NTTの電話サービスと電凸 ― 2008年06月03日
電凸(この言葉に抵抗があるというのであれば,「問い合わせ」でもOK)について疑問に思うのは,電凸をする人って,自分の名前を名乗ってやっているのだろうか?ということだ。
人の家や仕事場を訪ねる際,名乗らずに訪れる人は(泥棒などを除けば)まずいない。電話も,相手に自分の素性を明かして使うべきものではないだろうか。
また,電話って,人の住まいや仕事場の平穏を乱す(少なくとも電話に出る手間と時間を取らせる)という点で,用法上の業務妨害機器ではないか。みだりに使われないようにするためには,電話を受けた人が,闖入者が誰かを知って応対することができるような仕組みになっている必要があるのではないか。
NTTは,ナンバーディスプレイサービスなどといって,架けてきた相手方の番号を表示するサービスで金を取っているが,これはおかしいと思う。無料で提供するのが当然ではないのだろうか。むしろ,ナンバーディスプレイができない電話機を使っている人用に,架けてきた相手方の電話番号を音声で知らせるサービスを提供すべきであるように思う。そのようなサービスがなければ,電話は使い方によっては危険な,設計上の欠陥を持った製品ないしサービスとして見られても仕方がないのではないだろうか。
何をどうCHANGEするのかが重要では? ― 2008年06月04日
テレビ視聴率:「CHANGE」、初の20%割れ 中田、W杯予選に押される(毎日.jp)
「CHANGE」は、平凡な教師だった朝倉(木村さん)が、政治家だった父の死を機に選挙に立候補し、総理大臣になるという物語。5月26日放送の第3回は22.4%と、仲間由紀恵さん主演のテレビドラマ「ごくせん」(日本テレビ系)を抜くなど好調だったが、日本-オマーン戦は、岡田武史監督の更迭問題がささやかれていた国民の関心事だったこともあり、さしものキムタク総理も一休みとなったようだ。
与党の二世議員の話と聞いた時点で,小政党(当時は与党でしたが・・)所属議員に仕えていた身としては見る気が失せました。
ところでCHANGEといって私が思い出すのは,16年前の米国大統領選挙の際のクリントン候補のキャッチフレーズです。彼はこのキャッチフレーズで勝利をもぎ取ったように記憶しています。もっとも当時私はメディアでこの選挙戦の報道を見て,ブッシュ(現大統領の父親)候補の,「Change for change」といった非難の方が当たっているように思いました。
現状が閉塞感に満ちているときに,CHANGEとか改革とか,人々は変化を表す言葉につられてしまいがちなように思います。でも,何をどう,何のために変えていくのかが重要なのであって,単に現状が気に入らんからとりあえず変えてしまえ,では,却ってめざしていたのとは別の方向に変えられてしまうおそれだって大です。小選挙区制導入に終わった政治改革,地方交付税の削減と市町村合併に終わった地方分権など,過去に「改革」の名の下になされたことがいかなる結果に終わったかをよく踏まえながら,「改革」という言葉に対応していくべきでしょう。
これは私の属する業界に関連する「司法改革」についても同じです。現行の裁判制度が絶望的だからといって,日弁連が財界や新自由主義論者と共に「司法改革」を唱えた状況は,まさに「Change for change」とも言うべき状態であり,その「改革」の行き着く先について余りにも無頓着だったのではないでしょうか。
弁護士激増や新法曹養成制度をめぐる混乱など,「司法改革」の弊害が明らかになりつつある現状においてもなお,日弁連をはじめとする多くの弁護士会は,司法改革を後退させるなという非難を受けることを怖がっているようです。確かに,「Change for change」という揶揄を行ったブッシュ候補がクリントン候補に敗れたように,「改革」「Change」という言葉の魔力は強いものがあり,弁護士会執行部がおびえるのも理解できないではありません。でも,そんなキャッチフレーズに寄りかかっているような弁護士や弁護士会に,人権擁護の職責が果たせるようには思えないのですが・・・。むしろ,今の弁護士会には,「改革なんぼのもんじゃ」「改革,ハァ?」といって立ち上がっていく気概が必要とされているように思います。
まあ,一番の元凶は改革をもてはやすマスメディアにあるのでしょうけれども。
官僚160人、深夜タクシーで晩酌サービス ― 2008年06月05日
http://www.asahi.com/national/update/0604/TKY200806040306.html
財務省や金融庁など9省庁の官僚約160人が深夜にタクシーで帰宅する際、運転手から「サービス」としてビールや、つまみの提供を計約2900回受けていたことがわかった。大半が税金から支出されるタクシー券を利用して、個人的なサービスを受けていたと見られる。
長妻昭衆院議員(民主)が全省庁にタクシー利用状況の調査を求め、4日までの回答を集計して判明した。大半の省庁は07年度分を調べたが、一部はそれ以前にさかのぼった。調査中の省庁もあり、件数はさらに増えそうだ。
