関係で,13年ほど前からMacを持っています。
ただ最近は経理処理にしか使っていません。
Macはまだ有名なOSで,使っている法律家を何人か知っていますが,私が文書作成時に使うことのある超漢字というOSは,残念ながら私以外に使っている法律家を知りません。
機能はOfficeソフトに比べると少ないものですが,ワープロ,表計算,データベース,図形作成,インターネット関連ソフトがひととおりついてきますし,長い書面を書いたり,アイデアを書き留めておいたり,データを貯蔵しておくには便利なOSだと思います。
今のバージョンはWindowsとの併用もしやすくなっているので,興味を持った方は使われてみてはいかがでしょうか。
ガソリン税暫定税率撤廃に同調 社民国対委員長 ― 2008年01月14日
暫定税率撤廃か道路建設維持かの二者択一しかないんでしょうか?
ガソリン税暫定税率撤廃に同調 社民国対委員長(asahi.com)
社民党の日森文尋国会対策委員長は13日のNHK番組で、民主党が打ち出したガソリン税の暫定税率撤廃方針について「原油が高騰して国民が厳しい生活を強いられている。暫定税率は廃止する方向で検討し、(党として)そういう結論を出したい」と語り、同調する姿勢を示した。共産党も撤廃の方針で、参院での関連法案否決に向けて民主、共産、社民3党の足並みがそろう方向となった。
自動車に依存した生活の見直しという観点はないのでしょうかねえ。
生活苦に対しては,定率減税の復活,生活に必要な範囲での交通費相当額の補助などの途もあるでしょう。
第二東京弁護士会では,「道路特定財源見直し」に関する意見書(PDF)を公害対策・環境保全委員会委員長名で公表し,また,「道路整備中期計画」に関する意見書(PDF)を会長名で公表しています。
道路特定財源見直しに関する意見書では,
- 道路特定財源の廃止
- 財源使途見直しに際して,自動車利用がもたらす公害被害者・交通事故被害者救済及び環境悪化対策,並びに,公共交通機関や歩道・自転車道の整備・補助といった交通体系全体の健全な発展に十分な予算が割かれるよう制度設計すべきこと
- 財源諸税の暫定税率は当面現行水準を維持した上で,自動車利用がもたらす公害被害や環境負荷などの社会的費用は自動車利用者が負担するという「原因者(汚染者)負担」の観点から再検討されるべきこと
を提言しています。
また,「道路整備中期計画」に対する意見書では
- 温暖化効果,交通事故,公害環境面などの,道路整備の社会的費用の検証
- 社会的費用検証に当たっての,自動車交通抑制策(TDM)への転換
- 道路整備中期計画策定に当たっての検討を,省庁横断的に行うべきこと
を提言しています。
これまで同様の道路建設をほぼ維持するという主張はおかしなものであり,税金の使途を道路特定財源という形で限定する仕組みは廃止すべきです。
しかし,自動車利用者が原油高で困るからガソリン税の減税を行うというのは,自動車の利用状況が現状のままでよいことを前提としたもので,自動車の社会的費用や,総合的な交通政策を全く考えていない暴論です。
暫定税率をいったん廃止してしまえば,自動車利用者に対して再度の負担を求めることは極めて困難となるでしょう。暫定税率の廃止は,自動車利用の維持どころか,自動車の利用を現状以上に促進することになりかねません。
今以上に自動車利用を促進する必要が果たしてあるのか,暫定税率存廃については自動車利用に伴う費用について十分に考慮した上で慎重に検討する必要があるのではないでしょうか。
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