件数が圧倒的に多かったのは財務省。タクシーでの帰宅が07年度中に160回にのぼり、そのうち120回もビールなどを提供された職員もいた。1人が2千円分の図書券を受け取っていた。財務省は「頻繁にビールなどの提供を受けるのは国民の疑念を招きかねない。金券の受領は、事案を調べて対処する」としている。
タクシー業界では、運転手が得意先の客にビールなどを出すことがある。深夜残業が頻繁な官僚の場合は、特定の個人タクシーの得意先になる例が少なくない。
道路運送法は業者が受け取った運賃を割り戻すのを禁止し、金券提供はこの規定に違反する可能性があるが、ビールなどの提供は規定されていない。国家公務員倫理法などは、利害関係者以外から国家公務員が「社会通念上相当と認められる程度を超えて接待や利益供与を受けること」を禁止している。ビールの提供について、人事院は「事例ごとに判断するが、現状では何とも言えない」としている。
霞ヶ関は個人タクシーと提携している役所が多いのですが,呼ぶ時はいつも無線で,特定の個人タクシーの得意先になるなんて考えられませんでした。でも,深夜労働あたりまえの世界ではありましたから(それ自体いかがなものかとは思いますが),多くいる官僚の中には特定のタクシーを押さえておく人もいたのかもしれませんね。そんなことより働き方を変えられないのかという気もしますが,無理なのでしょうかねえ。
記事では,
大半が税金から支出されるタクシー券を利用して、個人的なサービスを受けていたと見られる。
と書かれていますが,タクシー料金自体は基本的に皆同じですから,利益を受けていたことで国民の懐が痛むというものではないですし,この書き方はミスリーディングなようにも思えます(もちろん,タクシー券の額面金額を多めにしていたとかいうことであれば大問題ですが。)。ただ,競争の厳しいタクシー業界で,利益供与により客,しかも公務員を釣るというやりかたが公正な競争という観点から妥当なものかどうかは疑問が残りますし,癒着ととられても仕方のない面もありますから,慎重に対処すべきことではありましょう。
ところで,記事中では各省庁別の受益者と受益回数が表形式で掲載されているのですが,私のかつての所属先もあるんですよねorz。
それにしても,
タクシー業界では、運転手が得意先の客にビールなどを出すことがある。
とありますが,タクシー内にビールが置いてあるというのも不自然な図のような気がします。タクシーに乗ってまで飲みたい客ってそんなにいるんでしょうか?
グリーンピースメンバー逮捕で問われる日本の人質司法 ― 2008年06月21日
調査捕鯨で捕られた鯨肉の横領を告発しようとして,運送会社の倉庫にあった鯨肉を持ち出したグリーンピースのメンバーが逮捕されましたね。
この逮捕,ヤメ蚊さんのブログによれば,
逮捕当日、新宿署に事情を説明するために出頭をすることにしていたところ、その直前に任意での事情聴取の機会もないままに逮捕されました。
というのだから,逮捕の要件である証拠隠滅のおそれなどがあったのかどうかそもそも疑問です。
ところで,彼らに窃盗罪が成立するかどうかについては,いわゆる不法領得の意思の有無が問題になります。盗った物からの経済的効用を受けようとして行う犯罪は,誘惑的要素が強いために,強く禁圧すべきであるというのが,窃盗罪を器物損壊罪よりも重く処罰する理由であって,したがって,窃盗罪と器物損壊罪の区別のために,物の経済的用法に従い利用処分する意思が窃盗罪の成立には必要とされるのです(不法領得の意思にはもう1要素あるのですが,本件とは関係がないと思うので省きます。)。
この不法領得の意思,故意と同じように人の内心(主観)ですから,単純に考えると,直接に基礎付ける証拠としてまず考えられるのが自白です(もちろん,客観的事情からも裏付けられるんでしょうが・・)。
おそらく,権力側は,この逮捕によって,国策に抵抗するとどうなるかという威嚇をするとともに(逮捕したのが警視庁の公安部であることはこのことの証ではないでしょうか?),今後,不法領得の意思の有無についての自白を得ようとしていくものと思われます。
しかし逮捕勾留は本来自白獲得のために行われるべきものではありません。グリーンピース・ジャパンの報告によれば,
すでに詳細な事実関係を記した上申書を作成して東京地検に提出し、青森県警にも写しを送付しており、さらに関係者はいつでも出頭に応じると伝えてありました。
とのことですが,このような状況下,仮に警察が,グリーンピース側が犯罪の成立を否認しているからとの理由で逮捕したのであるとすれば,自白獲得のために被疑者自身をいわば人質とした人質司法の現れではないかと言わざるをえません。
グリーンピースは国際的な団体であり,今回の告発も国際的な関心を呼んでいるものと考えられます。今回の逮捕,そしてその後のメンバー2名に対する処遇が国際的に注目されることは確かでしょう。
日本政府は先般の国連人権理事会に引き続き恥をさらすような真似はやめた方がよいと思うのですが。
地上波デジタル放送~アナログ放送を停波して導入する価値は? ― 2008年06月23日
チューナー配ってことたれり,っていうことでいいんでしょうか?
地デジ:生活保護世帯にチューナー給付 総務省部会答申(毎日.jp)
総務省の情報通信審議会の情報通信政策部会は23日、2011年7月24日に地上アナログテレビ放送が終了し地上デジタル放送に移行することに伴い、生活保護世帯(06年度末で約107万世帯)に地デジ対応の専用チューナー(約5000円)を現物給付する答申をまとめた。必要があれば屋外アンテナの改修(約3万5000円)などを無償で行う。「貧困世帯でも災害情報などテレビの情報伝達機能を維持するためには支援が必要」と判断した。総務省は09年度から3年間で対象世帯への配布や工事を行う方針だ。
生活保護世帯となるまで収入が低くない世帯でも,チューナーを買うのを負担に感じる家庭は少なくないと思うんですが・・・。「災害情報などテレビの情報伝達機能を維持するためには支援が必要」って,そのような情報伝達機能を持つものであれば,社会的インフラとしてあまねく行き渡るように整備・支援すべきでしょう。
ただ,以下の記事を見ると,地上デジタル放送がそんな情報伝達機能を持つものかどうか疑問なんですよね。
岩手・宮城地震:地デジ2秒遅れ 緊急速報間に合わず?(毎日.jp)
岩手・宮城内陸地震の発生時、震源に近い宮城県栗原市中心部で、アナログ放送なら強い揺れの直前かほぼ同時に伝わったはずのテレビによる緊急地震速報が、地上デジタル放送(地デジ)だと間に合わなかった可能性があることが分かった。システム上、地デジが約2秒遅れるのが原因。アナログ放送は11年終了し、地デジへ全面移行するため、速報を出す気象庁は「2秒の差は大きい」と思わぬデメリットに困惑している。
火を消すために時速6kmでかけつけるとすると,2秒違うということは
6000÷3600(秒)×2=3.3m
違うということになりますね。結構大きい差です。
気象庁によると、震度6弱の栗原市中心部では、強く揺れ始めたのは43分56~57秒。計算上、アナログ視聴者は大きく揺れ出す直前か、ほぼ同時に速報に気づく可能性があるが、地デジ視聴者は間に合わない。
「災害情報などテレビの情報伝達機能」って,緊急時の地震速報が早期に伝わらないんじゃ,情報伝達機能をきちんと果たしているとはいいがたいんじゃないでしょうか。
ちなみにこの地上波デジタル放送,導入に当たって国家予算をかなり浸食してます。
地デジ予算:総合対策、来年度から3年で2千億円(毎日.jp)
増田寛也総務相は9日、2011年7月24日に現行の地上アナログ放送が停止し、地上デジタル放送に完全に移行するのに合わせ、難視聴対策や経済的弱者支援など総額約2000億円の総合対策を09年度以降約3カ年で行うと発表した。
テレビが免許制になってるのって,電波が有限だからだけではなく,放送に公共性があるからではなかったのでしょうか。金食った上に公共的役割に劣る地上波デジタル放送なんて取りやめにすべきように思います。少なくともアナログ波の停波はやめるべきではないでしょうか。
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